Hanacell

輝け、原石たち
日本を飛び出し、ドイツで切磋琢磨する "若き血潮" を紹介します。


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1984年 静岡県浜松市生まれ
2003年 東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校卒業
2007年 同大学音楽学部楽器科卒業
2009年 同大学大学院修士課程修了
2009年11月 平成21年度文化庁新進芸術家海外研修員として渡独
2011年現在 デュッセルドルフ、アントン・ルービンシュタイン・ アカデミーにて研鑽中
5歳の頃からピアノを習い始め、藝大卒業時には宮中桃華楽堂での御前演奏者に選ばれる。2009年第78回日本音楽コンクール・ピアノ部門第3位、10年第1回パウル・バドゥラ=スコダ国際ピアノコンクール(スペイン)第2位。

繊細な指先から奏でられる、力強く澄んだ音がホールを満たし、客席が至福の波に包まれる感覚を覚えた。昨年11月、デュッセルドルフでピア二スト、石井園子さんが渡独後初めて開いたリサイタルでのこと。観客の1人は「心揺さぶられる演奏だった」と、興奮気味に会場を後にした。

「ピアノを通して音楽の真髄や、そこから得られる感動、幸福を人々に伝えられる演奏家になりたい」。今ある石井さんの夢は、一朝一夕に築かれたものではない。幼少期から習ってはいたが、人前で演奏することが殊に苦手だった。また、時と共にピアノの存在があまりにも自身の一部になり過ぎて、それが特別好きだという実感も持てなかった。

そんな折に家族旅行で訪れた音楽の都ウィーン。それまで見聞きしていた憧れの地で得た感動が、音楽の道に進む決意を促した。ただこの時期も、音楽はあくまで学びの対象。演奏家になる意志が芽生えたのはもう少し先だった。

1つの作品と向き合うとき、自らの体験や喜怒哀楽をそこに投影しながら演奏するのではなく、作曲家が一音一音に込めたメッセージや、そこに映し出される情景をできる限り忠実に読み取り、聴き手に伝えたいと考えながら、石井さんはピアノを弾く。そして聴衆から、「あなたの音楽を聴いていて、生きる勇気がわきました」「涙が出て、幸せな気持ちになりました」といった言葉を掛けられるようになったときに初めて、曲を学び、弾きこなせるようになったという満足感に終わらない、音楽を外へ発信する喜びを得るに至った。

自分の中だけで楽しんでいた音楽の世界が、聴く人と共有できる喜びへと広がったとき、人前で演奏する恐怖も消え、堂々と演奏家としての一歩を踏み出していたのだ。

現在は、子どもの頃に師事し、大学時代に再会したディーナ・ヨッフェ教授の下で修行中。「自分の音楽を最も理解してくれる」と敬愛する師匠から吸収したことを日本に持ち帰り、いろんな場所でいろんな人に音楽の楽しみを伝える活動をしたいと、演奏家の夢は尽きない。

(編集部:林 康子)


2009年10月、東京オペラシティコンサートホールでの演奏



2010年9月、 第1回パウル・バドゥラ=スコダ
国際ピアノコンクール授賞式にて



「ドイツの母」と慕うヨッフェ教授と
Information

石井さんの師であるヨッフェ教授が所属するデュッセルドルフのアントン・ルービンシュタイン・アカデミーは私立の音楽院。ピアノ、室内楽の分野で、才能ある若き音楽家の支援育成に努めている。同アカデミーは、定期的にクラシック・コンサートやリサイタルも開催している。

写真)2010年11月、デュッセルドルフ市内のホテルで行われたリサイタル Copyright by Anké Hunscha Photographie

Internationale Anton Rubinstein Akademie
Blumenstraße 2-4,
40212 Düsseldorf
www.rubinstein-akademie.de

 
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