国際卓球連盟(ITTF)が主催する、最も権威ある卓球の国際大会「2017世界卓球選手権ドイツ大会」がいよいよ、5月29日から6月5日の日程で開催される。8日間に渡って繰り広げられる熱戦。息をのむラリーに弾ける技。世界トップを占める中国勢の壁を誰が破るかも見どころだ。ロンドン五輪、リオ五輪のメダリスト、最高世界ランキング3位の石川佳純選手と、日本人初の快挙、シングルスで五輪のメダルを獲得した水谷隼選手に大会への意気込みを聞く。
世界が注目!日本代表メンバー
日本を代表する16人の選手が世界を相手に挑む。4月に中国で開催されたアジア選手権では、現在世界ランク1位、リオ五輪金メダリストの丁寧ら中国のトップ3人を次々と撃破した平野美宇が、史上最年少で優勝を飾り、世界中に打倒中国の希望を与えた。続く韓国オープンで、躍進の平野にストレート勝ちし、女王の貫録を守ったのが石川佳純。アジア選手権、男子は準々決勝で丹羽孝希が世界ランク3位の許繒(中国)を打倒。リオ五輪男子シングルス金メダリストで世界ランク1位の中国代表、馬龍がベスト32で敗れるなど、波乱の展開も。今大会も数多くのドラマが待ち受けているだろう。
今季ドイツの卓球ブンデスリーガに参戦し腕を磨いた森薗政崇、13歳の張本智和は今大会史上最年少で代表選出された期待のルーキー。女子U21で世界ランクの伊藤美誠、続く2位の佐藤瞳は3月の世界ランクで18位から一気に9位に上昇した。アジア選手権男子団体3位に貢献した松平健太、男子U21の世界ランク3位の村松雄斗の今大会の活躍にも期待が膨らむ。大島祐哉と森薗は2月のITTF ワールドツアー・インドオープン優勝ペア。加藤美優と早田ひなは2016年世界ジュニア卓球選手権ダブルスで準優勝した。今年1月の全日本卓球で2連続3度目の混合優勝を飾った田添健汰、前田美優ペア。リオ五輪で男子初の団体金メダルに貢献した吉村真晴は石川佳純と混合ペアを組む。
8日間の激戦「2017世界卓球選手権」
男子シングルス(5人)
水谷隼(27)丹羽孝希(22)
松平健太(26)
村松雄斗(20)
張本智和(13)
女子シングルス(5人)
石川佳純(24)伊藤美誠(16)
加藤美優(18)
平野美宇(17)
佐藤瞳(19)
男子ダブルス(2組)
大島祐哉(23)
森薗政崇(22)
吉村真晴(23)
丹羽孝希(22)
女子ダブルス(2組)
石川佳純(24)
平野美宇(17)
伊藤美誠(16)
早田ひな(16)
混合ダブルス(2組)
吉村真晴(23)
石川佳純(24)
田添健汰(22)
前田美優(20)
*カッコ内の数字は年齢
Day 1&2 5月29日(月)~ 5月30日(火) |
予選、男女ダブルス1回戦 混合ダブルス1 + 2回戦 |
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Day 3 5月31日(水) |
男子シングルス1回戦 女子シングルス1+2回戦 男女ダブルス2回戦 |
Day 4 6月1日(木) |
男子シングルス2回戦 女子シングルス3回戦 男女ダブルス3回戦 混合ダブルス3回戦 + 準々決勝 |
Day 5 6月2日(金) |
男子シングルス3回戦 女子シングルス4回戦 男女ダブルス準々決勝 混合ダブルス準決勝 |
Day 6 6月3日(土) |
男子シングルス4回戦 女子シングルス準々決勝 男子ダブルス準決勝 混合ダブルス決勝 |
Day 7 6月4日(日) |
男子シングルス準々決勝 女子シングルス準決勝+決勝 男子ダブルス決勝 |
Day 8 6月5日(月) |
男子シングルス準決勝 + 決勝 女子ダブルス準決勝 + 決勝 |
LIEBHERR Tischtennis WM Dusseldorf 2017
会場: Messe Düsseldorf(Stockumer Kirchstraße 61)
チケット:10ユーロ~
購入は下記ウェブサイト、または電話注文(0180-6050400)
www.wttc2017.com
Profile - 水谷隼
1989年 | 6月9日静岡県磐田市出身 |
---|---|
2008年 | 北京・2012年ロンドン五輪日本代表 |
2004年 | 全日本選手権ジュニア史上最年少優勝 |
2006年 | 世界選手権史上最年少出場 全日本選手権史上最年少優勝 |
2008年 | 卓球ブンデスリーガ1部ボルシア・デュッセルドルフ所属 |
2011年 | 全日本選手権5連覇達成 |
2016年 | リオ五輪シングルス銅メダル、団体戦銀メダル |
2017年 | 全日本卓球選手権シングルス4年連続9度目優勝 |
交差する思い ──
一番輝く金がほしい!
オリンピックのメダル
卓球を始めて20年来の夢
── リオ五輪でのシングルス銅メダル、おめでとうございます!日本人初の快は、大ニュースでした。メダルの重みをどのように受け止めていますか?
オリンピックでのメダルは、私が卓球を始めたときからの夢でした。20年以上卓球をしていますが、そのために頑張ってきたと言っても過言ではありません。
── ロンドン五輪では、団体戦5位と貢献しつつも、掲げた「メダル」という目標に届かず、苦しまれました。世界を相手に戦いながら、ここまで成績を伸ばしてきた水谷選手の、人知れない努力について、また、その支えとなる経験や思い、人物などについて教えてください。
世界卓球の団体戦では2008年からずっとメダルを獲得してきました。しかし、オリンピックではチャンスがありながらも北京五輪そしてロンドン五輪ともに良い成果を残すことができませんでした。
特にロンドン五輪以降、安定して成績を残してきた全日本選手権、世界選手権でも勝てなくなり、スランプに陥りました。何とかこの状況を脱却しなければいけないと思い、2014年に男子では初めて、プライベートコーチ(中国生まれのドイツ国籍)を雇い、ロシアリーグに挑戦することを決意。そこから全日本選手権での4年連続9回目の優勝、オリンピックでのメダルと好成績を残すことができました。
── 2008年の本誌のインタビュー※でも、男子卓球の地位向上を掲げていましたが、目標に向かって確実に進んでいる姿をドイツからも応援しています。次の2020年東京五輪で狙うのは?
今回、銀と銅の二つの色のメダルを獲得できたので、残された一番輝く金がほしいです。
── 現在、卓球専用の練習場も建設中とのこと。東京五輪までの3年間のプランをどのように描いていますか?
新しいスポンサーや新しい練習場、そして来年からは新しいリーグも日本でスタートするということで、環境が非常に良くなってきています。日々努力を重ねて、最高の状態で次のオリンピックを迎えたいと思っています。
── 小さいころからサッカーやバスケットボールなどスポーツ万能だった水谷選手。父の信雄さんが代表を務める「豊田町卓球スポーツ少年団」に入り、5歳から卓球を始めました。もうすぐ3歳になる娘さんも卓球が好きだそうですが、水谷選手の幼少期の一番の思い出は何ですか?
とにかく、毎日卓球の練習に明け暮れていました。
── 世界中から選手が集まり、毎週試合があるドイツのブンデスリーガ。中学、高校時代から留学していたドイツでの思い出は?
周りの選手のレベルがとても高く、毎日の練習が非常に充実していました。また、毎週試合があったので、そこで自分の成長を感じることができました。言葉の壁や、食事、移動など大変なことはたくさんありましたが、振り返れば良い経験だったと思います。
注目される選手になりたい
日本にとってドイツはライバルに
── 世界を舞台に、各地でプレーされる水谷選手。ドイツは同じ左利きで、「ボルシア・デュッセルドルフ」所属当時のチームメイトであるティモ・ボル選手がいますが、ドイツという国やドイツ人選手への思いは? また、今回の世界選手権で注目している選手はいますか?
今まで大舞台で幾度となくドイツに敗れてきていたので、リオ五輪の準決勝でドイツを倒した時は、いろんな思いが交差して胸が熱くなりました。これからも日本にとってドイツはライバルになると思います。特に注目してる選手はいませんが、デュッセルドルフでは自分が注目されるような選手になりたいです。
── オフの日はどのように過ごしていますか?
家族と一緒に出掛けることがほとんどです。たまに卓球もします。
── 語学や経済、自己啓発など様々な本を読まれているようですが、卓球以外に好きなこと、夢中になっていることはありますか?
あまりこれといった趣味がないので、模索中です。最近は英語の勉強にはまっています。
── 90年近い歴史と伝統を誇る世界卓球。偶数年に団体戦、奇数年に個人戦を開催し、今年は個人戦。会場のデュッセルドルフは水谷選手が過去にトレーニングを積んだ思い出の地。最後に、ドイツで応援する読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
私の第二の故郷であるデュッセルドルフの地でプレーできることを非常に嬉しく思います。皆さんに卓球の素晴らしさ、そして日本人の強さをデュッセルドルフで見せることができるように全力で頑張ります。応援よろしくお願いします!
「輝け、原石たち」プロ卓球選手 岸川聖也さん&水谷隼さん(2008年5月16日)
Profile - 石川佳純
1993年 | 2月23日山口県山口市生まれ |
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2007 ~10年 |
全日本選手権ジュニアシングルス4連覇 |
2008 ~10年 |
高校総体3連覇 |
2011年 | ITTF プロツアーチリオープン シングルス優勝 |
2012年 | ロンドン五輪シングルス4位、団体銀メダル |
2015年 | 全日本選手権3冠 世界選手権個人戦銀メダル ワールドカップ準優勝 |
2016年 | リオ五輪女子団体銅メダル |
2017年 | 韓国オープンシングルス準優勝 |
最後まであきらめない!
── ライバルは自分自身
最後まであきらめない
今でも一番意識する母の教え
── 卓球選手の両親のもと、7歳の誕生日にユニフォームをプレゼントされたのをきっかけに本格的に卓球を始めた石川選手。元国体選手の母・久美さんの指導で今に生かされていることは?け止めていますか?
最後まであきらめない、ということは今でも母に教わったことで一番意識しています。試合で劣勢に陥っても、最後の最後まで試合をあきらめない気持ちを持って戦っています。
── 「笑顔で前に行こう!」というホームページのスローガンの通り、笑顔が素敵な石川選手。これまでの華々しい卓球人生で、一番の笑顔はいつですか。また、最もつらかった時期を、どのように乗り越えてきましたか?
試合に勝った時はいつも笑顔になります。一番つらかったのは、ロンドン五輪出場を掛けてワールドツアーを転戦していた時期。その時は、どのように乗り越えるかと考えるより、やるしかない、と思って戦っていました。
誰も助けてくれない試合中は
「大丈夫」と自分自身を励ます
── メンタル面のコントロールにも努力が隠されていると想像します。気を付けている点や、工夫されていることなどあればアドバイスをお願いします。
試合中はいつも自分を励ます言葉をかけています。試合に入ると誰も助けてはくれないので、自分がすこし第三者的な目線で、自分自身に「大丈夫」、とか「いいよ、いいよ」など、ポジティブに実際に声を出して励ましています。
── どのような競技でも継続するには毎日の努力の積み重ねが大事だと思いますが、世界トップレベルの選手として、期待もプレッシャーも大きい中、頂点を目指し続けられるモチベーションの源は?
卓球そのものが好きなので、プレッシャーを感じるというよりも、自分自身がもっと強くなりたい、世界一になりたい、という思いで日々、練習しています。
ライバルは自分自身、
経験はすべて自分の糧に
── 初めて挑戦した世界選手権、横浜大会(2009年)でシングルス8強に。女子シングルス2回戦。当時世界ランク99位だった16歳の石川選手が、10位の帖雅娜(香港)選手相手に粘りを見せ、驚異の逆転勝利。福岡春菜にも勝ち、日本女子唯一のベスト8進出の大健闘を見せました。世界ランク上位の選手と戦った、初の世界の舞台はどうでしたか。また、その後ロンドン五輪の団体銀、さらにリオ五輪の団体銅と2大会連続でメダル獲得を成し遂げました。大きな国際舞台での経験は石川選手にどのような影響を与えていますか?
ライバルは自分自身です。中学生のころから、たくさんの国際舞台を経験させてもらって、それはすべて自分の糧になっていると思います。自分自身に勝たないと、相手には勝てないと思っているので、大会前の練習でここまで練習をしたのだから、あとは試合をするだけ、という状態にすることが重要だと思っています。
── 世界各地の国際大会でプレーされる石川選手。ドイツという国やドイツ人選手について、石川選手の印象は? 東京五輪も控える今、今回の世界選手権で注目している選手はいますか?
ドイツは世界選手権で合宿地として訪れたこともありますし、住みやすい国だと思います。注目している選手は、特にいません。
── 試合以外の活動として、全国で卓球教室を続けられていますが、日本における卓球文化についてどう考えていますか。ドイツは卓球台が設置されている公園も多く、休みの日には卓球のラケットとボールを持って来て子どもから大人まで楽しんでいます。オフの日はどのように過ごしていますか。卓球以外に好きなことや、夢中になっていることなどはありますか?
卓球は子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで幅広い年齢層の方が楽しめるスポーツです。日常にそのような卓球台が公園にあることは素晴らしいことだと思います。日本での卓球人気も、今は上がってきていると思いますし、気軽にできる環境がさらに整備されるといいと思います。
私のオフの日は買い物とかが多いです。夢中になっているのは……やはり卓球です。
── ドイツ大会の開催地であるデュッセルドルフとその近郊には多くの日本人が暮らしています。ドイツの会場で声援を送る読者の皆さんへのメッセージをお願いします。
5月の世界選手権は、日本人の方が多く住んでいらっしゃるデュッセルドルフということで、会場へたくさんの方に足を運んでもらえると嬉しいです。私は、シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスと3種目に出場させていただくので、すべてでメダルを獲得できるように頑張ります。温かい応援、よろしくお願いします!