今、自転車が熱い。景気の低迷に伴ってぎゅーっと引き締められた財布が生んだ国内旅行特需、その中でも特に人気急上昇中なのが自転車旅行だ。歩くより早く、電車よりゆっくりと、鳥のさえずりも花の香りも、すれ違う人との交流も、すべてを贅沢に味わえるサイクリングのひととき。五感で感じる自転車生活を春の幕開けとともに始めよう。今までとは違うドイツが見えてくるかも。
(編集部:高橋 萌)
晴れの日ともなると、条件反射のように外へ飛び出すドイツ人。ヘルメットを被って颯爽と道行く人たちを追い越すサイクリストも驚くほど多い。自転車選びの基準はその用途。使用目的別にオススメの自転車をご紹介。
街中をスーイスイ
通勤&近場でサイクリング
毎日の通勤やショッピングなどの近距離走行が主な用途。気軽に自転車に親しみたいというあなたには、小回りが利いて、スピードも出過ぎない、安定性とデザイン重視の自転車がオススメ。いわゆるママチャリタイプの街乗り自転車が得意なブランドは、KettlerやCampusなど。
BERGAMONT
(Summerville N7 26")
ちょっとレトロなデザインが、石畳の続く旧市街での走行時に気分を盛り上げてくれそう。 www.bergamont.de
Riese + Müller
(Birdy) スタイリッシュな都会派には、折りたたみ式の自転車はいかが? 近くに駐輪場がない、オフィスビル勤務のビジネスマンにもオススメ。
www.r-m.de
長距離移動にチャレンジ
本格スポーティ・サイクリング
自転車旅行を存分に満喫したいあなたには、スピード重視で長距離走行にも耐え得るスポーティな1台がオススメ。自転車専用道をメインに郊外を走るならロードバイク。アルプスの山など、自然の中を駆け抜けたいなら、でこぼこ道にも強いマウンテンバイクを選ぼう。ScottやCucumaなど上質な専門メーカーが多数。
Stevens
(MTB / 8S)
ロードレース用のバイクも手掛けるハンブルクのブランド。シャープで隙のないデザインと確かな品質に定評がある。 www.stevensbikes.de
体力に自信がなくても大丈夫
電気自転車でラクチン走行
エコな乗り物の代表格として君臨する自転車にも電気化の波が押し寄せている。ちょっと前まで電気自転車はお年寄りの乗り物……という感じだったが、電池の小型化&軽量化が進んだことで、ぐっとオシャレに。電気の力を借りて、体力に自信がなくても、急勾配の坂道でも、笑顔でサイクリング。
WINORA
(town exp S)
電気自転車(e-Bike)に力を入れているWINORAは、デザイン性にこだわりを持つ。
www.winora.de
プラスアルファの価値を求めて
こだわりの自転車
Toxy(ZR)
ソファに寝そべるようにして漕ぐLiegeradは、快適な上に、かなりのスピードが出る。自転車の進化形。 www.toxy.de
Stevens
(MTB / TWIN POWER) 2人で力を合わせて1台の自転車を走らせるTandem。
www.stevensbikes.de
Hawk Classic Bike Duncon
クラシックなデザインが得意なベルリンのHawkclassicのコレクションは必見。 www.hawkclassic.com
BELLA CIAO
イタリアのマエストロが生み出す優雅な曲線。ムダを徹底的にそぎ落としたデザインはどこかノスタルジック。 www.bellaciao.de
予算はいかほど?
専門店では、安いもので300ユーロ、マウンテンバイクなどは1000ユーロ前後から天井知らず。もちろん、メンテナンス次第で何年も乗れる品質が保証されるが、もっと安く、気軽に自転車を手に入れたいという人は、フリーマケットやネットオークションで中古品を狙おう。
お気に入りの自転車を手に入れたら、後は外に飛び出すだけ!
でもその前に、日本とは違うドイツの交通ルールをしっかりおさらいしましょう。自分と他人の安全を第一に、楽しい自転車生活の始まりです。
自転車は歩道と車道のどちらを走るべき?
車道です。自転車は自動車と同じ「車」。日本と同じ感覚で「歩道」を自転車で走ると罰金15~30ユーロ。歩行者用の横断歩道も、自転車から降りて渡らなければなりません。
自転車専用道路が始まる標識。この標識がある場合は、車道から速やかに専用道路に入る。
自転車も右側通行?
はい。自動車と同じで、右側通行が原則です。これに違反すると15~30ユーロの罰金が課されます。例外は、自転車専用道路で両方向の走行が認められている場合です。
手信号はいつ出せば良いの?
自動車と同じように、車道を走行している自転車ですが、自転車にはウィンカーが付いていないので、手信号がその役割を果たします。後方や前方に車が待機している場合は、進行方向の手を真っ直ぐに伸ばして、はっきりとサインを出しましょう。
右折したいときは右手を、左折するときは左手を横に出す。
ヘルメットは絶対に着用しなくてはいけない?
ヘルメットの着用は義務ではありません。そのため、着用していなくても罰金も何もなし。それでも、スピードが出るロードバイクや不安定な道を走るマウンテンバイクでの走行の際などは、ヘルメットの着用が推奨されます。自動車と同じ道を走るということもあり、万全の備えがあるに越したことはありません。
頭のサイズに合ったヘルメットを準備する
ライトは、前にだけ付いていれば良い?
後ろのライトも必要です。ライトの不備や故障は10~25ユーロの罰金の対象。そのほか、ブレーキやベルなども故障したまま乗っていると10ユーロの罰金です。自転車のメンテナンスは定期的に。
ドイツには街灯のない暗い道も多い。しっかりライトを整備して出掛ける
自転車はどこに停めても問題ない?
駐輪スタンドや駐輪場が街中のいたるところにあるので、そこに停めるようにしましょう。これは、公共の安全のためであると同時に、防犯のため。固定された駐輪スタンドにしっかりチェーンなどでロックして、盗難を予防します。
自転車に乗りながら携帯電話を使用しても良い?
だめです。罰金25ユーロを覚悟してください。ただし、イヤフォンやマイクを使用し、両手がふさがらない状態であれば、認められています。
友達と2人で横並びに走行しても良い?
良いでしょう。周囲に危険を及ぼさなければ、問題ありません。ただし、横並び走行時にほかの歩行者や自転車に迷惑を掛けたり、ケガをさせる事態になると、15~25ユーロの罰金が課されます。
運転技術に自信があれば、ハンドルから手を離しても良いよね?
だめです。いくら腕に自信があっても、常に安全を期していなければならないという観点から、この行為は5ユーロの罰金対象となっています。
信号無視に対する罰金が高額って本当?
赤信号を無視すると45~120ユーロの罰金、すでに1秒以上前から赤信号に変わっていたにもかかわらず、それを無視すると100~180ユーロ以上の罰金が課されます。
自転車の罰則に点数のペナルティはない?
あります。自転車に免許証は必要ありませんが、もしも自転車の交通違反で40ユーロ以上の罰金が課された場合は、自動車の免許に累計される加点制度で1点のペナルティが追加で発生します。
自転車の教習所がある?
ドイツでの運転にいまいち自信が持てないなら、「自転車教習所(Fahrradschule)」での練習がオススメ。ここでは、交通ルールの勉強から練習場での実技まで、自転車を安全に運転するためのノウハウを教えてくれる。この自転車教習所については、各都市のADFC(ドイツ自転車協会)に問い合わせを。ちなみに、ブレーキ操作に難を感じる人が多いよう。ドイツでは、手動のブレーキではなく、ペダルを後ろに漕ぐとブレーキが利くタイプが多い。練習あるのみ。
ヘルメット
いざというときに、頭を守るヘルメット。一見、普通の帽子のようなデザインも。www.yakkay.com
かばん
自転車旅行のお共には、防水に優れた丈夫なカバンを。ORTLIEBは自転車用バッグの老舗。 www.ortlieb.de
鍵&チェーン
盗難予防のため、支柱や自転車スタンドにしっかり固定できるチェーンタイプの鍵で完全ロック。http://abus.de
子どもと一緒に
自転車の後ろに子ども用の小さなワゴン(Fahrradanhänger)を連結し、いつでも一緒にサイクリング。 www.croozer.de
GPS機能付きナビゲーター
これさえあれば、方向音痴な人でも大丈夫。自転車旅行に必ず携行したい1品。www.garmin.com
グローブ
自転車をコントロールする手。防寒に滑り止めに、1枚は常備しよう。www.giro.com
バスケット
街乗りなら、自転車からの取り外しが簡単にできるバスケット型が便利。www.reisenthel.com
サドルカバー
雨でサドルを濡らさないように。自分の自転車をすぐに見付けられるように。 www.tiloahmels.ch
国内には約150カ所、総距離5万キロ以上のサイクリングロードがある。平地が多いドイツの地形が、サイクリストに快適なコースを生み出した。ルートマップなどの詳細は各ウェブサイトをご参照あれ。
国内の人気サイクリングロード TOP10
(2010年、ドイツ自転車協会調べ)
エルベ川サイクリングロード
エルベ川沿い860キロにわたるこのサイクリングロードは、国内のサイクリングロードの中で、ダントツの人気を誇る。「エルベのフィレンツェ」と呼ばれるドレスデンとその近郊の美しい街並みや山岳景勝地ザクセン・スイスの広大な自然など見どころ多数。
www.elberadweg.de
マイン川サイクリングロード
ぶどう畑が広がるマイン川沿いのサイクリングロードは全長600キロ。文化の街バイロイトから、金融の街フランクフルトを経て、癒しの街ヴィースバーデンへと続く。
www.mainradweg.com
アルトミュールタール・サイクリングロード
南フランケン地方にあるドイツ最大の自然公園の1つ、アルトミュールタール渓谷の景観を中心に、古城や教会などの歴史を感じさせる建築物が並ぶ190キロのサイクリングロード。
www.altmuehl-radweg.com
ヴェーザー川サイクリングロード
木組みの家や古城が次々に現れる、ドイツの魅力たっぷりのヴェーザー山地から北海までの道のり。 www.weserradweg.de
ラーンタールサイクリングロード
ドイツ木組みの家街道の一端であるラーン渓谷では、田園風景やロマンチックな街並みが楽しめる。 http://de-de.daslahntal.de
モーゼル川サイクリングロード
ワインの名産地モーゼルならではの牧歌的な風景が続き、トリアーではローマ遺跡にロマンを感じる。 www.mosel-radweg.de
ドナウ川サイクリングロード
黒い森から東へと延びるドナウ川沿いのサイクリングロード。パッサウからウィーンへ走るコースが人気。 www.donau-radweg.info
ライン川サイクリングロード
スイスからオランダへ、脈々と流れるライン川沿いに自転車道が続く。世界遺産である中流域がハイライト。 www.weserradweg.de
バルト海サイクリングロード
フレンスブルクからウセドム島に延びるおよそ1000キロの道のりでは、青い海と白い砂浜に誘われる。 www.ostsee-radweg.com
ボーデン湖サイクリングロード
アルプスの山々と、静かな森に囲まれた全長約400キロのサイクリングロードで自然を満喫。 www.bodensee-radweg.com
「Bett & Bike」と呼ばれる、ドイツ自転車協会によってサイクリング客に優しい宿として認められた宿泊施設は、自転車旅行の際の強い味方。屋根付きの自転車置き場があったり、メンテナンス用の工具がそろっていたりと、自転車旅行に必要な、自転車とサイクリングロードに関する設備と情報が完備されている。 www.bettundbike.de
ドイツでは、鉄道や地下鉄、バスなどの交通機関への自転車の持ち込みが認められている。自転車専用のスペースが限られていたり、持込料金が発生することがあるので、それぞれの交通機関で確認しよう。 www.bahn.de
料金の一部を紹介
・国内長距離列車(IC、EC、NZ、EN、D、CNL)9ユーロ
・国際長距離列車(ICEなど) 10ユーロ
・国際長距離列車(パリ行き、イタリア行きの夜行の一部)15ユーロ
・近距離列車(IRE、RE、RB、S-Bahnなど)4.50ユーロ
ドイチェバーン(DB)運営の
Call a Bike
www.callabike.de
電車から降りたら、すぐに街中をサイクリングしたい人にうってつけのDBの自転車レンタルシステム。
1 登録:公式サイト(www.callabike.de)の「Registrierung」からオンラインで、または07000-522-5522から電話で利用者登録を済ませる。初期登録費用は12ユーロで、そのうち、7.50ユーロは利用残高に回る(BahnCard所有者には割引あり)。その後、すぐに利用可。
2 レンタル:駅前などにあるステーションから自転車をレンタル。自転車のボディに記載されている番号に電話を掛け、開錠コード(Öffnungscode)を聞く。その後、SMSで番号の通達があるので、その場で番号をメモする必要はなく、ドイツ語が苦手な人も安心。開錠コードを入力し、ロックを外す。
3 返却:サイクリングを堪能したら、返却へ。地域によって返却方法が異なり、ベルリン、フランクフルト、カールスルーエ、ケルン、ミュンヘンは、指定地域内での乗り捨てが可能。その他の地域では、ステーションへの返却が必須となる。自転車をロックしたら、再びボディ記載の番号に電話を掛け、施錠ボックスに表示された会計コード(Quittungscode)と、ステーション番号(乗り捨ての場合は必要なし)を携帯電話で入力。
4 支払い:その後、登録時に指定した方法で支払い手続きが行われる。料金は通常、1分当たり0.08ユーロ、1日(24時間)で最高12ユーロ、1週間で最高60ユーロ。
※公式サイトの「So funktioniert's」をクリック。「So einfach geht's」というムービーを見れば、簡単に操作の手順がおさらいできる。
ドイツ全国で展開しているNext Bike
www.nextbike.de
街中を走る広告塔とばかりに、自転車のボディに広告が付いているが、そのおかげでレンタル料金は割安。利用方法は上記「Call a Bike」と似ている。
自転車レンタルショップのポータルサイト
www.rad-mieten.de
小さな街を旅行するなら、ドイツ全土をカバーするポータルサイトからレンタルショップを検索。
ビールを飲みながらサイクリング?
暖かい季節に頻繁に現れる移動式ビールバー、通称「ビアバイク」。公道上で堂々とビールをあおる陽気な集団の仲間入りをしたいなら、www.bierbike.deでお近くの地域を選択し、サイト内「Kontakt」の「Formular zur Mietanfrage」からレンタルの申し込みを。10~16人まで乗れるビアバイクの利用料金は地域によって異なるが、運転手込みで1時間約100ユーロ(飲み物は別料金)。
参考:ドイツ自転車協会 www.adfc.de