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ドイツの職場で働く人のために駐在歴18年のプロに教わる
ドイツ流の働き方

駐在員として日系企業のドイツ支社に赴任したり、現地採用枠でドイツ企業に就職したり、いずれの場合も日本とは違う環境や働き方に戸惑うことが少なくありません。そもそもなぜドイツは労働生産性が高いのか、ドイツの職場で成果を残すにはどのような働き方が求められるのか。『ドイツ人のすごい働き方』の著者で知られる西村栄基さんにお話を伺いました。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:西村栄基『ドイツ人のすごい働き方』、『ドイツ人のすごいリーダーシップ』

西村栄基さん 西村栄基さん
Shigeki Nishimura
計18年間ドイツ・デュッセルドルフで駐在生活を経験。著書に『ドイツ人のすごい働き方』『ドイツ人のすごいリーダーシップ』がある。現在は日本の企業やビジネスマン向けにドイツ流の働き方などを提案するセミナーなどを行う。趣味は旅行、マラソンのほか、ビアソムリエなどのさまざまな資格を取得。
https://shigekinishimura.com

なぜ労働生産性が高いのか?
ドイツ人の働き方の秘密

ドイツでは日本よりも平均労働時間が年間286時間短い(2024年時点)にもかかわらず、ドイツの国内総生産(GDP)は2023年に日本を抜いて世界第3位に。2002~2007年、2013~2025年までの計18年間ドイツに駐在していた西村栄基さんは、ドイツの労働生産性の高さの背景には「仕事とプライベートの両立」があると話します。

「ドイツに来て最初に戸惑ったことは、仕事に対する価値観が根本的に日本と違うことでした。当時、僕自身にとって『仕事=人生』でした。でも、ドイツの場合は『やるときはやる』『ここまでやる』という仕事とプライベートの境界線を設けていて。定時になるとオフィスから人が消え、30日間の有給休暇をフルで取得しているにもかかわらず、仕事はきちんと回っていたんです」

西村さんは、30代前半で日本の半導体メーカー本社からデュッセルドルフのヨーロッパ支社に赴任。20数名いた大部屋に日本人は一人という環境で、ドイツ人の上司や同僚たちの仕事をそばで見ながら、少しずつドイツ流の働き方を自分のものにしていきました。そして、自身の趣味の時間も大切にするようになり、プライベートを充実させることが仕事のパフォーマンスにもつながることを身をもって実感したのでした。

「それから、僕の周りにはリタイア後も含めて人生設計をきっちりしている人が多くいて。これからどうキャリアを積んでいくのか、長期目標を立てて現在地を俯瞰して見ることは、ドイツの方々から学んだことですね」

1社目の駐在を終えた西村さんは、日本へ帰国後にMBAを取得。人生の次なるステップに向けて半導体商社に転職し、ヨーロッパ支社を立ち上げるというミッションのもと、再びデュッセルドルフに赴任しました。2社目では日本人が中心でしたが、1社目の経験をもとにドイツ流の働き方を実践できたと言います。

ドイツと日本のいいとこ取り
ハイブリッド式のすすめ

昨年8月に2社目を退職した西村さんは、再び日本へ戻り、今新たな挑戦に向けて動き出しています。

「僕はドイツがすごく好きで長くいたわけではないんです(笑)。でも、なぜこんなに長くドイツにいさせられているんだろうと考えたとき、ドイツと日本の懸け橋となることが自分の人生の役割だと思って。一つはドイツの働き方や仕事術を日本にもっと広めたいと思っていて、日本国内の働き方改革や企業向け研修などの活動を本格化させていく予定です。また、ドイツと日本の働き方ではさまざまな違いがあり、日本の働き方でも実際に数値として生産性が上がっている部分があるので、僕はいいとこ取りのハイブリッド式を提案していきたいなと。なので、今後は日本の働き方のいいところをドイツに紹介していけたらとも思っています」

すでにツァイト紙などドイツメディアのインタビューも受けているという西村さん。GDPで日本を抜いたとはいえ不況が続くドイツで、新たな視点として日本の働き方が今後注目されていくかもしれません。

さて、次項では、西村さんに日本のいいところも活かしつつ、ドイツの職場における働き方についてアドバイスをいただきました。これからドイツで働き始める人も、ドイツの職場で悩みがある人も、きっと参考になるはず!

ドイツの職場で働くための9つの心得

西村さんが実際にドイツで習得した仕事術のほか、ドイツで働く日本人としてどのような働き方が求められるか、教えていただきました。さっそく明日から実践して、仕事もプライベートも充実させましょう!

心得 1 ドイツ人は議論好き!ロジカルに対応を

ドイツ人はとにかく議論好きなので、負けないように論理武装はしておいた方がいいですね。日本の教育だとディベートなどの機会は少ないので、あまり鍛えられていないスキルの一つかもしれません。日本では論理と感情がごちゃまぜになりやすい傾向にあると思いますが、基本的にロジカルに対応していくことが重要です。職場の課題に対して意見をぶつけ合うという状況では、お互い納得できる形で収める必要があり、決着がつかないと関係性が悪くなることも。ロジカルに対応するためには、①論点を明確にする、②相手の意見をよく聞く、③相手の人間性を否定しない、を意識してみてください。

心得 2 帰宅前にタスクを書き出しておく

1社目のとき、ドイツ人の同僚たちが帰宅前に必ずメモを取っていることに気が付きました。翌日行うべきタスクのリストを作り、次の日に出社したら、そのタスクに優先順位をつけてスケジュールに組み込んでいて、それが仕事の効率化につながっているのだと感じました。僕もこれを真似してみたところ、生産性が爆上がりするのを実感。タスク管理アプリやスマホのメモでもいいですが、個人的には手書きは完了したタスクを横線で消すときに達成感を味わえるのでおすすめです。

心得 3 駐在員に求められる管理能力

現地採用の場合、職務定義書でタスクを明確にしたジョブ型雇用がほとんどです。そのため、業務外の仕事を依頼すると「それは私の仕事ではありません」と拒否されます。そんなとき、各スタッフの役割を明確化し、スタッフ同士の仲介役をするなど、管理職につく駐在員にそうした役割が期待されることが少なくありません。また、駐在員は現地のスタッフだけでなく、日本の本社、さらに欧州内の取引先や仕入れ先との関係性も重視する必要があります。現地の法律を遵守しながら、さまざまなステークホルダー(利害関係者)を理解し、なおかつ成果を出すことが、駐在員には求められると思います。

心得 4 現地採用の日本人に期待されるカバー能力

もちろんドイツの労働法に従うことがベースにありますが、日系企業の場合は現地採用の日本人に対して「ここまでは察してやってくれるよね」という期待が暗黙のうちに生まれている場合もあります。例えば、前述の職務定義書から外れるタスクがあったときに誰がカバーするのかという場合、ドイツ人のスタッフからは「それは私の仕事ではありません」と言われてしまうため、マネージャーとしては日本人スタッフに協力をお願いする場面も出てくると思います。現地採用の日本人の方々は可能な限り対応しつつ、できない場合はきちんと相談するなど、柔軟な対応を心がけましょう。

心得 5 ドイツ語は昔ほど必要ではない?

僕が赴任したときは街中で英語がほとんど通じなかったので、頑張ってB1レベルを取得しました。ただ、仕事で役立ったかといえば、正直なところダイレクトには役立ちませんでした。最近は都市部では英語だけでも生活できる場面が増えてきているので、費用対効果(時間対効果)を考えるとドイツ語習得の優先順位は低くなってしまうでしょう。一方で、現地採用された方でドイツに長く滞在しようと思ったら、無期限滞在ビザの申請にはB1の取得が必要ですし、ドイツ語を通じてドイツ人の考え方や歴史的背景を深く理解できるようにもなるため、学ぶ価値はあると思います。

心得 6 休暇はきちんと調整&準備すべし

ドイツでの有給休暇は基本的に30日間。職場では同じ職種の人と休みが重ならないようにするなど、休暇の調整が必要です。当人同士で収まればいいですが、うまくいかない場合はチーム全体で話すこともあるため、管理職についている駐在員の場合は留意すべきでしょう。また、休暇を取る人も業務をほったらかしにしていくわけにはいかないので、業務のドキュメント化、さらにはマニュアルを作ったり一部を自動化したりするなど、引継ぎが極力最低限になるように日頃から準備をしておく必要があります。また、引継ぎ対象者には敬意を払い、丁寧にコミュニケーションを取ることも大切です。

心得 7 悩みごとはしっかり話す

1社目の社内公用語は英語だったので、自分の英語力の問題もあって言いたいことをちゃんと言えず、もやもやしていることが多々ありました。一方でドイツ人の上司との1on1(一対一のコミュニケーション)の中で解決することも。さらに、だんだん慣れてくると「ここまで言っても大丈夫なんだ」という感覚がつかめてきます。また、上司に相談するときは「困っています」と一方的に助けを求めるのではなく、自分でも解決策を考えた上で相談すると、より適切な助言と必要な協力が得られやすくなるでしょう。

心得 8 昇給に向けた目標は明確にする

会社によって違うと思いますが、一般的には年に1回昇給のチャンスがあります。日本の昇給と違って主に交渉によって昇給が決まるため、もめることも少なくありません。交渉の場では、年度目標に対して達成度合いのレビューをして、さらに次のチャレンジ目標を決めていきます。昇給のチャンスを少しでも高くするためのアドバイスとしては、目標を立てるときに可能な限り計量化する、すなわち数字を入れることです。定性的な目標であっても、達成度合いの基準を明文化しておくことで、達成度合いをレビューする際にもめにくくなると思います。

心得 9 日本的な気遣いはドイツでも強みになる

日本的な気遣いができるということは、視野が広いということでもあります。気遣いのできる人は組織がどこに向かっているのか、自分のタスクの重要性や位置づけが分かっているため、誰かに言われなくても先を読んで動けるものです。それができれば、周りの人は仕事がやりやすくなり、結果としてチーム全体のパフォーマンスを高め、調和を生み出すことにつながります。ただし、日本の場合は、空気を読み過ぎるがゆえに自己犠牲を払うことも少なくありません。ドイツ式に役割はしっかりと分けつつ、日本式にカバーできるところはカバーし合えるような、バランスの取れたハイブリッド式の働き方が理想ですね。

もっと詳しく知りたい方は

ドイツ人のすごい働き方

ドイツ人のすごい働き方 日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密

著者:西村栄基
発行元:すばる舎
発行日:2024年9月24日

労働生産性が高いドイツ式の働き方をひも解くと同時に、心得②でご紹介したような仕事術や思考法など、実用的なテクニックが満載!


ドイツ人のすごいリーダーシップ

ドイツ人のすごいリーダーシップ 上司が3週間休んでもうまくいく最高の仕組み

著者:西村栄基
発行元:すばる舎
発行日:2025年11月25日

西村さんがドイツでの経験を踏まえ、リーダーシップの本質を徹底解剖。マネジメント業務に従事するビジネスパーソンは必読の一冊だ。

※いずれも電子版あり

 
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