ドイツといえば、ビールにソーセージ、そしてじゃがいも!
たかが「いも」と侮ることなかれ。その多様性、歴史、
そしてドイツの食文化に深く根ざす底力!!
ドイツのじゃがいもをさまざまな角度から存分に味わいましょう。
(ドイツニュースダイジェスト編集部)
現在、ドイツには70以上もの国産のじゃがいも品種があり、これらは調理法によって主に3タイプに分けられている。ここでは調理法ごとにおすすめの品種をご紹介しよう。
じゃがいもの収穫時期
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早生種
Frühe Sorten 日本の「新じゃが」にあたる。5月中旬頃から収穫がスタート。鮮度が重要なので5月下旬~6月頃にかけて出回り、8月中旬頃まで店頭に並ぶのが一般的。 - 中早生種
Mittel frühe Sorten 8月中旬~10月初旬頃に収穫されるタイプ。ドイツでは最も多くの品種がこのタイプに分類されている。4~8週間程度の保存が可能。 -
晩生種
Späte Sorten 9月下旬~10月頃にかけて収穫されるタイプ。品種の数や収穫量は少ないが、長期保存が可能かつ、貯蔵期間中に味わいがさらに深まるのが特徴。
煮崩れしないタイプ
Festkochend
「フェストコッヘンデ・カルトッフェルン」は、茹でたり、炒めたり、あるいはオーブンで焼くなど、どんな調理方法でも形が崩れにくい。皮付きのまま調理した際、調理中に皮が開かないのも特徴。じゃがいもに含まれるデンプン量は平均14%と少なく、収穫時期が早い早生種に多いタイプ。ドイツではサラダに利用されることが多いため「ザラート・カルトッフェルン(サラダ用じゃがいも)」と呼ばれることも。ブラートカルトッフェルン(ジャーマン・ポテト)や、グラタン、ザルツカルトッフェルン(塩茹でじゃがいも)などの料理に使われることが多い。
アナベル
Annabelle
早生種。どんな環境や土壌でも栽培できる、万能な品種。8月上旬頃から成熟し、その後約3週間が食べ頃となる。ブラートカルトッフェルンのように炒めたり、オーブンで焼く料理に合う。
バンベルガー・クノーレ
Bamberger Knolle
ドイツ南部のバンベルクが発祥。クロワッサンのような長細い形の実が特徴的で、収穫量が多い。特にブラートカルトッフェルンに利用するのに向いている。
ベラーナ
Belana
早生種。貯蔵性に優れているため、翌年の春先までその味わいを楽しむことができる。しっかりとした味があり、カルトッフェルザラートに適している。
シレーナ
Cilena
ドイツ国内のじゃがいも収穫総量のうちの約1割を占める人気の高い品種。しっかりとした肉質、なめらかな粘りがあり、特にカルトッフェルザラートに最適。
アイヒェンホーファー・ゲルベ
Eichenhofer Gelbe
中早生種。紫色の木目模様が入った実で、ナッツのような香りとしっかりとした味わいが特徴。ヴィルデカルトッフェルン(肉厚なタイプのポメス)やブラートカルトッフェルンに合う。
ハンザ
Hansa
中早生種。非常に繊細な風味をもっている。食べた時に少しオイリーなテクスチャを感じられるのが特徴。ブラートカルトッフェルンやポメスなどに適している。
ニコラ・ノルトドイチュラント
Nicola Norddeutschland
中早生種。マイルドな味わいで、調理後しばらく時間が経ってからも風味が落ちないのが特徴。まろやかな粘りがあり、ザルツカルトッフェルンなど、シンプルな料理に合う。
セキュラ
Secura
中早生種。貯蔵性に優れている。素朴ながらもしっかりとした味わいがあり、オーブンで焼いたり、塩茹でするなどのシンプルな調理法でも美味しくいただける。
シシー
Sissi
2007年に認可された比較的新しい品種。早生種で香りが良くマイルドな味わいがある。カルトッフェルザラートやブラートカルトッフェルンに適している。
煮崩れしにくいタイプ
Vorwiegend festkochende
「フォーアヴィーゲント・フェストコッヘンデ・カルトッフェルン」は、約15%のデンプンを含み、品種によって硬めから少々柔らかくなるものまでバラエティ豊か。ポメス(フライドポテト)やマッシュポテトなどの付け合せから、シチューやキャセロールなどのメイン料理、カルトッフェルズッペ(じゃがいものスープ)などのサイドメニューまで、幅広い調理法の料理に利用することができる。そのため、ドイツで人気が高いのがこのタイプ。皮付きのまま調理した場合、調理中に皮が簡単に開くため、下準備に手間がかからないのもポイント。
アンボ
Ambo
2007年に認可された比較的新しい品種。早生種で香りが良くマイルドな味わいがある。カルトッフェルザラートやブラートカルトッフェルンに適している。
アウグスブルガー・ゴールド
Augsburger Gold
中早生~晩生種で、希少性が高い。名前からも分かるように黄金色の皮が特徴的で、味わいはクリーミーかつまろやか。どんな調理法にもマッチする使い勝手の良いじゃがいも。
バンベルガー・ヘルンヒェン
Bamberger Hörnchen
中早生~晩生種で、希少性が高い。名前からも分かるように黄金色の皮が特徴的で、味わいはクリーミーかつまろやか。どんな調理法にもマッチする使い勝手の良いじゃがいも。
バンベルガー・ヘルンヒェン・ブラオ
Bamberger Hörnchen blau
中早生種。青みがかった実、ナッツのような香りとスパイシーな風味、上品な味わいが特徴。シュパーゲル(白アスパラガス)を使った料理との相性が抜群。
ヘルマンス・ブラウエ
Hermanns blaue
実と皮がともに青っぽい色をしているのが特徴的。力強い味わいと香りがある。見た目とは裏腹に、ポメスやグラタンをはじめとしたさまざまなメニューに活用できる。
ジェリー
Jelly
中早生~晩生種。2002年に認可された比較的新しい品種。実はきめが細かく、保存性に優れており、貯蔵期間中に味わい深くなる。クヌーデルやカルトッフェルズッペにマッチ。
クヴァルタ
Quarta
中早生種。非常に繊細な味わをもっていて、ほんのりとしたスパイシーさを感じることができる品種。グラタンまたは、茹でて調理するタイプの料理に適している。
ライニッシェ・ローテ
Rheinische Rote
赤みのある実が特徴的で、希少な品種。ナッツのような香りとクリーミーな味わいが楽しめる。ヴィルデカルトッフェルンやザルツカルトッフェルンなど塩で調味する料理に合う。
ローテ・エマリー
Rote Emmalie
中早生種。赤みのある実が特徴的で、食べるとほんのりとしたスパイシーさが口の中に広がる。カルトッフェルザラートやピューレ、ニョッキなどに適している。
煮崩れしやすいタイプ
Mehlig kochende
「メーリッヒ・コッヘンデ・カルトッフェルン」は、約16.5%のデンプン量が含まれており、水分が少なめ。粉ふきいもになるので、ホクホクとした味わいが楽しめる。とろみのあるカルトッフェルズッペや、具だくさんのポトフのようなスープ系の料理から、ピューレ、クヌーデル(じゃがいも団子)、ニョッキ、マッシュポテトなど、潰してペースト状にして調理するのが一般的。餃子の具材に混ぜたり、コロッケのタネとしても美味しくいただけるので、日本食にもマッチする。
アッカーゼーゲン
Ackersegen
軽い口当たりと、バターっぽい味わい、スパイシーさが特徴。ピューレや焼きじゃがいも、塩辛い味付けのじゃがいも料理にマッチする。
アドレッタ
Adretta
中早生種。特にピューレやクヌーデル、餃子のタネに適している。そのほかには、ポメスなどのチップス料理に使用されることも多い。
アフラ
Afra
晩生種。貯蔵性に優れている。しっかりとした味わいの中にまろやかな風味があり、ピューレやクヌーデル、マッシュポテトなどに適している。
フィンカ
Finka
早生種。長期保存には適さないため、購入後は早めに食べるのがおすすめ。じゃがいもの塩茹でやピューレにすると美味しくいただける。
ハイデ・ガラ
Heide Gala
中早生種。香りが良く、焼いて調理する料理からポメス、マッシュポテト、カルトッフェルズッペ、クヌーデルなど幅広いメニューにマッチ。
ラウラ
Laura
中早生~晩生種。粒ぞろいの高品質な品種で、主にポメス用として使われることが多い。クリーミーな味わいが楽しめる。
マラベル
Marabel
早生種。収量性が大変良く、調理しても煮くずれや変色しにくいのが特徴。使い勝手の良い品種として、あらゆる料理に用いられている。
オーデンヴェルダー・ブラウエ
Odenwälder Blaue
中早生~晩生種。ブラートカルトッフェルンやグラタン、ザルツカルトッフェルンなど、焼くタイプの調理法に適している。
ライヒスカンツラー
Reichskanzler
晩生種。1069年に認定されたドイツでは古い品種。スパイシーでしっかりとした風味。クヌーデルやピューレ、カルトッフェルズッペなどに。
Q&A 知って得するじゃがいも豆知識
多くの種類が市場に出回るのはいつ頃?
主な出荷時期である9月~翌年3月頃にさまざまな品種のじゃがいもが出そろいます。
じゃがいもを選ぶ際の基準は?
高品質なじゃがいもの条件は「表皮に傷がなく、手触りがなめらか、実が硬い」です。
購入後いつ頃までに食べるべき?
品種によっても異なりますが、早生種なら収穫後2週間以内に食べるのがベスト。貯蔵性に優れた品種は、涼しい場所に保管して約4カ月はもちます。
おすすめの食べ方を教えてください。
春ならフレッシュなじゃがいもと白アスパラガスの組み合わせ、夏はAnnabelle(新じゃが)をキャベツや豆類と合わせていただくと美味しいです。秋はMoor-Drillinge(小粒のじゃがいも)とお好みのお肉を組み合わせたり、冬は家禽類と合わせるのがおすすめ
日本食に合うじゃがいもは?
小さいサイズのじゃがいもDrillingeは、しょうゆとの相性がとても良いです。
じゃがいもを食べると太りますか?
じゃがいもについて皆さんが特に勘違いしているのが、脂肪分が多いということ。「じゃがいも=太る」は間違いで、実はさまざまな種類のビタミンが豊富なんです。
お話を聞いた店
DAS Kartoffelhaus
ドイツ国内をはじめとしたさまざまな国の約130種類(※季節によっては種類の増減あり)以上ものじゃがいもを提供しているじゃがいも専門店。今回お話を聞いたオーナーのLeersさんは、「それぞれのじゃがいもによって特徴がありますので、ぜひカルトッフェルハウスに足を運んでください。美味しい食べ方を伝授します」と気さくに話してくれた。
住所:Stand F07, Carlsplatz, 40213 Düsseldorf
営業時間:月~金7:00~18:00、土7:00~16:30(日・祝日は休み)
電話:0152-32029253