1989年にベルリンでスタートし、最盛期の1999年には150万人を動員した、世界最大規模の真夏のレイヴパーティー(野外のダンス音楽イベント)である「ラヴ・パレード」。資金難やゴミ処理などの問題が次第に深刻化していくなか、2007年にはベルリン市が開催を拒否したため、以降はエッセンやドルトムントなど、ほかの都市で行われていました。ところが2010年、デュイスブルクで21人が死亡、500人以上の負傷者を出す群衆事故が発生。この事故を受けて、主催者は永続的な中止を宣言しました。「ラヴ・パレード」の歴史は一旦幕を閉じたのです。
トレーラーの上に乗って踊る人々を模したジオラマ
しかし、ベルリンのクラブカルチャー愛好家たちは、毎年7月に開催されていたパーティーを復活させるために、長い時間をかけて辛抱強く取り組んできました。もともと2021年に開催予定だったものの、コロナ禍によって1年延期に。そしてついに、来たる2022年7月9日に「レイヴ・ザ・プラネット・パレード」と名前を改め、ベルリンの6月17日通りに戻ってくることが決まりました。
主催元の「レイヴ・ザ・プラネット」は、ベルリンのテクノカルチャーをユネスコ無形文化遺産に登録するための活動を展開していて、2021年11月に正式な申請書を提出したことも大きな話題となりました。
戦勝記念塔の模型は1メートルほどもある立派なもの
「レイヴ・ザ・プラネット」は現在も寄付を受け付けていますが、その方法がとてもユニークです。博物館島に2021年にオープンしたフンボルトフォーラムの中にあるミュージアムショップに、戦勝記念塔と6月17日通りを模した模型が設置されています。資金調達とレイヴをかけて「ファンド・レイヴィング」と名付けられたこのジオラマには、踊っている人々を模した多数のフィギュアが置かれています。
寄付をしたい人は、まずはフィギュアを購入します。購入にかかったお金は「レイヴ・ザ・プラネット」に全額寄付されます。フィギュアは老若男女、多様なデザインが用意されていて、価格もさまざまです。例えば、もっとも安価で一般的なデザインのものが5ユーロ、二人組のセットが14ユーロ、公衆トイレや街路樹といった特殊なものだと250ユーロ(!)などとなっています。
筆者が購入したフィギュアも設置してもらいました
購入後は、その場でフィギュアをジオラマ内に設置してもらえます。筆者も一つ購入して、戦勝記念塔のそばに立ててもらいました。自分の寄付した証がこんな風に模型の中に残るというのは、ほかでは経験したことのない不思議な感覚です。隣に置かれたフィギュアもまた、誰かが寄付したもののはずで、そう考えるとこのジオラマは、非常に多くの人の「願い」が形になったものといえるでしょう。
「レイヴ・ザ・プラネット・パレード」が晴れて7月9日に開催され、事故なく無事に終えられることを、ただただ祈るばかりです。