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Mo. 08. Mär. 2021

ドイツにEV時代は到来するか?

最近ドイツでは、電気自動車が歩道の充電スタンドにコードで繋がれて充電されているのをよく見かける。そうしたなか、今年1月にドイツ連邦自動車庁(KBA)が発表した統計は、政界・経済界を驚かせた。

街中に設置された充電スタンドを利用する電気自動車(撮影:熊谷徹)街中に設置された充電スタンドを利用する電気自動車(撮影:熊谷徹)

•EVとPHVの販売台数が急増

2020年に電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド(PHV)の新車の販売台数が、前年比で3倍ないし4倍に増えたからだ。同国でEVとPHVの販売が始まって以来、これほど急激に販売台数が伸びたことは、一度もなかった。

KBAによると、EVの新車販売台数は、2019年には6万3281台だったが、2020年には約207%増えて、19万4163台となった。またPHVの新車は、2019年には4万5348台売れたが、昨年は342%増えて20万469台売れた。

2019年に売れた新車のうち、EVとPHVの比率は3.1%だったが、2020年にはその比率は13.6%に増えた。逆にガソリンエンジンかディーゼルエンジンを使う車の比率は、91.2%から74.8%に著しく減った。

•政府が購入補助金を倍額に

昨年EVとPHVがドイツで爆発的に売れた最大の原因は、政府がこの2種類の車について、新車購入補助金を増やしたからだ。

メルケル政権は、昨年6月にコロナ不況に対抗するために、さまざまな景気刺激策を発表した。そのなかで政府は、「2020年7月8日から2021年末まで、EV(燃料電池車を含む)かPHVを買う市民への購入補助金(環境ボーナス)のうち、政府負担額を2倍に増やす」という方針を打ち出した。政府はこの政府補助金を技術革新ボーナスと呼んでいる。補助金の残りの部分は、自動車メーカーが負担する。

これにより価格が4万ユーロ(504万円・1ユーロ=126円換算)までのEVを購入する際に、市民が受け取れる補助金の総額は、最高9000ユーロ(113万4000円)になった。新車を買う際に、政府とメーカーの支援措置によって価格が113万円も安くなるというのは、大きな魅力である。価格が4万ユーロを超える車の場合、政府とメーカーからの購入補助金の総額は7500ユーロ(94万5000円)になる。

政府はこれらの支援措置のために、22億ユーロ(2772億円)の予算を投じた。ただしPHVではないハイブリッド車と内燃機関の車には、購入補助金は出ない。これには、EVとPHVをモビリティーの中心に据えることで、運輸部門からの二酸化炭素(CO2)の排出量を大幅に減らそうというメルケル政権の意図が含まれている。

•ユーザーの間で大反響

この政策は、市民の間でメルケル政権の予想を上回る反響を生んだ。2020年7月の補助金申請件数は1万9993件だったが、同年8月には2万7436件に増えた。2016年に新車購入補助金制度が導入されて以来、これほど申請件数が多かったことは一度もない。

メルケル政権は、コロナ禍の対策を発表した昨年6月には、技術革新ボーナスによる補助金倍額措置を、2021年末までに限っていた。しかしこの政策が市民の間で非常に好評だったために、連邦経済エネルギー省は2020年11月に、この措置を2025年末まで延長することを発表した。

ただし2022年以降に補助金倍額措置の適用を受けられるPHVは、バッテリー機構による最低走行距離が60キロメートルの車に限られる。2025年には、補助金の対象は最低走行距離が80キロメートルのPHVに限られる。

•充電インフラの拡大が必須

メルケル政権は、2030年までに運輸部門からのCO2排出量を、1990年比で40~42%減らすことを目指している。このため政府は、2030年までに700万~1000万台のEVを普及させることを目標にしている。ドイツの自動車税は、もともと排出する有害物質が少ないほど税率が低くなる。連邦財務省はEV普及目標を達成するために、2020〜2025年までに新車登録されたBEVは、自動車税を免除している。

だが最大のネックは、充電スタンドの不足だ。今年1月現在のドイツの公共充電端末数は、3万4056個にすぎない。モビリティーの電化を実現するには、連邦政府は民間企業や地方自治体を支援して、充電インフラを迅速に整備する必要がある。

「将来コロナパンデミックが終息した時にイタリアやクロアチアに車で旅行したいが、ドイツで電力会社などと契約すれば、外国でも充電できるのか」という疑問を持っている人も多いだろう。昨年のPHVの販売台数がEVよりもやや多い背景には、そうした懸念もある。PHVならば、万一充電スタンドが見つからなくても、しばらく内燃機関を使って走ることができる。充電インフラの拡充は欧州全体で行う必要がある。

ただし、ドイツの自動車業界のEVシフトの流れは加速するだろう。ドイツ自動車工業会(VDA)は昨年秋に「2050年までにモビリティーのカーボンニュートラルを達成する」と宣言している。フォルクスワーゲンをはじめ、各メーカーも今後はEV・PHVの車種を大幅に増やす。米国テスラはブランデンブルク州に大規模なEV製造工場を建設している。

10年後のドイツの街角では、今よりもEVやPHVを見かける頻度が増えているに違いない。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
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