ドイツは、北海や地中海、バルト海など、各地から魚が集まる欧州の中心地。日本ではなかなか食べられないような魚との出会いもある。手に入る素材で、ドイツのレシピにチャレンジしても良し、和風に味付けても良し、魚の味わい方のバリエーションを広げてみよう。
(本文:ドイツニュースダイジェスト、取材・撮影協力:NIK THE GREEK www.nikolaou-feinkost.de)
サケ科の仲間
サケ Lachs
ドイツで一番人気の魚。市場はもちろん、この頃はスーパーマーケットでも手に入る食材。塩焼きにすれば、いつものご飯のお供に。サケとローズマリー1本を生ハムで巻いてフライパンで焼けば、香りを楽しめるおしゃれな一品の出来上がり。
ニジマス Regenbogenforelle
赤紫色の模様があり、身はサーモンピンク。骨は軟らかいが、小骨が多い。バターやオリーブオイルとの相性が良いので、焼く、ムニエル、グリル、薫製にしていただくことが多い。ドイツのマスにはトラウト(Lachsforelle、Meerforelle、Seeforelle)もおり、生息地によって名前が異なるが、調理方法はニジマスと同じ。ドイツの湖にすむマスの類にはマレナ(Maräne)という魚がいる。南ドイツでは同じ魚を「Felchen」または「Renke」と呼ぶ。
スズキ目の仲間
スズキ(シーバス)
Seebarsch
良質なたんぱく質として人気。手軽な調理方法は、アルミホイルを用意し、シーバスに生クリームを掛けて、半輪切りにしたタマネギと一緒に包んでオーブンへ入れて焼くだけ。
スズキ(ホタルジャコ)
Zander
エルベ川やヴェーザー川など北ドイツの川や湖に住んでいる淡水魚。皮を取らず、オリーブオイルにみじん切りのニンニクを一緒に焼くとカリカリでおいしい。
ヨーロッパ・マダイ
Meerbrasse / Dorade Rose
赤みがあるタイで、日本のマダイに似ている。マダイと同じ調理方法で和風に煮付けても、焦がさないようにオーブンで焼いてもOK。魚を取り扱っているレストランでは、多くの場合、メニューにフランス語「Dorade」と表記がある。食べ比べても楽しい。
ヨーロッパ・タイ
Goldbrasse / Dorade Royal
日本のヘダイに似ているタイ。地中海で獲れ、銀色のうろこに覆われている。ドイツでは塩を振り一匹丸ごとオーブンで焼くのが一般的。生クリームと白ワインを少し掛けて、フェンネルと一緒にオーブンで焼いてもまろやかな味になる。フィレはフライパンで焼くか、吸い物などにしても。
メカジキ
Schwertfisch
大きなくちばしを持つメカジキ。魚の切り身のジューシーさを維持するためにホイルに包んで、新鮮なハーブとレモンを掛けてオーブンで焼くとおいしい。
オオカミウオ
Bering-Seewolf
少し繊維質であるが、バターとの相性がよく、ソテーにするだけでおいしい白身魚。柑橘系(オレンジ、レモン)とも合うので、ソースなどに取り入れても美味。
タイセイヨウサバ
Makrele
季節に応じて脂肪含有量が変化するサバ。バターとニンニクで焼くのもお勧め。意外にもバター+味噌、または味噌+生クリームも合う。ドイツでは特に、薫製のサバが人気で、ジャガイモとバターで炒めて、生クリームベースのソースを掛けて召し上がれ!
カレイ目の仲間
カレイ
Scholle
日本ではない小さな赤みを帯びたドットが特徴的なカレイ。繊細な味と低脂肪な身が魅力的。5月になると北海で獲れ、若いカレイは5月に食べる「Mai scholl e」として人気がある。日本料理と同じ方法で料理することができる。カレイはハンブルク郊外の漁村の名前からとった「Finkenwerder」がハンブルクの有名料理になっている。ムニエルにしたカレイにベーコンやエビ、玉ねぎがたっぷり乗っている。
イシビラメ
Steinbutt
厚みがある身にうまみが凝縮しているイシビラメ。フライパンに入りきらないくらい大きいものもある。柔らかく、崩れやすい身を傷付けないように注意。フライにしても美味。
シタビラメ
Seezunge
きれいな楕円形になっているシタビラメは、高価な食用魚の一つ。非常にデリケートな香りが漂い、シンプルにバターで焼くと最高。ホワイトアスパラガスに掛けるオランデーズソースとの相性も良い。ヒラメでもいくつか種類があり「Heilbutt」(オヒョウ)は北方海洋産の大ヒラメで、蒸し煮やグリルに向いている。
ニシン目の仲間
ニシン
Hering
ニシンは、スモークやマリネ、また切り身をバターで炒めて食べることも。寄生虫病になる恐れがあるので、生で食べるときは一度冷凍したものを使った方が安全。脂肪が比較的多く含まれていて悪臭が発生しやすいので、すぐに調理するか、マリネなど保存性の高い状態にすることがポイント。マッチェス(Matj es)と呼ばれる若いニシンは、塩水に漬けて発酵させたもので6月からが旬。タマネギとパンがドイツ流だが、しょうゆで刺身風もお勧め。
イワシ
Sardine
ドイツでも割と安く手に入り、中性脂肪を下げるDHAを含む優れもの。そのまま揚げてフライにすれば、ツマミとしても最高。缶入りのイワシは骨も柔らかいので、小麦粉をはたいてフライパンで焼き、ネギをたっぷり掛けて丼ぶりに。臭みが気になるときはしょうゆとバルサミコ酢を混ぜて焼くとおいしい。
タラ目の仲間
タイセイヨウダラ
Kabeljau
大西洋や北海では「Kabeljau」、バルト海では「Dorsch」と呼ばれている。タラの肝臓のオイル漬け(Dorschleber)は缶詰で売られていて、ポン酢と大根おろしを添えて和風にも。
メルルーサ
Seehecht
タラ科ではないがタラ目の仲間で、フライパンでこんがり焼くのがベスト。トマトソースとも合い、トマトスープの具として入れてもOK。
スケトウダラ
Alaska-Seelachs
ドイツで最も売れている食用魚。名前に「Lachs(サケ)」の単語があるので誤解を招きやすいが、タラ科である。しっかりとした身はまろやかな味で、蒸し焼きにしても美味。子どもも大好きな棒状のフライ「Fischstäbchen」に使われていることも多い。
コダラ
Schellfisch
淡泊な味を生かしてフライや、グラタンにしてもおいしい。薫製になったコダラは欧州で人気。ジャガイモとの相性が良く、マッシュポテトやフライパンで焼いたものを付け合わせに。
そのほかの魚
ウナギ
Aal
ライ麦粉をまぶし、バターで焼くとサクサク&ジューシー感を楽しめる。アールズッペ(Aalsuppe)と呼ばれるウナギのスープはハンブルクの名物料理。コクのある味で、ウナギはぶつ切りにして骨を抜いてあり、長時間煮てあるため軟らかくてとろけるよう。アンズやリンゴなどの乾燥果実と共に煮込んである。
コイ
Karpfen
旬は秋から冬。基本的にはオーブンで1匹丸ごと焼いて、4~5人で頂く。大きいものは40~50cm、5kgもある。フライにして、サラダに乗せて頂くことも。やや臭みがあるが、香味料やハーブを使えばおいしく頂ける。カルプフェンブラオ(Karpfen blau)は伝統料理で、新鮮なコイをワイン、エシャロット、グローブ、ローリエ等の香辛料と一緒に煮る。特にクリスマスや大みそかに食卓を彩る調理。
タイセイヨウアカウオ
Rotbarsch
メバルの仲間。ドイツでは基本的にフィレのソテーに、クリームソースやレモンソースを掛けて食べる人気の魚。冷凍でもおいしい。しょうゆ、酒、みりん、砂糖で煮付けや蒸し焼き、フライにしても。付け合わせは、サツマイモやニンジンなどの根菜、ホウレンソウも合う。
ニシアンコウ
Seeteufel
主に北東大西洋と地中海で獲れる。新鮮なアンコウは、身がふっくらしていて、皮に艶がある。身の締まった白身は、バターで炒めたジャガイモやフェンネルと相性が良い。もちろん鍋や、唐揚げにしても楽しめる。
キュウリウオ
Sting
ドイツ北部で2月~4月が旬。新鮮なものはキュウリの匂いがするので、「キュウリ魚」と呼ばれ、春の訪れを感じさせる魚。ライ麦粉をはたいた魚をバターとベーコンと一緒に焼く。シシャモに似ている。
バサ
Pangasius
バサは主にベトナム、タイ、カンボジアに生息している魚で、ドイツでは冷凍売り場でよく見かける。衣を付けて焼き、クリームソースを掛けて食べられることが多い。
貝の仲間
ホタテガイ
Jakobsmuschel
マイルドで豊かな味と柔らかい肉が美食家をとりこにする貝。貝付きで買うなら貝を開いてしょうゆを垂らし、グリルに。冷凍されているものを使うときはザルに入れて冷蔵庫で一晩掛けてゆっくり解凍する。
ムール貝
Miesmuschel
ムール貝は調理する直前まで、生きたものでなければならないので要注意。鮮度の落ちた貝は、加熱しても開かない。呼吸をするために殻を少し開いているものもあるが、殻を叩くときゅっと殻を閉め始るのが生きている証拠。調理方法はワイン蒸しが一般的だが、良い出汁が出るのでおみそ汁の具にも。
アサリ
Venusmuschel
ドイツではスパゲッティと合わせてヴォンゴレにすることが多い。クラムチャウダー風にミルクベースのスープ、トマトベースのスープにも合う。おみそ汁、酒蒸しはもちろん、バターとしょうゆで炒めても。
カキ
Auster
欧州各地の海岸で収穫される。ドイツではレモン汁を掛けて生で食べることが多いので、鮮度は重要なポイント。殻がしっかり閉じていて、海の匂いがする新鮮なカキを選ぼう。旬は9月から2月までの「R」が付く月!カキだけではなく、ほとんどの貝にこの旬の季節が当てはまる。
マテガイ
Meerscheide
「Schwertmuschel」「Navajas」ともいう。20cmまで成長することがある細長い狭い殻を持つ。わずかに甘味があり、非常に繊細な味の貝。耐熱皿にオリーブオイルを振りかけてグリルする。
エビの仲間
手長エビ
Kaisergranat
高級食材として知られる。頭を付けたままで半分に切り、フライパンでオリーブオイルとガーリックで焼くとおしゃれで満足感たっぷり。そのまま素揚げにしてもカリカリでおいしい。エビは種類がたくさんあり、ドイツで見かける「Hummer」はロブスター、「Garnele」はクルマエビのこと。
小エビ
Krabben
北ドイツへ行ったら是非食べてみたいのがクラッベンと呼ばれる小エビ。クラッベ(Krabbe)とはカニのことだが、北ドイツで獲れる小エビのことをクラッベンと言う。塩ゆでしただけのものを付け合わせと食べるのが一般的だが、ぜいたくに魚のフライに掛けるソースに使ったり、スクランブルエッグに入れたりもする。クラッベンのクリームスープも絶品で、北ドイツ料理のお薦めナンバーワン。
ザリガニ
Flusskrebsfleisch
食用ザリガニで、むき身で売っている。しっかりした味があるので、そのままサラダにして食べても。生クリームとの相性もよく、パスタのソースに使うこともある。
イカ・タコ・ウニ
小イカ
Kleine Calamari / Tintenfisch
小イカは丸ごとオリーブオイルとニンニクで炒めると前菜にぴったり。小麦粉をはたいて焼くとカリカリ感を楽しめる。もちろん煮付けにしてもOK。リング状に切って衣を付け、揚げるイカリングも人気。
小タコ
Pulpo / Oktopus / Krake
小タコはオリーブオイルで炒めて、お好みでパプリカ粉を振る。加熱時間によって変わるタコの食感を楽しんで。じっくり煮込んで柔らかくしても、まだ違った食感を味わえる。
ウニ
Seeigel
普段はあまり頻繁に使われない素材だが、高級食材としてシーフードに掛けるソースに使われる。生ウニを生クリームと白ワインと一緒に混ぜたり、スパゲッティの具として使う。
海藻
ゼータン
Seetang
海藻(Alge)の中でも、ノリやワカメは日本語がそのまま使われていることが多い。海藻サラダとして出されることが多いのがゼータン。ごま油と酢、レモン汁などを掛けて前菜に。
コンブ
Kelp
新鮮なコンブを注文できる魚屋もあるが、多くは乾燥コンブ。日本のコンブは欧州のコンブに比べて甘さがあり、濃厚。コンブの心地よい塩味と魚介類はよく合う。
サムファイア
Meerfenchel
魚料理と一緒食べたいサムファイア。ゆでたり煮込んだりして、付け合わせに。単品ではさっと油で揚げて天ぷらにしてもおいしい。タマネギやエビとかき揚げにしても。
オオバアオサ
Meersalat
穏やかな甘い味を持っているアオサ。ホタテガイ等、貝類と合わせると海のレタスとして、さわやかで力強い味わいを楽しめる。