ジャパンダイジェスト

ドイツの春は「シュパーゲル」を食べなくちゃ!

春の香りがしてくると、シュパーゲル愛好家であるドイツ人たちには落ち着かない日々の幕開け。「野菜の王様」や「食べられる象牙」と美辞麗句を欲しいままにしているシュパーゲル。本特集では、シュパーゲルの季節を楽しみ、味わい尽くすためのヒントをお届けする。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部、レシピ:坪井由美子)
※本特集で「シュパーゲル」と表記する場合は、基本的に「白アスパラガス」を指す

参考:planet wissen「Spargel」、Welt「Goethe war ein stolzer Spargelbauer」、Wirtschafts Woche「Die Mär vom besten Spargel」、Niedersächsische Spargelstrasse e.V. ホームページ、Soargekstadt Beelitz「Spargelfest」Touristinformation Schwetzingen「Spargel」、本誌713号「春がきた! シュパーゲルの季節だ!!」

シュパーゲル

ドイツ人が熱狂する「野菜の王様」シュパーゲル大解剖!

古来から人々をとりこにしてきたシュパーゲル(アスパラガス)。「野菜の王様」と呼ばれるゆえんをひも解くとともに、シュパーゲルの季節を祝うイベントやおいしいレシピなど、その魅力を徹底紹介する。

貴族の高級グルメから国民食へシュパーゲルの歴史

シュパーゲルの主要生産産地であるブラウンシュヴァイクにて、シュパーゲルの皮むきに従事する女性たち。1850年ごろから缶詰での保存技術が発達し、長距離輸送も可能になったシュパーゲルの主要生産産地であるブラウンシュヴァイクにて、シュパーゲルの皮むきに従事する女性たち。1850年ごろから缶詰での保存技術が発達し、長距離輸送も可能になった

シュパーゲルの歴史は古く、約5000年前のエジプトにまでさかのぼる。なんとピラミッドの壁画にシュパーゲルが描かれているのだ。紀元前のギリシャでは、ヒポクラテスがシュパーゲルの医学的効果を発見。古代ローマ時代には、哲学者のプラトンや詩人のアリストファネスも好んで食していたと伝えられている。しかし、この時代におけるシュパーゲルは緑色のものが主流。白いシュパーゲルが栽培されるようになるのは、そのずっと後になってからのことだった。

シュパーゲルが商人によって売り買いされ始めたのは、17世紀に入ってから。その当時、貴族階級の美食家たちは好んでシュパーゲルを求めた。文豪ゲーテはあまりのおいしさに「野菜の王様」とたたえ、さらに自家栽培もしていたという。19世紀に入ると、各地で白いシュパーゲルの栽培が始まった。厳しい選抜基準をクリアして市場に出された高級シュパーゲルは、高値で取り引きされるように。1929年には、シュパーゲルをもっと広めようと、シュパーゲル農園の協同組合が結成され、市民運動が活発になった。その頃には、シュパーゲルの栽培には砂地が適していることも研究によって明らかになった。

2021年の統計によると、ドイツの全作付面積のうち、約20%に当たる2万5683ヘクタールがシュパーゲル畑だという。この数字は、ニンジンやタマネギを抑えてナンバー1。さらに農耕面積は年々拡大傾向にある。シュパーゲルは、名実ともにドイツの「野菜の王様」として君臨しているのだ。

シュパーゲルを存分に楽しむための Q&A

Q. 白いシュパーゲルと緑のシュパーゲル、違いはどこに?

A. 栽培方法によって色が変わる。 色が白か緑かは、栽培方法の違いにある。緑のシュパーゲルは太陽の光をいっぱい浴びせながら栽培するのに対し、白いシュパーゲルは砂地に潜らせたまま栽培し、先端が地表にちょっと顔を出した頃に収穫される。緑のシュパーゲルは調理の際に皮をむく必要はないが、白は皮むき必須。栄養価から見ると、緑のシュパーゲルは緑の色素成分、クロロフィルを含むため、白いシュパーゲルよりもビタミンCとカロテンが豊富だ。

Q. 新鮮でおいしいシュパーゲルの見分け方は?

A. シュパーゲルの先端に注目! 新鮮なシュパーゲルを見分けるには、まず、シュパーゲルの先端を観察しよう。先端が広がっていない、しっかりと閉じている状態のものが鮮度の保たれたシュパーゲルだ。切り口が乾き切っていないかどうかもチェックポイントの一つ。好みの問題もあるが、太く長いシュパーゲルは皮もむきやすく、食べ応えがある。また、茎の部分がシャキッと堅いものは採れたての証拠だ。

Q. 白シュパーゲルの旬はいつ?

A. 4月から6月24日の聖ヨハネの日まで。 ドイツでは「サクランボが赤くなると、シュパーゲルの季節は終わり」といわれている。国内産のシュパーゲルは4月に入ると収穫・出荷され始め、6月24日の聖ヨハネの日に収穫を終えるのが伝統。この日は初霜から100日前とされており、シュパーゲルの根に十分な休息期間を与えることによって、次の春に最高のシュパーゲルを収穫できるのだという。

Q. シュパーゲルが苦い!どうして?

A. 成長し過ぎで、苦味が発生することも。 正しく栽培され、適切な時期に収穫されたシュパーゲルであれば、苦味は感じないはず。でも成長しすぎている場合は、根元が硬く、そこから苦味が発生する。もし、苦味のあるシュパーゲルに当たってしまったら、根元を惜しまず切り落として、やわらかい部分だけを調理しよう。シュパーゲルの基本的なゆで方は、こちらのレシピをチェック!

Q. シュパーゲルは健康に良い?

A. 腎臓の動きを活発化し、血液もサラサラに。 シュパーゲルの主成分は水分で、全体の約90%を占める。そのため、カロリーは100グラム当たり20カロリーとヘルシー。一方、ビタミン(A / B1/ B2/ C / E)が豊富であるほか、利尿効果のある成分も確認されている。腎臓の活動を活発にして体内の水分の循環を良くするため、肥満やむくみにお悩みの人にもおすすめ。血液サラサラ食材としても注目を集めている。

Q. シュパーゲルの皮は、絶対にむかなければいけない?

A. 皮は絶対にむこう! 一般的な野菜用の皮むき器でも用は足りるが、シュパーゲル専用の皮むき器を使うと、より簡単に皮をむくことができる。皮のむき方は、頭の方から根元の方へ。またシュパーゲル専用の底の深い鍋も販売されている。

春の遠足にもぴったり!シュパーゲルの街を訪ねて

ドイツにはシュパーゲルの産地を結んだ「シュパーゲル街道」がいくつかあるが、ここでは特に有名なシュパーゲルの名産地をご紹介。シュパーゲルの収穫体験や、おいしいシュパーゲル料理が楽しめるレストランがあるほか、シーズン中さまざまなイベントが開催されている。

バーデン=ヴュルテンブルク州シュヴェツィンゲン Schwetzingen

シュトゥットガルト近郊の街シュヴェツィンゲンは、「シュパーゲルのメッカ」とも呼ばれるシュパーゲルの名産地。同地は、かつてプファルツ選帝侯によって建てられたシュヴェツィンゲン城やそこで行われる音楽祭で有名だ。このお城の庭園で、17世紀に選帝侯のためにシュパーゲルの栽培が始められたといわれ、シュパーゲルは王室御用達の野菜として振る舞われた。宮殿前の広場にあるシュパーゲルを売る女性の銅像(写真)は、この街のランドマークとして知られる。シュパーゲルのシーズン中、シュヴェツィンゲンではシュパーゲル女王を決めるコンテストや、シュパーゲルハイキングなど、イベントが目白押し。

ノルトライン=ヴェストファーレン州ヴァルベック Walbeck

デュッセルドルフの北西に位置するヴァルベックは、ライン川下流の美しい風景に囲まれた小さな村。広い丘の上には教会と、歴史ある二つの風車が立ち、村に足を踏み入れると「シュパーゲルの村にようこそ」と書かれた看板が出迎えてくれる。見渡す限りのシュパーゲル畑が広がり、春にはシュパーゲルの農家での直販やシュパーゲル祭り(写真)などが行われる。シュパーゲルを思いっきり味わうなら、レストラン「Haus Deckers」の「シュパーゲルビュッフェ」がおすすめ。毎週金曜日のディナーにこの時期限定で提供されており、前菜からメインまでシュパーゲル尽くし。毎年混み合うため事前の予約がおすすめ。

ニーダーザクセン州ニーンブルク Nienburg

ニーダーザクセン州では、ドイツのシュパーゲルの5分の1が栽培されている。なかでもハノーファーとブレーメンの間に位置する街ニーンブルクは特に有名。街中にはシュパーゲルを販売する人々のブロンズ像が並ぶ噴水があるほか、シーズン中はシュパーゲル祭りやマラソンイベントなども。もともと農家として使われていた築400年の家を利用したニーダーザクセン州シュパーゲル博物館(写真)では、シュパーゲルの栽培方法をはじめ、保存や加工、販売に至るまで、歴史と共にその作業工程が紹介されている。

ブランデンブルク州ベーリッツ Beelitz

ベルリン近郊で最も有名なシュパーゲル産地のブランデンブルク州ベーリッツでは、ブランデンブルク州のシュパーゲル収穫量のうち50%近くを生産している。旧東ドイツ時代にベーリッツで栽培されたシュパーゲルは、非公式の通貨「白い黄金」として、希少な品との物々交換にも使われたとか。毎年6月の最初の週末に開催されるシュパーゲル祭りでは、シュパーゲル女王やベーリッツのマスコットキャラクター「シュパーゲリーノ&シュパーゲリーナ」(写真)をはじめ、色とりどりの山車(だし)やマーチングバンドが旧市街地をパレードする。

シュパーゲルを味わうレシピ

シュパーゲルの基本的なゆで方

  1. シュパーゲルは先端部分を残してピーラーで皮を厚めにむき(皮は捨てない)、根元を2cm切り落とす。
  2. 鍋にシュパーゲルと皮、ひたひたの水、塩・砂糖各ひとつまみとバターひとかけを入れる。
  3. 鍋を火にかけて、約10分~好みの固さにゆでる。

王道レシピは外せない!シュパーゲルのオランデーズソース

シュパーゲルのオランデーズソース

シュパーゲル料理の定番中の定番といえば、シュパーゲルのオランデーズソース添え。ゆでたジャガイモと生ハムを添えて、シュパーゲルを堪能しよう。市販のソースもスーパーで手軽に購入できるが、自宅でも簡単にできるレシピをご紹介。

(本誌1097号より) レシピはこちらから

うま味たっぷりのゆで汁を使ってシュパーゲルのリゾット

シュパーゲルのリゾット

シュパーゲルのゆで汁にはうま味がたっぷりと出ているので、スープやお味噌汁にリメイクするのがおすすめ。こちらのリゾットでは、そのうま味を吸ったお米をシンプルな味付けで楽しもう。

(本誌1169号より) レシピはこちらから

皮まで味わい尽くす!シュパーゲルのきんぴら

シュパーゲルのリゾット

シュパーゲルを余すところなく味わいたい!という熱い思いから生まれたこちらのレシピ。ごま油で炒めて味付けをすれば、繊維質のある食感が生かされたきんぴらに。ごはんのお供にもぴったり。

(本誌1145号より) レシピはこちらから 春を食べ尽くそう!
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