帯状疱疹とは
神経に沿って、痛みを伴った赤い斑点や水疱ができる病気です。地方により「つづらこ」「おびくさ」「胴巻き」「たすき」「へびたん」などと呼ばれ、ドイツ語でもベルト状に発赤するという意味でGürtelroseと呼ばれています。水ぼうそう(水痘)と同じウィルス(水痘・帯状疱疹ウィルス)により生じます。
水ぼうそうのウィルスに2度も感染するのですか?
水ぼうそうに1度罹ると終生免疫が得られますが、体の中の水痘・帯状疱疹ウィルスが完全に無くなったわけではありません。残ったウィルスは神経節と呼ばれる場所に隠れていて、体の免疫力が弱った時に再び力を盛り返して帯状疱疹という形で顕れるのです。水ぼうそうウィルスに再感染するわけではありません。
どうして神経に沿った場所に症状が出るのですか?
(日本皮膚科学会の図を改変引用)
どのくらいの頻度で罹る病気ですか?
水ぼうそう患者の4~6人に1人が罹患する身近な病気です。男女間に頻度の差はありません。多くは水ぼうそうに罹ってから30~40年後に発症します。子どもや若い人の間にもみられます(図2)。水ぼうそうに罹った経験がなくても、ワクチンで免疫を得た場合に生じ得ます。
図2 発症年齢
(人口10万人当たり/年の発症頻度、Arch Intern Med 1995年より改変引用)
帯状疱疹の症状は?
痛みを伴ったおび状の発疹や水疱が、体の左右のどちらか片側だけに出現します。病変は神経細胞を傷付けながら皮膚表面へと進むため、皮膚上に発疹が出る前からピリピリとした違和感や痛みが感じられます。痛みは鋭く、衣服に触れただけでも刺すような痛みを感じます。症状は1週間から1カ月近くも続き、通常は発疹の消失とともに痛みも消えます。帯状疱疹は一生に1回といわれています。
帯状疱疹に合併症はありますか?
部位 | 合併症 |
---|---|
耳の付近 | 聴覚障害 / 顔面神経の麻痺 / 味覚の障害 |
目の周囲 | 角膜の炎症 / 網膜や視神経の障害 |
腹部 | 腹筋の麻痺 / 便秘 |
おしりの周囲 | 排尿の障害 / 直腸の運動障害 |
その他 | 帯状疱疹後の神経痛 |
帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹の皮膚症状が消失してからも痛みだけが慢性的に残る場合があります。高齢での罹患、重症で広範囲な皮膚病変、急性期の強い痛みがある場合に生じやすいとされています。治療には鎮痛薬、神経ブロック、抗うつ薬、漢方薬などが用いられます。
帯状疱疹は感染しますか?
帯状疱疹のある人に触れたからといって、感染して帯状疱疹になることはありません。但し、まだ水ぼうそうの免疫のない人が、帯状疱疹の水疱中のウィルスを含んだ内容液に直接触れたりすると、水ぼうそう感染の原因となることがあります。
帯状疱疹の治療法は?
発疹を速やかに治療し、同時に急性期の痛みを軽減させるため、原因ウィルスに直接作用する抗ウィルス薬(Acyclovirなど)を用いた原因療法と消炎鎮痛剤や神経ブロックを用いた対症療法が行われます。抗ウィルス薬には点滴、経口薬や塗り薬などがあります。一方、より効果的で副作用の少ない薬の開発も望まれています。
帯状疱疹の予防法はありますか?
神経節内に潜む水痘・帯状疱疹ウィルスの活動は、通常は免疫の力により抑えられています。しかし、肉体的な過労・精神的なストレス・病気・老齢・免疫抑制剤の使用などにより免疫力が低下した時に、ウィルスが力を盛り返して増殖、帯状疱疹という形で発症します。そのため、十分な睡眠や規則正しい生活、栄養のバランスのとれた適量の食事、運動に留意することが大切です。
帯状疱疹のワクチンも開発されています。最近の研究によると、60歳以上の人に水痘ワクチン(Zostavax)を接種すると、帯状疱疹の発症率と症状、帯状疱疹後神経痛の移行率を抑えられることがわかってきました。年齢とともに弱まった水痘・帯状疱疹ウィルスに対する免疫機能を再強化し、潜んでいる水ぼうそうウィルスが出てくるチャンスを無くすためと考えられています。