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ドイツでもじわじわ『ノンアル』ブーム 今夜はノンアルドリンクで乾杯!

ドイツといえばビール大国だが、車社会という背景からもアルコールフリービールの生産にも力を入れてきた。昨今では、健康上の理由からノンアルコールブームに火が付き、スタートアップでもアルコールフリーのジンやワインなどが次々と開発され、スーパーなどでも見かけるようになっている。今号では、そもそもお酒が飲めないという人をはじめ、今日はお酒を控えたいなという本当は酒飲みの人にも、納得のノンアルコールドリンクを一挙にご紹介!
(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

※本特集では、微量のアルコールを含むかどうかにかかわらず、アルコールテイスト飲料全般を「ノンアルコールドリンク」と表記しています。

ノンアルブーム

なぜ今ノンアルブームが来ているのか

今ドイツで、若者を中心にノンアルコールドリンク(以下、ノンアルドリンク)を飲む人が増えている。これには、心身の健康を考えながらお酒と付き合う「マインドフルドリンキング」や、本来お酒が飲める人でもあえて飲酒しない「ソバーキュリアス」などが、数年前から世界的なトレンドとなっていることが背景にある。連邦健康教育センターが2021年にZ世代を対象に行った調査によると、調査対象者の約40%が健康のために飲酒量を減らしていると回答した。トレンド研究者のコリーナ・ミュルハウゼン氏によると、若者の健康意識はこれまでにないほど高まっているという。

とはいえ、ドイツ社会に飲酒文化は深く根付いている。「仕事帰りにビール、友人たちとの夕食でワイン、デートでゼクト……などお酒を飲む機会はたくさんあります。私たちはお酒を本当に飲みたいかどうかをよく考えずに、飲みに誘われたら『Ja』と答えてしまう、飲酒の自動装置のようなものを持っているのです」。2021年にマインドフルドリンキングに関する本(『Mindful Drinking: Nüchtern, happy, katerfrei』)を出版したイザベラ・シュタイナー氏は、シュピーゲル紙のインタビューでこう分析している。

いくら健康のためとはいえ、コミュニケーションのツールでもあるお酒をやめることはそう簡単なことではない。それゆえにノンアルドリンクはお酒の代替品として人々に満足感を与えてくれる手段の一つになっているのだ。心理学者のグイド・ディーレン氏は、ノンアルドリンクの存在によってお酒を飲まない・飲めない人が社会に溶け込むことができ、社会的にも重要な役割を果たしていると分析している。

連邦統計局によると、アルコールフリービールの生産量は過去10年間で96%増加した。ドイツビール醸造協会のホルガー・アイヒェレ会長は「ドイツで醸造されるビールの10本に1本はまもなくアルコールフリーになるだろう」と予想する。またドイツワイン協会によれば、ノンアルコールワインの売上は2022年に18%増加。ノンアルドリンクを専門としたスタートアップも次々と誕生している。

一方で、ドイツ人のアルコール消費量はここ数十年で大幅に減少したものの、国際的に見ればまだまだ多いという。健康のためにお酒を控えることも含め、ウェルネスが重要視される昨今、ドイツでもノンアルドリンクの需要は今後もじわじわと増えていきそうだ。

参考:Merkur.de「Alkoholfreie Getränke so beliebt wie nie - dahinter steckt ein psychologischer Effekt」、Merkur.de「Viele junge Menschen greifen zu alkoholfreien Alternativen – was bedeutet der Verzicht auf Alkohol?」

アルコールフリー表記にご注意!

ドイツでは、アルコール含有量が0.5%以下の場合であれば「alkoholfrei」(アルコールフリー)と表記される。そのため、アルコールフリー飲料には「Alk. < 0.5% vol.」と表示されていることが少なくない。一方、「ohne Alkohol」(ノンアルコール)とする場合には、アルコール度数が0%である必要がある。なお、日本では1%未満を「ノンアルコール飲料」という。アルコールへの耐性が低い人などは、0.5%でも体調に影響することも。また妊娠中はアルコールフリーだとしてもリスクとなる場合もあるため、医師や専門家のアドバイスを受けよう。また、16歳未満のノンアルコール飲料の購入・摂取は法律で禁止されていないが、基本的には推奨されておらず、企業や店舗の判断で提供を断ることも可能。

ビールもワインもスピリッツも!おうちで楽しむノンアルドリンクカタログ

アルコールフリービールをはじめ、ワイン、スピリッツなど、最近はノンアルドリンクにもたくさんの選択肢がある。ドイツの老舗醸造所からスタートアップまで、お酒の代わりに楽しめるドリンクをカテゴリ別にピックアップ!

※公式サイト上の価格を記載(2024年7月現在)

アルコールフリー ビール

LAGER ラガー Clausthaler
Alkoholfrei Original Alk. < 0.5%

Clausthaler Alkoholfrei Original

1979年に創業し、アルコールフリービールのパイオニアとしてドイツのアルコールフリー市場をリードしてきたClausthaler(クラウスターラー)。ビール純粋令を遵守しつつ、独自の醸造技術を用いた脱アルコール製法で造るラガービールが「Alkoholfrei Original」だ。爽やかなのど越しにクリーミーな口当たりで、世界中にファンがいる。2024年に全ての商品のデザインが一新され、シンプルで洗練されたおしゃれなボトルに。ほかにも、さらにビターな味わいが楽しめるExtra Herb、すっきりとしたレモン味のNaturradlerなどがある。
www.clausthaler.de

PILSNER ピルスナー Warsteiner
Pilsener Alkoholfrei Alk. < 0.5%

Warsteiner Pilsener Alkoholfrei

ピルスナーで知られるWarsteiner(ヴァルシュタイナー)。270年の歴史で培ってきた醸造技術と最高の材料で造るアルコールフリービールは、キリッとしたのど越しが特徴だ。ドイツの「暮らしの手帖」こと、商品テストを行う「Stiftung Warentest」が、2024年にビールメーカー20社のアルコールフリービールをランク付けした結果、この「Warsteiner Pilsener Alkoholfrei」が見事ナンバー1に選ばれた。ほかにも、完全アルコールフリーを実現させた「Alkoholfrei 0.0%」をはじめ、Alkoholfrei 0.0%を使用したレモンとグレープフルーツのラドラーを展開している。
www.clausthaler.de

IPA アイピーエー Kehrwieder
überNormalNull Alk. < 0.4%

Kehrwieder überNormalNull

ハンブルクのクラフトビール醸造所といえば、2011年に創立されたKehrwieder(ケアヴィーダー)。100種類以上のビールで40以上の国際賞を受賞し、成功を収めてきた。これまでドイツスタイルのアルコールフリービールは他社でも製造されてきたが、それをIPA(インディアンペールエール)で実現させることが同社の目標だった。そうして2018年に開発されたのが、ドイツ初のアルコールフリーIPA「überNormalNull」だ。マンゴー、パイナップル、ライムのフルーティーな香りとホップの苦味が調和し、数々のクラフトビール賞を受賞。ビール好きの人も納得の味!
www.kehrwieder.beer

アルコールフリー ワイン

RIESLING リースリング Kolonne Null Riesling Alk. 0.3%
10.90€/0.75L

Kolonne Null Riesling

極上のノンアルコールワインを創り出すことを使命に、2018年にベルリンで創立されたKolonne Null。欧州全土のワインメーカーや研究機関と提携し、1000種類以上のワインを使って脱アルコール製法を試すなど、あくなき探求心で研究を続けている。リースリングは毎年ヴィンテージが登場。現在発売されているRiesling 2023は、秋に雨が多かったことが影響し、スパイシーな酸味が特徴的なノンアルコールワインに仕上がった。ほかにもキュヴェ各種、ロゼ、スパークリングがある。ロゼスパークリングは、ピクニックなどにも便利な缶タイプも。
https://kolonnenull.com

SAUVIGNON BLANC ソーヴィニヨン・ブラン GOODVINES
Sauvignon Blanc alkoholfrei Alk. 0.0%
9.90€/0.75L

GOODVINES Sauvignon Blanc alkoholfrei

ハイデルベルクにあるGOODVINESは、ノンアルコールワインを専門とする企業。ワイン醸造の最新技術と経験豊富な醸造家の知識を活かし、完全にナチュラルなノンアルコールワインを創り出している。リースリングをはじめ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンなど、ワイン好きも思わず試したくなるラインナップばかり。そんなGOODVINESのアルコールフリーのソーヴィニヨン・ブランは、パプリカや刈り立ての草原を思わせるソーヴィニヨン・ブラン特有の香りが感じられ、フルーティーでほどよい酸味があり、夏にぴったり。しっかり冷やして魚料理やパスタに合わせて楽しんで。
www.goodvines.de

SPARKLING スパークリング BIBO RUNGE
Deserteur Sparkling Riesling Alkoholfrei Alk. < 0.5%
12.80€/0.75L

BIBO RUNGE

2017年からマルクス・ボンゼルス&モニカ・アイヒナー夫婦が営むBIBO RUNGEは、リースリングの名産地ラインガウのワイナリー。手作業による収穫、丁寧な圧搾、天然酵母での発酵に時間をかけ、香り豊かなワインを生み出している。そんな同社のリースリングを100%使用した「Deserteur Sparkling Riesling Alkoholfrei」は、バニラ、蜂蜜、かんきつ類を組み合わせた芳醇なアルコールフリーのスパークリングワインだ。おめでたい席に用意すれば、お酒を飲めないゲストにもきっと喜ばれるはず。ほかにも、リースリング、スパークリングロゼを展開している。
https://bibo-runge-wein.de

ROSÉ ロゼ EINS-ZWEI-ZERO
Rosé entalkoholisiert Alk. 0.0%
8.50€/0.75L

EINS-ZWEI-ZERO

1744年からリューデスハイムでワインを造り続けているLeitz(ライツ醸造所)。リースリングのスペシャリストとして、国際的に知られるワイナリーだ。そんなライツが2017年から販売するアルコールフリーワイン「EINS-ZWEI-ZERO」は、同社の辛口リースリング「EINS-ZWEI-DRY」からその名が付いた。ロゼはローズヒップやラズベリーで香りづけされており、夏の食卓に花を添えてくれる。ほかにもリースリングやスパークリング、シャルドネ、ピノノワールなど、TPOに合わせて選べるのがうれしい。近々日本でも販売が開始される予定だ。
www.leitz-wein.shop/Eins-Zwei-Zero

アルコールフリー スピリッツ

RUM ラム VOGELFREI
Sugar Cane Alk. 0.0%
23.00€/0.5L

VOGELFREI

HEIMATは、創業者の一人であるルーヴェンの父の醸造所を受け継ぎ、マルセルとラファエルの3人で2018年に創業したジンとラムの蒸留所。バーデン=ヴュルテンブルク州シュヴァイゲルンに位置し、ラム樽だる倉庫はドイツ南部最大規模を誇る。伝統的な蒸留法で造られる濃厚なラムはワールド・スピリッツ・アワーズを受賞している。そんなHEIMATがラムのノンアルコール代替品として誕生させたのが「VOGELFREI Sugar Cane」だ。ラムと同じくサトウキビをベースに、アルコールの風味にチリ、樽の香りとしてリムザンオークを使い、計10種類のボタニカルでラムを再現。ラムコークなど、ラムと同じようにカクテルが楽しめる。
www.heimat-distillers.de

GIN ジン Siegfried Wonderleaf Alk. 0.24%
18.90€/0.5L

Siegfried Wonderleaf

Siegfried(ジークフリート)は、ドライジンのブランドとして2014年に誕生。ワールド・スピリッツ・アワード2015でドイツ生まれのジンとして最高点を獲得し、ダブルゴールド賞を受賞した。そんなジークフリートが2018年にドイツで初めてのノンアルコールジンとして発売したのが、この「Wonderleaf」だ。ボダイジュの花、オールスパイス、ジュニパーベリーなど18種類のボタニカルを使用し、本物のジンさながらの風味が味わえる。ストレートではなく、トニックウォーターなどと割って楽しもう。ほかにもラズベリーやハイビスカスを使った「Wonderleaf Rosé」、トンカビーンズやナツメグが効いた「Wonderoak」がある。
www.hellosiegfried.com

LIMONCELLO レモンチェッロ Laori Amalfi No 03 Alk. < 0.3%
16.90€/0.5L

Laori Amalfi No 03

2019年にベルリンで創業したLaori。ビジネスを始めたきかっけは、創業者ステラがお酒を飲みたくなかったある晩、「アルコールの入っていないジンが飲みたい!」と思ったこと。フランスの香水製造にインスパイアされたオリジナル製法を開発し、ノンアルコールジンを誕生させたのち、スピリッツのほかにもスパークリングワインなど、次々と商品を生み出してきた。このほど新しく仲間入りしたのが、イタリアの食後酒としておなじみのレモンチェッロを再現した「Laori Amalfi No 03」だ。トニックウォーターやノンアルコールスパークリングワインとミックスすれば、爽やかな一杯の出来上がり!
www.laoridrinks.com

APERITIF アペリティフ POLLY Italian Aperitif Alk. 0.3%
14.90€/0.5L

POLLY Italian Aperitif

POLLYはノンアルコール専門のスピリッツを扱う会社として、2022年にケルンで誕生した。何らかの理由でお酒が飲めない人、お酒を飲みたくない人たちが、パーティで水やジュースではなく、もっと楽しくなれるドリンクの選択肢を作ることが同社の使命だった。そうして誕生したスピリッツの一つが、ノンアルコール食前酒の「Italian Aperitif」。オレンジとハーブを使い、ほろ苦くもさわやかな夏の味が楽しめる。おすすめの飲み方のレシピは、ホームページをチェックしよう。ほかにもジン風の「London Classic」やラム風の「Caribbean Classic」など、ラインナップが豊富。
https://drinkpolly.de

変わり種 ソフトドリンク

TONIC WATER トニックウォーター Thomas Henry Thomas Henry Tonic Water
0.2L/0.75L

Thomas Henry Tonic Water

モノクロのポートレートがトレードマークのThomas Henryは、2010年にベルリンで創業し、カクテルのために最高のミキサーを生み出してきた。社名であるトーマス・ヘンリーとは、19世紀の英国人薬剤師であり、薬用に炭酸水を販売した人物として知られる。数種類のトニックウォーター、ジンジャードリンク、サイダーなど、さまざまな商品を展開し、ドイツ国内外のバーテンダーたちに認められている。通常のカクテルはもちろん、モクテル(右記参照)を飲むのにも大活躍。ほかにもSpicy Ginger BeerやPink Grapefruitなど豊富なラインナップがあり、ちょっと大人な味のソフトドリンクとしてもおすすめ。
www.thomas-henry.de

OXYMEL オキシメル Kruut Kruut Balance
14.50€/0.15L(15杯分)
32.50€/0.5L(50杯分)

Kruut Balance

ベルリンを拠点とする「Kruut」は、低地ドイツ語でハーブ(Kraut)を意味する。数千年の歴史で培われてきたハーブを現代の生活にも活かすことをミッションとし、野生のハーブを利用した商品を展開している。メインの製品が、古代ギリシャから伝わるりんご酢と蜂蜜で作るオキシメルだ。Kruutのオキシメルは、ブランデンブルク州で採れる天然蜂蜜、オーガニック認証Demeterを取得したリンゴを使用。「Kraft」(パワー)や「Ruhe」(静寂)などの名前が付けられたオキシメルは、それぞれ地元で採れたハーブで味付けされている。炭酸水で割って、朝や運動後、夜寝る前など、健康的な生活に取り入れてみて。
https://kruut.de

KOMBUCHA コンブチャ ROY Kombucha ROY Kombucha Taste Pack
39.90€/0.33L×12

ROY Kombucha

コンブチャと聞いて「昆布茶⁉」と思う人はきっと少なくないと思うが、その正体は発酵飲料の紅茶キノコ。紅茶(お茶)に砂糖を加え、酢酸菌であるスコービー、酵母による菌株を入れて作られる、独特の甘酸っぱさがある炭酸飲料だ。2010年頃から欧米でブームとなり、現在では缶入りのものを中心におしゃれなパッケージのコンブチャが見つかる。ROYは2019年にベルリンに設立されたコンブチャのスタートアップ。ジンジャー、ラズベリー、レモン、キュウリ&ミント、ベルリンのお茶ブランド「Paper & Tea」のお茶を使用したピュアプラーナのほか限定商品も。手作りキットもあるので、ハマった人はぜひ自家製に挑戦してみては?
https://roykombucha.com

今人気の「モクテル」とは?

ノンアルコールカクテルを意味する「モクテル」(mocktail)をご存知だろうか。米国や英国で禁酒法があった1920~30年代に、カクテルをまねた(mock)ものとして提供されていたのが、モクテルの起源といわれている。1933年に禁酒法が撤廃され、数十年の間ほぼ忘れ去られていたモクテルだったが、先述のマインドフルドリキングやソバーキュリアスのブームもあり、今再び世界各地で人気急上昇中。ドイツのカクテルバーやレストランでも、メニューにモクテルの欄があるところが増えており、これまでソフトドリンクやジュースしか選択肢がなかったノンアル派にはうれしい傾向だ。フルーツなどを使った甘めのモクテルをはじめ、スピリッツの代替品を使ったジントニックやラムコークなど、バリエーションが増えている。また、インターネットで「mocktail」や「alkoholfreier cocktail」と検索すれば、自宅でも簡単に作ることのできるモクテルレシピが見つかる。今回ご紹介したスピリッツ(p12)も使って、おしゃれなノンアルドリンクをぜひ楽しんでみて。

mocktail

 
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