ジャパンダイジェスト

ワインと食の合わせ方9 寿司とワイン

Eメール 印刷

2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に認定されました。「和食-日本人の伝統的な食文化」という名称で登録されています。農林省によると、多様で新鮮な食材の持ち味を活かしている、一汁三菜を基本とし、栄養のバランスが良い、うま味を活かし動物性油脂が控えめ、季節感を表現している、食文化と年中行事が結びつき、家族や地域の絆を深める役割を果たしている、といった特徴が評価されたとのことです。

日本人以外であれば、和食といえば、まず「寿司」を思い浮かべるはずです。今や「SUSHI」は、世界で最もポピュラーな和食といえるでしょう。ドイツでも、日本の職人たちが選り抜きのネタを仕入れて握る本場の寿司から、さまざまな国籍の調理人が作る寿司、機械化されてスーパーで販売されているパックの寿司まで、あらゆる寿司が消費されています。ドイツの家庭や会社でも、ピッツアのように宅配の寿司を気軽に頼むようになっています。

寿司はそれだけで、華やかな食卓を構成できるほど、バリエーションが豊富です。スタイリッシュなディナーにも、子供のパーティーにも対応できます。にぎり寿司はカナッペのように応用がきき、酢飯の上に乗せる素材は無限にあります。細巻き、太巻き、手巻き、軍艦巻など、海苔で巻く寿司の具も、ちらしの具も同様です。

素材のバリエーションが豊かな和食には、寿司のほかに天ぷらや串揚げのような揚げ物があります。天ぷらも串揚げも、揚げられないものはないといってもよいほどで、寿司を丸ごと揚げたホットロールも登場しています。寿司にも、天ぷらや揚げ物を載せたり、巻いたりできる包容力があります。

寿司はネタによって、さまざまな種類のワインを組み合わせて楽しむことができます。もちろん、1種類のワインで通すことも可能ですが、スパークリングワイン、白、ロゼ、赤を1種類ずつ用意しておくと、組み合わせの妙が楽しめます。

個人的には、白もロゼも赤も、酢飯の香味を邪魔しない控えめな風味の軽快なグーツワインが、うまく調和するように感じます。白ならヴァイスブルグンダー、シャルドネ、ジルヴァーナー、グートエーデル(シャスラ)などがぴったりです。私がよく選ぶのは、ラインヘッセンで見かけるヴァイスブルグンダーとシャルドネのブレンドワインです。リースリングはワインのスタイルが千差万別なので、寿司の種類、個人的好みを少し考慮して選ぶと良いでしょう。

果実味豊かなワインと寿司の組み合わせも、試してみる価値はあると思います。以前、シチリアのズィビッボ(マスカット・オブ・アレキサンドリア)の辛口と寿司の組み合わせを、美味しくいただいたことがあります。リースリングのミネラル感は、海苔の風味とうまく重なるので、海苔をパリパリと沢山いただく、家庭での手巻き寿司にリースリングを合わせるという手もあります。

脂の乗った魚には、ぜひ赤を合わせてみてください。サーモンやブリならロゼくらい、マグロのトロには、あまり重厚すぎない赤ワインが思いのほか良く合います。寿司とワインの橋渡しである醤油も、赤ワインと好相性です。赤はシュペートブルグンダー、フリューブルグンダー、ポルトギーザー、あるいはブレンドしたものをおすすめします。

 
Weingut Franz Keller
フランツ・ケラー醸造所(バーデン地方)

Weingut Franz Keller

オーナーのフリッツ・ケラーは醸造所のほかに、ドイツの政治家や著名人に愛されてきた伝統あるレストラン「シュヴァルツァー・アドラー」(ミシュラン1つ星)、ホテル、ワイン商などを経営するドイツ有数のガストロノミスト。岩場を掘って造られたトンネル状の「ベルクケラー」には、ボルドーを始めとするワインコレクションの数々が眠る。醸造所はカイザーシュトゥール地域特有の段々畑の風景に溶け込むような設計。 畑は石灰岩と火山岩の双方が混在する独特の土壌構成だ。フランスワインに造詣が深い彼が得意とするのは、シュペートブルグンダー。日常的なワインも、偉大な長熟タイプのものも、いずれも熟しすぎない絶妙のタイミングで収穫され、極めてエレガントな仕上がり。VDP会員。
写真)フリッツ・ケラー、フリードリヒ・ケラー親子

Franz Keller - Schwarzer Adler
Badbergstraße 44,
79235 Vogtsburg-Oberbergen
Tel.07662-93300
www.franz-keller.de


Schäferlay2015 Franz Anton
Spätburgunder trocken
フランツ・アントン
シュペートブルグンダー 辛口 20€

ブランド名「フランツ・アントン」はオーナーであるフリッツ・ケラーの祖父の名前。オーバーベルゲンの一級畑バスガイゲを除く、複数の一級、特級畑のシュペートブルグンダーをブレンド。いわゆる「ラーゲンキュヴェ」だ。主に火山岩土壌で育つ古木のぶどうを使用し、小型オークの古樽で熟成している。ほのかな果実味と品の良い香ばしさ、絶妙な重量感が印象的なシュペートブルグンダーは肉料理にぴったりだが、タレをつけた鰻や穴子の寿司、マグロのトロとも相性が良い。マグロは炙ると、より調和するはずだ。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
● ドイツゼクト物語
● ドイツワイン・ナビゲーター
● 好き!を仕事に
Nippon Express ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド バナー

デザイン制作
ウェブ制作