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ワインとスパイス

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数年前、イタリア、プーリア地方に出かけたとき、ターラント近郊の醸造家と食事をする機会がありました。海辺のレストランで、彼は自ら醸造した白ワイン、フィオーナをグラスに注ぐと、テラスに生えていたローズマリーの葉を摘んでぽんと入れました。「親父がこうやって白ワインを飲んでいたんだ」そう言って彼は、私のグラスにも入れてくれました。ローズマリーとワインのアロマが重なり、プーリアの香りの記憶となっています。

これも数年前、ハンブルクのカクテルバー「クリスチアンゼンズ」でのこと。300種類以上あるメニューの中に、シャンパーニュベースのものを見つけました。ブリュットに楊枝に刺した赤唐辛子を浮かべただけのシンプルなもので、時間とともに唐辛子が効いてきます。シャンパーニュの愛好家に怒られそうなカクテルですが、興味深い味覚体験でした。

そんなことを思い出したのは、友人がユニークな料理の本を出版したからです。タイトルは「Rezepte für mehr Weingenuss(もっとワインを楽しむためのレシピ)」(ダグマー・エアリッヒ、ベッティーナ・マテイ共著)。まず飲みたいワインが先にあり、それに合わせて簡単に作れる料理のレシピ集で、スパイスやハーブを橋渡しにして、ワインと料理を近づけるアイデアが満載です。ポピュラーな品種を採り上げ、各品種に合う胡椒ベースのスパイスの調合レシピも載っています。

以下はリースリングのページからの抜粋です。

リースリングペッパー
グリーンペッパー、ドライのレモンの皮、カルダモン、ドライミント、ドライのコブミカンの葉、ドライのしょうが、ドライの月桂樹の葉を混ぜ、すり鉢で潰す。

リースリングと好相性のスパイスとハーブ
しょうが、ガランガル、コブミカンの葉、レモングラス、レモンマートル、アニス、カルダモン、ホワイトペッパー、グリーンペッパー、チャービル、ディル、ルリジサ、ラベージ、レモンバーム、バジル、月桂樹の葉、ジュニパーベリー、サフランなど。

リースリングと好相性のアロマを持つ食材
桃、アプリコット、アボカド、ピスタチオ、塩、リンゴ、ココナッツ、柚子、きゅうり、ブドウ、レモンの皮など。

これだけの情報が揃えば、料理好きの人なら次々とレシピが思い浮かぶことでしょう。例えば、グリーンサラダに何かを加えたいとき、魚のカルパッチョをオリーブオイルとビネガーでいただく場合、牛肉のカルパッチョやボイルにマヨネーズ系のソースを添える場合、鶏肉を煮込む場合、このリストからスパイスやハーブ、食材を選ぶとリースリングに合わせやすくなります。

ところで、ワインとスパイスと言えば、グリューワイン。ドイツでは主に、辛口の赤ワインで作ります。ワインは単一品種でもブレンドでも構いません。鍋にワインを入れ、氷砂糖か蜂蜜、シナモンスティック、スターアニス、クローブ、ピメント、カルダモン、レモンやオレンジのスライスを加えて煮るだけ。月桂樹の葉、コリアンダー、タイムなどを加えるレシピもあり、白ワインでも作れます。簡単なので、好きなスパイスで自分流に作ると良いでしょう。ラム酒などを加えることもありますが、お湯を少量加えてライトにするのもおすすめです。

 
Sektmanufaktur Perlgut
ゼクトマニュファクトゥア・パールグート(ザクセン地方)

Sektmanufaktur Perlgut
オーナーで醸造家のヘンドリック・ヴェーバー氏

12月はグリューワインのほかに、ゼクトを味わう機会も多い。そこで2013年に新しく誕生したゼクトマニュファクトゥアをご紹介しよう。オーナーで醸造家のヘンドリック・ヴェーバーはガイゼンハイム大学在学中にゼクトに興味を持ちはじめ、ドイツゼクトの最高峰であるラウムラント、バルドング両醸造所で修業。ザクセン地方の気候はゼクト用のブドウの栽培にふ
さわしいと考え、故郷のマイセンで醸造所を立ち上げた。ゼクトはすべて伝統製法で生産。ワイナリーのロゴである「P」の文字を構成する127個のパールは、創業時にマイセンの急斜面の畑、カピーテルベルクを整備して植えたシュペートブルグンダーの本数にちなむ。ザクセン地方唯一のゼクト専門醸造所。

Sektmanufaktur Perlgut
Hendrik Weber, Kapitelholzsteig 2
01662 Meißen
Tel. 0173 584 5225
www.perlgut.de


Königlicher Weinberg2015 Riesling brut Pillnitzer
Königlicher Weinberg
2015年産 リースリング ブリュット ピルニッツァー・ケーニヒリッヒャー・ヴァインベルク
22.90€

ピルニッツにあるケーニヒリッヒャー・ヴァインベルクの急斜面の畑のリースリングを使用。ヘンドリックはゼクトコレクションのすべてをクレマンの基準で醸造。全房圧搾。150kgのブドウから最大100kgの果汁だけを得て醸造している。リースリングの酸味を活かし、マロラクティック発酵は行っていない。瓶内二次発酵期間を合わせ、24カ月瓶内熟成。ベースワインの段階で控えめだったアロマは、瓶内二次発酵後に開花したという。リンゴやかりんの爽やかな風味のゼクト。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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