7月17日、開催国ドイツを破った準決勝の後から続く興奮と、膨れ上がる期待を胸に、デュッセルドルフからICEでフランクフルトへ。
ところが車内も、フランクフルト中央駅の中も、W杯決勝当日とは思えないほど普段と変わらない風景・・・・・・と、一瞬いらぬ心配をした。駅を出てマイン川沿いのパブリックビューイングはすでにお祭り騒ぎ。スタジアムを目指す道中は星条旗と日本の国旗で溢れ、決戦の日の高揚感が街に充満していた。
いよいよ到着した現場は、緊張感と温かいムードに包まれていた。日米のサポーターが笑顔で記念写真を撮り、ドイツ人サポーターが手作りの日独友好Tシャツを着て駆けつける。誰もが、数時間後の勝利を願い、そして決勝の舞台に立つ自国を誇りに思っていた。
ふと、場内アナウンスが入る。ドイツ語、英語と続いて、日本語担当の若い日本人の男性の声が入場についての注意事項を読み上げる。
「・・・・・・以上です。絶対勝ちましょう!!」 この、職権乱用ぎりぎりの叫びに、日本人サポーターのボルテージは一気に上がった。
そして8:45、キックオフ。その後の90分+30分、PK戦という試合内容の解説は、スポーツ記者に任せたい。現地で観戦したサポーターが目にしたもの、感じたものは、間違いなく「延長2-2、PK戦3-1」という結果では語りつくせない。
USAサポーターが9割を占めていただろう満員のスタジアム。世界ランキング1位の米国が勝つだろうとされた下馬評。圧倒的にボールとゲームを支配されていた決勝戦。その中で勝機を見出し、勝負を諦めず、勝利を掴み取ったなでしこジャパン。
試合後、勝利の喜びを噛み締めながらも彼女たちが手にしたものは、日本の国旗より先に震災後の日本を支援してくれた世界へ向けてのメッセージを綴った横断幕『To Our Friends Around the World, Thank You for Your Support』。優勝セレモニーの後に、サポーター席に駆け寄る選手たちの第一声もやはり「ありがとう!」だった。
その言葉は、私たちサポーターがなでしこジャパンに伝えたいのに。
「日本に自信と誇りを取り戻すチャンスをくれて、ありがとう」。
スタジアムを背にした帰り道、紙に描いた日の丸を安全ピンで留めるというお手軽なスタイルで日本を応援してくれたドイツ人ご一行が、嬉しいことを言ってくれた。
「私たちは日本に負けたけど、今日の日本の勝利はドイツが負けた甲斐があったというものよ」「壮絶な決勝戦が、フェアプレーで幕を閉じたことに感動したよ」
そして、「W杯優勝記録をアメリカに抜かれるのもしゃくだしね」これが本音かもしれない。