ジャパンダイジェスト

挑戦する大和撫子 サッカー選手安藤梢

今年2月、極寒のドイツに到着した安藤梢選手は、渡独から1週間を待たずにドイツ・カップ(DFBポカール)準々決勝のケルン戦に後半27分から途中出場。
堂々の初ゴールを決め、デュイスブルク・ファンに新メンバー“Kozue Ando”の存在を印象付けた。
それから約3カ月が経った今、大躍進を続ける安藤選手の想いとは。
(編集部:高橋 萌)

Kozue Ando安藤梢 安藤 梢(あんどう こずえ)
1982年7月9日生まれ。栃木県宇都宮市出身。宇都宮女子高校、筑波大学、さいたまレイナス、浦和レッズレディースを経て、2010年2月に渡独。昨年、日本では最優秀選手に選ばれたほか、ベストイレブン、得点王(18得点)、サポーターが選ぶMVPも受賞。1999年から日本代表としても活躍中。
• 血液型:A型
• 身長/ 体重:164cm/55kg 
• 現所属:FCR2001 デュイスブルク
• ポジション:FW
• 背番号:26
• 利き足:右足
• 所属チームHP:www.fcr-01.de

ちょうど慣れて来たところ。
すごく楽しくなってきました

練習場から10分ほどの距離に住居を構えるという安藤選手が、約束の時間にさっそうとスズキのスイフト(SWIFT)で登場。ドイツでの生活には慣れてきたみたいですね?

はい。だいぶ慣れました。

今回、初めての海外生活ということですが、戸惑いはありませんでしたか?

ありましたね。特に最初の2週間は、言葉がまったく分からない状態だったので、きつかったです。ドイツでの運転(右側通行)も、もちろん初めての経験。サッカーについても、スタイルが全然違うことに戸惑いを感じました。今はちょうど慣れて来たところで、すごく楽しくなってきました!

休みの日は、どんなことをして過ごしているんですか?

チームメイト達が本当に親切で、いつも気に掛けてくれています。パーティーがあれば呼んでくれるし、「アイス食べに行くぞーっ!」て、突然電話してきて誘ってくれたり。そういうのが嬉しいです。デュイスブルク在住の日本人の皆さんとも一緒にご飯を食べたり、お出掛けしたり、楽しく過ごさせていただいています。

デュイスブルクは、アットホームなチームなんですね。

監督も女性で、しかも元ドイツ代表選手としての輝かしい経歴を持っている人。だからこそ、女子選手の気持ちを分かってくれる。ピッチの外では、お母さんのようにやさしい感じの方で、でもサッカーのこととなるとすごく厳しくて。そのメリハリがしっかりしているからこそ、選手たちは監督を心から信頼しています。その信頼関係がアットホームな雰囲気を作っていて、チームを良い状態に保っているようです。

スズキスイフトで移動動
練習にも、お買い物にも、車での移動が便利なデュイスブルクでの生活。車(スズキ スイフト)の提供元:Auto-Park Rath GmbH

FCR 2001 デュイスブルクの中にはドイツ代表選手が何人もいます。その中での練習はハードですか?

このチームには現在、6人のドイツ代表選手がいるんですけど、普段の練習の方が大変というか・・・・・・。

試合よりも?!

試合ももちろん大変ですけど、対戦相手よりもチーム内の方が代表選手が多いので、練習でドイツ代表選手2人からマークされたりするんです。毎日が刺激的だし、すごい環境で練習できているなという実感があります。

試合を重ねるごとに
手ごたえを感じてきています

プレー・スタイルの違いに戸惑われたということでしたが、 具体的には日独でどんな違いがありますか?

一番最初に感じたのは、とにかく「速い」ということ。あとは、ロングボールが多く、1本のパスの距離が全然違う。日本人だったら、あまりキック力がないので2~3本のショートパスを細かく繋いでいくところを、ドイツだと逆サイドに一発で展開する。そのテンポの速さと、身体能力の高さに驚 きました。

ドイツに来てから、ご自身の中で変化を感じますか?

慣れて来たということは、毎試合感じています。1試合ごとに自分ができることが増えてきている。例えば、ヘディングの競り合いや1対1の戦いは、すごく激しくて相手の方が体格も力も上なんですけど、なんとか懐にもぐりこんで先にボールに触れるだとか。まだまだ、なんですけど、徐々に手ごたえを感じてきているので、もっと頑張りたいと思います。

その積み重ねが得点に繋がっているんですね。

フォワードなので、このチームで自分の存在を認めてもらうには、ゴールがすごく大きな意味を持ちます。そのため、ゴールに対する意識をかなり強く持って臨んでいます。それから、やっぱり一緒にコンビネーションを組んでいる選手が代表選手だったり、良い選手ばかりなので、絶妙なパスをくれるということも得点に繋がっています。

日本代表
昨年7 月にマンハイムで行われた日本対ドイツの親善試合にて。 安藤選手とヒンクスト選手
(1.FFCフランクフルト所属)。

優勝争いをしている1.FFCトゥルビネ・ポツダムには、同じく今年からブンデスリーガに移籍した日本代表の永里優季選手がいますね。特別なライバル意識はありますか?

今までに、すでに何回も試合をしていますが、「日本人だから」ということでは特に意識していません。でも、ポツダムはデュイスブルクにとって一番のライバルチームなので、このチームから「ポツダムには負けられない」っていう意気込みが伝わってきて、それが自分にも根付いてきています。自分自身、優勝したいですし、負けられないなって思います。

プレーで心掛けていることは?

日本でやってきたことと一番違うのは、とにかく早くボールを受ける準備をするということです。受ける準備が遅いとボールがもらえないので、予測して、少しでも早く(ボールを)もらう体勢に入る。このチームのスピードのあるサッカーに自分をフィットさせ、コンビネーションを高めるため、動きの質を上げることを考えています。

あえてチャレンジできる、
レベルの高い環境を選ぶ

ドイツ移籍という決断に迷いはありませんでしたか?

アメリカにもプロリーグがあって、そちらからもオファーをいただいていたので、正直迷いました。でも、フットボール文化が根付いているヨーロッパでサッカーをしてみたい気持ちが強く、さらに昨年11月に見学に来たとき、このチームと監督を見てドイツ行きを決断しました。あとは、チャンピオンズリーグがあるというのが魅力的でした。

ところが、UEFAへの登録問題でチャンピオンズリーグに出場できないというアクシデントが起こりましたね。

ここに来た目的の1つだったので、出場できないと聞いたときはすごくショックで・・・・・・。今回、問題が解決して準決勝から出ることができて、本当に良かったです。

ピッチに立ったときの感想は?

出場できるよう、いろんな方に協力していただきました。試合に出るまでが大変だった分、ピッチに立ったときは感動しました!

FCR2001デュイスブルクの練習場への目印。
FCR2001デュイスブルクの練習場への目印。

女子サッカーは、男子と比べると競技人口が少ない競技と言えるかと思います。安藤選手がサッカーに打ち込む理由、感じる魅力とはどんなものですか?

3歳からサッカーを続けているんですけど、とくかくサッカーが好きで、上手くなりたいっていう気持ちがずーっとある。だから、それを追求し続けているという感じです。今でもそうです。ほかにもサッカーの魅力はいっぱいありますが、サッカーを通して自分も成長できるところが一番の魅力です。

3歳の頃から芽生えた向上心が安藤選手をドイツに運び、そして世界と繋いだんですね。日本代表としてプレーするのはどんな感じですか?

勝つために全力を尽くすのは(どのユニフォームを着ていても)いつも同じで、デュイスブルグでの戦いも毎試合とても大事な試合だけど、日の丸を背負って、その重みを感じながら戦えるっていうのは、すごく幸せなことです。代表としてプレーすることに誇りを持っています。

先頃、日本サッカー協会から海外強化指定選手にも選ばれ ました。

協会の方からも支援していただけるというのは、本当にありがたいことです。私はプレーで返すことしかできないと思うので、とにかく良い結果、良い報告ができるように、このチーム(FCR2001デュイスブルク)で頑張りたいと思います。

ところで、安藤選手は男子サッカー部に入って練習していたことがあるそうですね。女子サッカー部では物足りなかったのでしょうか?

物足りないっていうより、もっと上手くなりたいっていう気持ちが強かったんです。幼稚園、小学校の頃は男子サッカー部しかなかったので、そこで練習していたんですけど、中学校に上がるときに、どちらかを選ぶことになって、そこであえてチャレンジできる、レベルの高い方を選んだという感じです。女子の中だったら自分がトップでやれるチームだったけど、男子の中に入ったら付いていくのが精一杯だった。その中で自分を磨きたいと思って選びました。

中学生というと、ちょうど男子との力の差を感じ始める年頃ですよね。

そうですね。小学生の頃は自分の方が大きかったのに、中学生になったら体格も体力も男子はどんどん強くなっていく。とくに走りこみの練習とかは付いていくのがすごく大変でした。

そのギャップを経験しているから、ドイツ人との違いや差もショックではない?

やっぱりドイツ人選手のフィジカル(身体的な)面の強さにはびっくりしました。でも、中学校のときに男子の中でサッカーをしていたというのは、自分の強みだと思います。

ボールを操る安藤選手
およそ四半世紀にわたって付き合ってきたサッカーボール、自在に操る姿は「さすが!」。

安藤選手にとっての、憧れのサッカー選手はいますか?

たくさんいます!中でもメッシ(FCバルセロナ、アルゼンチン代表)、カカ(レアル・マドリード、ブラジル代表)は特別です。

サッカー選手を目指す少女たちの中には、安藤選手を目標にしているという子どもたちもいるでしょう。サッカー少女たちに向けて、アドバイスはありますか?

夢を持ってチャレンジし続けてほしいと思います。サッカーをやっている中で、上手くいくときも、いかないときもあると思うけど、諦めないでやり続ける気持ちがあれば、成長できると思うので、頑張ってほしいと思います。

ドイツニュースダイジェストの読者の皆さんにひと言お願い します。

デュイスブルクというチームは、まだそんなに知られていないかもしれないけど、昨年ヨーロッパで1位になったチーム です。素晴らしい選手がたくさんいて、本当に良いチームなので、皆さんにぜひ試合を見に来てもらいたいです。日本人代表としてドイツで活躍できるよう頑張るので、応援してください!

安藤選手、ありがとうございました!!サッカー選手としてはベテランの域に入る27歳。練習中の真剣な眼差し、休憩中に溢れる笑顔、そして、気負うことなく自分のすべきこと、目指すものを見据えて挑戦し続ける強さに、心揺さぶられました。今シーズンも山場を迎え、ますます目が離せないFCR2001デュイスブルクと安藤選手を、ぜひとも応援しに行きましょう!!

分析! FCR 2001 デュイスブルク

正式名称 Fußballclub Rumeln 2001 Duisburg e.V.
所属 ドイツ女子ブンデスリーガ1部
創立 2001年6月8日(FCR Duisburg 1955 か ら女子サッカー部が独立し、FC Rumeln- Kaldenhausenと合併してプロ女子サッカークラブを設立)
クラブカラー ホワイト/ グリーン
監督 Martina Voss監督(1984 ~ 2000年にドイツ代表として活躍。2008年から同クラブの監督を務める)
成績 • UEFA Women's Cup優勝:2009年
• ブンデスリーガ優勝:2000年
• ブンデスリーガ準優勝:1997年、1999年、2005年、2006年、2007年、2008年
• DFB ポカール優勝:1998年、2009年
* FC Rumeln-Kaldenhausen、FCR Duisburg1955含む
ホームスタジアム PCC Stadion
Rheindeichstraße 50, 47198 Duisburg-Homberg
練習場 Mündelheimer Straße 123/125, 47259 Duisburg

・女子ブンデスリーガ 順位表

※第20節終了後(2010年4月25日)

チーム名



得失
点差

1.
1. FFC Turbine Potsdam
16
2
1
+60
50
2.
FCR 2001 Duisburg
14
3
2
+47
45
3.
1. FFC Frankfurt
15
0
5
+38
45
4.
FC Bayern München
11
3
6
+5
36
5.
VfL Wolfsburg
10
4
5
+16
34
6.
SC 07 Bad Neuenahr
10
2
8
+4
32
7.
Hamburger SV
8
4
8
-15
28
8.
FF USV Jena
6
3
11
-21
21
9.
SG Essen-Schönebeck
3
6
11
-32
15
10.
1. FC Saarbrücken
3
4
13
-28
13
11.
SC Freiburg
4
0
16
-34
12
12.
Tennis Borussia Berlin
1
3
15
-40
6

※第20節終了後
※上位2チームがUEFAチャンピオンズリーグに出場、下位2チームが2部に降格

・今シーズンの今後の試合日程

ブンデスリーガ・第21節 5月2日(日)14:00 ~
FCR 2001 Duisburg - SC Freiburg
場所:PCC Stadion in Duisburg

ブンデスリーガ・最終節 5月9日(日)14:00 ~
FC Bayern München - FCR 2001 Duisburg
場所:Sportpark Aschheim

DFB ポカール・決勝 5月15日(土)16:00 ~
FCR 2001 Duisburg - FF USV Jena
場所:RheinEnergieStadion in Köln

・安藤選手の動向を日本語で

ウェブサイト「FCR2001Duisburg へようこそ」
http://fcrando.blog107.fc2.com/

試合の様子、安藤選手が執筆する日記から現地での報道まで、デュイスブルクでの安藤選手の情報をいち早く日本語で入手できる。スタジアムと練習場へのアクセスの詳細もわかりやすく記載されている。(運営:安藤梢地元後援会)

 
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