日本ではあまり知られていません が、実はフランクフルトはジャズと縁の深い街。ジャズの本場アメリカに先駆けて世界初のジャズ音楽教育機関が開設されたのも、ここフランクフルトです。また、毎年10月に開かれるドイツ・ジャズフェスティバル(Deutsches Jazzfestival)は、国内最古にして継続開催年数世界一のジャズ祭りとなっています。街の中心にはヨーロッパ 屈指のジャズクラブ「ジャズケラー (Jazzkeller)」があり、毎週多彩なゲストを迎えて生演奏が披露されています。
そんなフランクフルトで、今年から新しいジャズの企画「Jazz im Museum」が始まりました。ジャズケラーがユダヤ博物館と協力し、隔週日曜にライブを開くとのこと。ジャズに興味があっても ジャズクラブは少々敷居が高いと感じていた私ですが、日曜の11時に博物館で開かれるライブならばと、早速初日に行ってきました。
博物館中に流れるジャズの調べに、老若男女を問わず皆が聞き惚れる
この日のゲストはニューヨークのジャズピアニスト、デヴィッド・バークマン氏。ベーシストのマルティン・ツェンカー氏、ドラマーのリック・ホランダー氏と共にトリオで演奏します。舞台も幕もない博物館のカフェの奥、最前列から 1メートルも離れていない場所がステージです。まずはアップテンポなナンバーで華麗な指さばきを披露。目の前で奏でられる素晴らしい音色に、最初から心を奪われました。客席からの大きな拍手に続き、バークマン氏がユーモアを交えてメンバーを紹介します。ドイツ語が話せないことを謝罪した後、「日本語なら話せますが、あまり意味がありませんよね」と突然日本語を話し出したのには 驚きました。作曲家としても名高い同氏のオリジナル曲が披露され、各メンバーの見せ場あり、スローな曲ありと、飽きさせない選曲が続きます。朝の爽やかな光の中、コーヒーの香り漂うカフェでの素晴らしい生演奏に、すっかり魅了さ れてしまいました。
1時間半の演奏後、一旦休憩が入ります。バックステージもなく、その場でくつろぐメンバーに思い切って声を掛けてみました。バークマン氏の奥さんは日本人で、奥さんと出会う前から日本語を勉強されていたのだとか。お願いすると快く写真撮影にも応じてくださいました。
今回のゲスト、左からバークマン氏(ピアノ)、
ツェンカー氏(ベース)、ホランダー氏(ドラム)
いかにもジャズが好きそうな中年ご夫婦から家族連れ、若いカップルと客層もさまざまですが、皆が熱心に聴き入り、心から拍手を送ります。日曜の朝からコーヒー片手にこんな素晴らしい演奏が聴けるとは、なんて贅沢! 大満足の ひと時を過ごすことができました。
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。