ジャパンダイジェスト

旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

冬の鬱憤を吹き飛ばす、聖人からの贈り物

春の光は感じられるものの、寒の戻りは侮れず、不安定なこの季節。緊張で凝り固まった体をふーっと解し、一歩踏み出す勇気を与えてくれる飲み物が必要だ。

ミュンヘンでは3月中旬から3週間、「シュタルクビアフェスト」(Starkbierfest)が開催される。シュタルクビア、つまり「強いビール」のことで、その名の通りアルコール度数が7~9%と高く、濃厚で麦芽の風味が強いビールを楽しむフェスティバルだ。オクトーバーフェストのように決まった場所があるのではなく、各醸造所やレストランで独自のイベントが開催される。人々は残った寒気を吹き飛ばさんとばかりにシュタルクビアを飲み、快活な音楽とダンスを楽しむ。

シュタルクビアの起源は、以前本誌1094号でもご紹介したパウラーナー醸造所のビール「Salvator」(ラテン語で救世主)だ。修道士たちが復活祭までの四旬節に固形物を口にしない断食期間を乗り切るため、麦芽のエキス分が高く、アルコール度数も高くなったビールを「液体のパン」として飲んでいた。1780年に修道院外でも販売が許可されたことを契機に、ほかの醸造所でもシュタルクビアを醸造するようになった。

今回ご紹介するヴァイエンシュテファン醸造所の「Weizenbock Vitus」は、ヴァイツェンを強化したヴァイツェンボック。同醸造所は現存する最も古い醸造所としても知られている。725年に聖コルビニアンが建立した修道院が始まりで、1040年にはここで醸造したビールで巡礼者をもてなしていたという記録が残っている。Vitusは303年に殉教したとされるルカニアのヴィトゥスに由来し、ビール醸造者、ブドウ栽培者、薬剤師、鉱山労働者の守護聖人だ。

一口飲めば、小麦麦芽由来の甘さとバナナのようなフルーティーさに魅了される。長期貯蔵によるまろやかな口当たりで、ボトルが空く頃には、心地良い酩酊感と共に、心も体も解放されているだろう。

www.weihenstephaner.de

vol.99
Weizenbock Vitus

Weizenbock Vitus

 
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