ジャパンダイジェスト

ドイツでガーデニングライフを楽しむ

休日に散歩していて、汗だくになって土を掘り起こしたり、はさみを片手に植物の手入れに、いそいそと励むドイツ人の姿を目にすることはありませんか。英国人のイングリッシュガーデンのようには知られていませんが、ドイツ人も何たってガーデニングが大好き。初夏の陽射しに誘われて、ドイツであなたもガーデニングデビューしてみませんか。今回は花より団子派に捧げます。(編集部)

1. クラインガルテンに挑戦

日本であれドイツであれ、庭付きの一戸建てに住む、なんていうのは誰にとっても憧れの的だろう。だがそうはいっても現実には一戸建てなんて夢のまた夢、ましてや大都市に住んでいると庭なんて...。でも大丈夫、何たってドイツはクラインガルテン(市民農園)の発祥の地。街中に住んでいようが、小さいながらも自分だけの緑のオアシスが持てるのだ。

クラインガルテンの歴史

イラストクラインガルテンはシュレーバーガルテン(Schrebergarten)とも呼ばれる。全国各地に協会(約1万5200団体)があり、その協会が会のメンバーに区画を貸し出すという方式になっている。クラインガルテンの歴史は古く、そもそもは19世紀初頭、貧しい人々に土地を貸し出して栄養源となる野菜や果樹を植えたのが始まりだ。その後、その運動のイニシアチブをとったシュレーバー氏の名前をとったシュレーバー協会が作られ、ライプツィヒに最初のクラインガル テンが生まれた。工業化が進む中、労働者にとっては郊外に住み、緑に触れ、花に囲まれた暮らしは夢の1つだった。そしてその後、とりわけ第2次大戦後の食糧難を解消するため、クラインガルテンが全国的に広がり、現在、ドイツでは計4万6640ヘクタールがクラインガルテンとして利用され、400万人以上が余暇に庭仕事を楽しんでいる。

どうやったら借りられる?

一番よくあるパターンが友人からの口コミ情報、あるいは親から譲ってもらうという人脈もの。もしコネがない場合は、新聞広告の不動産欄やインターネットで物件をチェックしたり、自宅近くの協会の連絡先を探してみよう。人気のある協会だと、順番待ちリストに登録されることになる。もしどうしても連絡先が分からない場合は、ウェブサイトのwww.kleingartenvereine.deにアクセスすれば、連絡先が閲覧できる。さらにもっと積極的に探したい場合は、同サイトの「探しています」に募集広告を載せてみるのも手だ。

いくらくらい費用はかかるの?

立地、面積によってコストは様々。ある協会では平米当たりの賃料が0.28ユーロ。会費や保険料なども含め、年間約250ユーロくらいが平均的だ。これに植栽費用、ガーデニング用具の購入費などが必要になってくる。

気をつけるべき点は?

それぞれの協会ごとに定款があるのでそれをよく読むべし。基本的には、(1)ガルテンをきちんと管理すること(2)騒音を出さぬよう静かにすること(3)コミュニティへの奉仕活動(年間約8時間)-が義務付けられている。自分の志向と一致しているか、確認してから申し込もう。何を植えるべし、あるいは何を植えざるべし(例えば針葉樹、ビャクシンなど)というのが逐一決められている所もあり、自分に合ったクラインガルテンを選ぶよう留意すべきだろう。

それでもやめられないクラインガルテンの魅力

土地を借りて自由に好きな作物を作りたい、と思っている人には少し窮屈な面もあるかもしれない。だが、自然と親しみ、日々のストレスを忘れ、同じ土地で庭仕事の労苦を他の人と分かち合うことで、新たな友人の輪が広がるかもしれない。それに何より、自分で汗を流し、手塩に掛けて作った野菜の成長を見守り、食卓で口にする喜びは何ものにも替え難い。

一口メモお庭の恋人?いえ小人、ガルテンツヴェルク
ドイツ文化の代表とも、悪趣味の代表ともいわれる庭の置物Gartenzwerg。従来の無毒スタイルをかなぐり捨てた、新しいスタイルのGartenzwergの登場によってリバイバルを果たした。

2. ガーデニングの達人に聞く

ガーデンの達人
上)菜園の前に立つ
Stuckenschmidtさん
中) 花と野菜が同居する
花壇
下)植えられるのを
待つばかりの幼苗
キューニクスウィンター(Königswinter)にある小さな村Rostingenの古農家Rostinger Hofに1975年より居を構える陶芸家のYoshie・Stuckenschmidt-Haraさん。約5000㎡の庭の中には池のある日本風庭園の一角あり、果樹園あり(リンゴやセイヨウスグリを初め、日本でおなじみの長十郎梨や梅も)、そして何よりも目を引くのは日本の野菜がスクスクと育つ菜園だ。

採種も自らが行い、タネから育てた野菜はカボチャ、トマト、ナス、ゴボウ、下仁田ネギ、春菊、(日本の)キュウリ、水菜、壬生菜、ミョウガ、シソ、枝豆などなど、郷愁をそそられる顔ぶればかり。(小豆も蒔いて、収穫まであと一歩のところだったのがサヤだけを残して何者かに食べられてしまったそう)。知り合いからもどんどん集まってくる野菜の種や苗を全て無農薬、コンポストを利用した有機栽培で大きくしている。

水はけのよい南斜面という地の利が幸いしてか、大抵の日本の野菜が作れるそうだが、これまでの経験で唯一うまくいかなかったのが大根。「何度作っても黒い線が入った」のだそうだ。それにしてもどうやってこれだけの野菜をうまく作れるのか?そのコツを聞いたところ、それぞれの特性に合わせてマルチをしいて雑草の生えるのを防いだり、 土の水分の蒸散を防いだり、連作をさせない、しっかりと苗作りをするといったいくつかの回答が返ってきたが、究極の決め手は「適度に水をやって、適度に肥料をやって、あまり愛情をかけすぎないこと」(Stuckenschmidtさん)にありそうだ。

子育て同様、成長を注意深く見守りつつ、甘やかさないことが大きな実につながるのだろう。

3. ベランダ菜園で手軽においしく

家で手軽に土に親しみたいならばベランダでだって立派に野菜が作れる。ただし、ベランダのある方角を事前にチェックするのをお忘れなく。野菜によっては日照時間が短いと実がならないものもあるからだ。また病虫害に強い品種を選ぶのも、収穫まで持っていくことができるかの重要なポイントだ。プランターで栽培するときに気をつけてやらなければならないのは限られた面積に植えられているので、肥料や水切れには気をつけよう。また植えるときにも十分間隔をとってやることが大切だ。

トマト

何と言ってもトマトの成長には日光が欠かせないので、ベランダは南向きがベター。葉に水がかかると病気にかかる原因となるので、雨よけには気をつけたい。また背が伸びるタイプではなく、こんもりと茂るベ ランダトマトを購入すると育てやすいだろう。

ピーマン

トマトとくればキュウリと答えたくなるのが日本人。だがご存知のようにドイツのキュウリはビックサイズのヘビキュウリ(Schlangengurke)あるいはピクルス用のミニキュウリしかない。そこでもっとポピュラーなピーマンに挑戦してみてはどうだろうか。場所をとらないが、肥料と水を十分与えるのを忘れないように。

ハーブ

ちょっとした料理のアクセントに欲しくなるのがハーブ各種。すっかりおなじみのバジルやミントはもちろん、日本ではあまり見かけない葉の広がったタイプのパセリや調味料マギーの原料にも使われるレビスチム(通称Maggiekraut)も試してみたい。これらハーブは切った後もどんどん伸びてくる。バジルの場合は花(種子)ができないよう、まめに摘み取るのが長く楽しむ秘訣だ。

サラダ

夏はサラダのシャキシャキ感がうれしい。ベランダ菜園にお薦めしたいのが摘みサラダ(Pflücksalat)。次から次へと収穫できるのでお得感がある。

一口メモ 農夫の法則(Bauern Regel)
気象予報技術が発達した今でも、昔からの経験則に基づいた言い伝えほど、あてになるものはない。例えば、 Mai kühl und nass füllt dem Bauer Scheune und Fass. (5月が涼しく雨が多ければ、実りは多く安心していられる)など一聴の価値がある。

4. ガーデニング用語

Laube f. 庭小屋
Gießkanne f. じょうろ
Schlauch m. ホース
Erde f.
Dünger m. 肥料
Saat f. 種子
Jungpflanzen f. 幼苗
Balkonkasten m. プランター
Topf m.
Beet n. 花壇
Gemüse n. 野菜
Kräuter f. ハーブ
Pflanzenschutzmittel n. 農薬(chem.- biolog.-)
Insekten f.
Ernte f. 収穫

5. オープンガーデンデーでよそのお庭を拝見

ブンデスガルテンシャウ

2年に1回の頻度で開かれるブンデスガルテンシャウ(Bundesgartenschau)。国レベルで開かれる庭関連の最大のイベントで、最新の庭のトレンドを知ることができるだけでなく、昔ながらの貴族のキッチンガーデンが再現されていたりと、庭に関する全てを知ることができる。今年は4月から10月までの間、チューリンゲン州のGeraとRonneburgで開かれている。詳しくはwww.buga2007.deでチェックを。

オープンガーデンデー

個人の庭をのぞいてみたいという人は各地で時期を異にして開かれるオープンガーデンデーに参加してみてはどうだろうか。「植物の美と不思議を他の人と分かち合う」とい うことを趣旨として1927年に英国で始まったプライベートガーテンの公開行事が、1989年からドイツでもハノーファーを皮切りにスタートしたのが全国に広がっていった。日程やどのガーデンが公開されているかは、www.dggl.orgを参照のこと。

一口メモ ガーデニング雑誌&TV
農薬や化学肥料を使わないBio商品が有名なドイツだけに、雑誌も自然志向を目指す人向けのKraut&Rüben、NatürlichGärtnernといった雑誌が人気。またFloraやMein schöner Gartenなどは眺めているだけでも楽しくなる一冊だ。なおテレビ好きには毎日18時からバイエルン放送で流れるQuerbeetをお薦めしたい。バイエルン訛りのナレーションと色鮮やかな植物の面々がのどかなひと時を約束してくれる。

編集後記
土と触れ合う機会があるという人はどれくらいいるでしょうか。環境問題や食の安全が叫ばれる時代の中で、ガーデニングは自然と親しむことの少なくなった都会人に自らの暮らしを見直すきっかけも与えてくれるかもしれませ ん。今回訪問させていただいたStuckenschmidtさんのお宅では健やかな庭を見せていただき、気持ちが晴れやかになりました。本当にありがとうございました。

参考文献 www.umwelt.jp

 
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