ジャパンダイジェスト

ワインと食の合わせ方 3 ワインのウエイトに注目!

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「魚には白ワイン、肉には赤ワイン」というよく知られたルールがありますが、ある種の魚介料理に合う赤ワインもあり、鶏肉や豚肉、子牛肉には白ワインも合います。このほかロゼやオレンジワイン(1003号参照) という選択肢もあります。ワインの色だけに注目するのではなく、料理のウエイト(重量感)とワインのウエイト、食材のテクスチュア(質感)とワインのテクスチュア、 料理の風味とワインの風味のバランスが良いと、食事とワインの双方をより楽しむことができます。

「ウエイト」に関して参考になるのが、ドイツで最もよく知られるソムリエールの1人、クリスチーナ・フィッシャーさんの著書「Wein & Speisen」です。ワインと食のマッチングを解りやすく体系化した実用書で、英語版もあります。

クリスチーナさんは、世界中のあらゆる白ワイン、赤ワイン、甘口ワイン、スパークリングワイン、酒精強化ワイン(シェリーなど)を、軽快なものから重厚なものに至る4カテゴリーに分類し、それぞれに合う料理、調理法、ソースなどを紹介しています。

4つのカテゴリーは、軽いものから重いものへと、タイプ1(ライト&フレッシュ)、タイプ2(ジューシー&ハーモニー豊か)、タイプ3(重層的&エレガント)、タイプ4(重厚&リッチ)に分けられています。ただ、ドイツでは気候柄、アルコール度数が14度を越える、タイプ4のような重厚なワインは作られません。

ドイツワインの場合、タイプ1はミュラー・トゥルガウ、エルプリング、リースリングならカビネットクラスまで、赤ならトロリンガー。タイプ2はジルヴァーナー、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、赤のシュペートブルグンダーやドルンフェルダーなどのクヴァリテーツワイン。タイプ3はエアステス・ゲヴェックス&グローセス・ゲヴェックス級のワインが相当します。主にアルコール度数の高低が、ワインの軽さ、重さの目安となります。ここで思い浮かぶのが、VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)の4段階の格付け(グーツワイン、オルツワイン、エアステ・ラーゲ&グローセ・ラーゲ)です。最近では会員以外の醸造所も、この格付けにならってワインを3段階、または4段階で生産しています。格付けの段階は、軽快なワインから重厚なワインへの段階にほぼ対応しています。

ライトなワインに合わせるライトな料理なら、サラダ、茹で野菜、焼き野菜、セビーチェやカルパッチョ、魚介のグリルやエスカベッシュ、サラダ感覚のパスタなど。中くらいのウエイトの料理は、テリーヌ、リゾット、ラザニア、鶏肉、豚肉、子牛肉料理、クリームソースを使う料理、チーズフォンデュなど、重厚な料理なら、牛肉のステーキ、ジビエ料理、濃厚なソースを使う料理などが思い浮かびます。ワインを2段階用意しておき、どちらが合うか比較するのも楽しいと思います。

同じ魚でも、カルパッチョや茹でたものはライト、ソテーやフライなら中くらい、ベーコンなどを巻いて焼くと重めになります。ソースでは、ヴィネグレットソースやチャツネは軽快、ブール・ブランなどは中くらい、グレイビーソースなどは重厚です。同じ食材でも調理法やソースを変えれば軽いワインにも重厚なワインにも合うようになります。このように、ウエイトについてちょっと思いをめぐらせるだけで、料理とワインの、だいたいのマッチングが見つかります。

 
Weingut Stachel
シュタッヒェル醸造所(プファルツ地方)

Weingut Stachel

プファルツ地方南部、マイカマーの家族経営の醸造所。所有畑は15ヘクタール。3代目にあたる父エーリッヒが主にぶどう栽培を、息子マティアスが醸造を担当する。エーリッヒはロワールで、マティアスはカリフォルニアとニュージーランドで、それぞれ醸造経験を持つ。マイカマーのキルヒェンシュトゥックとハイリゲンベルク、アルスターヴァイラーのカペレンベルクなど6つの優れた畑を所有。土壌を何よりも大切にし、投入するのはオーガニック肥料だけ。リースリング、ゲヴュルツトラミーナを始めとするドイツの伝統品種に加え、エーリッヒがソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロの栽培を開始。マティアスもシラー、マルベックを新たに植え、親子共にフランス品種にも力を入れている。

Weingut Stachel
Bahnhofstraße 40, 67487 Maikammer
Tel. 06321-5112
www.weingut-stachel.de


2015 Sauvignon Blanc Paradies2015 Sauvignon Blanc “Paradies” 9,70 €
2015年ソーヴィニヨン・ブラン「パラディース」辛口

ディーデスフェルダーのパラディースは、ハンバッハ城を頂く丘の裾野にある雑色砂岩土壌の畑。背後の山なみが、畑を霜害などから守っている。父エーリッヒがソーヴィニヨン・ブランの栽培を開始したのは2000年。収穫量は1ヘクタール当り45 ヘクトリットルに抑えられている。ハーバル系の清々しい風味が印象的で、味わい深いワインはニュージーランドよりもロワールのスタイルを思わせる。香りは控えめで、ライトな料理から、中くらいのウエイトの料理まで広く合わせられる、気品あるソーヴィニヨン・ブランだ。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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