2010年夏、南アフリカの地で日本のサッカーを世界に見せ付けた男、本田圭佑。サッカー少年ならずとも、この孤高の夢追い人の姿に憧れを抱かずにはいられない。今の本田選手を作り上げた「夢」の存在と、そこに至るまでの気持ちを子どもたちに伝えるため、12月4日デュッセルドルフでイベントが開催された。午前中にサッカー教室、午後から夢ミーティングという2部構成で行われた「Honda Notice」。夢いっぱいの会場の様子をお届けする。
(編集部:高橋 萌)
1986年6月13日生まれ。大阪府摂津市出身。 | |
身長 / 体重 | 182cm / 74kg |
経歴 | 摂津FC→ガンバ大阪JY →星稜高校(石川)→名古屋グランパスエイト →VVVフェンロ(オランダ) |
現所属 | CSKA モスクワ(ロシア) |
ポジション | MF / FW |
利き足 | 左足 |
ウェブ | www.keisuke-honda.com |
「今日の日を、楽しみにしていました。皆さんに負けないように、僕も全力でやるんで、1つでも多くのことを僕から盗んでいってください。楽しんでいきましょう!!」大きな声で子どもたちに呼び掛けた本田選手の講師としての第一声。子どもたちは、今年のW杯のヒーローを目の前に緊張の面持ち。だが、その赤く染まった頬からはやっぱり興奮と喜びを隠しきれない。
ゲームに見立てた練習の中で、ディフェンスやオフェンス、シュートの練習が行われる。練習の中で、本田選手が何度も声に出していた言葉がある。
「何のために、何を目的に練習しているのか考えて!」
その意識を持って練習するだけで練習の質は数倍上がるから、と。練習の狙いは1つではない。やらされるのではなく、自分で弱点の克服や長所を伸ばすために練習の中にテーマを見付けることが大切。
「声を掛け合っていこう!!」
「自分のことだけ考えないで!」との言葉もあった。チームメイトとの連携が個人技に勝るのは、11人で広いピッチを縦横無尽に駆け回るサッカーの醍醐味でもある。コミュニケーションなしにサッカーはできないと強調する。
「考えろ!もっと考えろ!!」
無意味な突破に賭ける前に、より確実な攻め方を模索する。勝利への熱い執念と確実な勝利のための冷静な判断力、その双方を持ち合わせてこそプロだと教える。
子どもたちは最初、ゲーム感覚の練習を楽しんでいたが、徐々にその表情を集中したものに変えていった。本田選手も、練習の中でボールを奪われたら本気で悔しがり、ナイスプレーには最大の賞賛を惜しまない。子どもたちの本気を引き出す、子どもたち以上に本気な本田選手との2時間の練習は、あっという間だったに違いない。
夢を持つことの大切さを子どもたちに直接伝えたい。この思いが、サッカー教室開催の最大の動機だという。夢について、真正面から語り合う夢ミーティングは、子どもたちからの質問に答える形式で進んでいった。素朴なものから、深い悩みまで、どんな質問にも率直に答えた本田選手の返答の一部を紹介する。
小学生のとき、プロのサッカー選手になれると思っていましたか?
思っていましたよ。小学6年生のとき、おれは間違いなくプロになるなって思っていました。自信があったんです。これは、理由のない自信。大人になったら自信を持つには理由が必要だけど、子どものときは、「無理だよ」って否定されても、「今に見てろよ!」と奮起していました。
インターナショナルスクールに通っています。この経験は将来、世界で活躍するのに役立ちますか?
日本を出てサッカーをやるとき、日本語が通じない中でどうコミュニケーションをとるか、どう相手を笑わせるか、気の合うヤツを見付けて仲間になれるかどうかが大切になってきます。コミュニケーション能力を向上させたら、きっと世界で活躍する人になれるはず!
試合のとき、どんな意識で臨んでいますか?
勝つぞ!という気持ち。そしてどういうプレーをするかをイメージします。負けたときは切り替えるのが一番。上手くいかないときほど前向きに。そして、どうやったら試合に勝てるか。そこから「逆算」して、今何をすべきかということを考えています。
今まで何回くらいゴールを決めましたか?
プロになってからは40ちょっとかな?その内、オランダで20点くらい。オランダに移籍してから半年ほど経った時期、2部に降格したんです。これは、自分にとってものすごい衝撃で、深く傷付きました。今でこそ、こんな風に言えるんだけど、子どもの頃から世界を目指すという目標がある中で、2部でプレーするっていうのはプランになかった。でも、ここでどう成長したら良いんだろう?自分を変えていかなきゃ!と、上だけを目指してやってきました。その中でシュートに対する意識も変わってきました。上手くいかないときはチャンスです。そこでどう頑張るかが問題。
本田選手の今の夢は?
「レアル・マドリッドでプレーしたい」「W杯で優勝したい」。これは、子どもの頃から変わっていませんし、夢を遠いものだとも感じていませんでした。それを目指して進むのみです。僕は、夢を叶えるために、まず行動ではなく、まず洗脳。思い込み。強く願うと自然に体がついてくると考えています。だから逆に、1年先のことを想定していないと、明日のエネルギーが湧いてこない。1年、3年、10年後の自分の目標を設定して、明日の過ごし方を決める、そうやって過ごしてきました。夢を持つと、人生はより楽しくなる。今日の楽しみより、1年後の成長の喜びを感じたいって思える。僕はこれに病み付きです。
自分の夢が叶わないんじゃないかと不安になります。
僕も、不安になることがあります。でも、あきらめない。絶対。自分の弱い気持ちが一番の敵です。
自分の夢は、よく変わります。良いのでしょうか?
悪いことじゃない。自分の欲求に素直に従ってください。そうじゃないと夢は叶えられません。夢を追うことは、そんなに甘いものじゃない。自分の好きなことに熱中して欲しい!
努力だけじゃ夢は叶わないと思います。夢を叶えるために必要なものは何だと思いますか?
僕は、才能というものを信じていません。サッカーに向いているとか、向いていないとか、そういうことも考えたことがありません。自分の才能を疑う前に、自分の気持ちが足りなかったんじゃないかと、そういう風に思います。夢に向かっている途中で、「自分には才能がないから・・・・・・」と考える必要はなく、強く願い、そのためにすべきことを考え、行動することが大切だと思います。
子どもたちに、再度「夢は願えば叶う」と強調した本田選手。その言葉に嘘がないから、世界で活躍する今の本田選手がいる。ドイツだけでなく、オランダやベルギー、英国から集まった子どもたちは、みんなそれぞれに夢を持っていた。明日から、その夢に向かって新しい一歩を踏み出すんじゃないだろうか。そんな明るい予感とともに、夢ミーティングは幕を閉じた。
企画:Honda Estilo(株)