今年は、大阪市とハンブルク市が姉妹都市を締結して30周年に当たる記念年です。それに伴い、各方面でさまざまな記念行事が計画されています。
建築物としても興味深いハーフェンシティ大学内部
エルベ川中州の再開発地区に新しく建設された、ハーフェンシティ大学では、姉妹都市締結30周年を記念して、この夏学期の半年間にわたって「JAPAN」をテーマに一般公開の特別講義が行われています。講師陣は、同大学だけでなく、ハンブルク大学やハンブルク音楽演劇大学からも招かれており、伝統芸能、茶道、武道、建築などの伝統的な日本文化だけでなく、ポップカルチャーや経済など、現代に関するテーマまで、多角的に日本を捉えようとしています。
第1回目のテーマが「歌舞伎」、2回目が「能」と興味のある内容でしたので、この2回、ハーフェンシティ大学に足を運んでみました。一般公開の講義なので、学生以外の日本ファンも多く聴講していて、150名ほどの講義室はほぼ満席。講師は2回ともハンブルク音楽演劇大学のフランク・ベーメ教授でした。彼の専門はアジアの音楽演劇とのこと。講義の冒頭に「アジアの国々から西洋音楽を学ぶために多くの留学生がドイツにやって来ているが、彼らは自国の伝統音楽をほとんど知らない。そしてアジアの国々の音楽を、外国人である私がアジアからの留学生に教えている」と語ったのが、印象的でした。
スクリーンいっぱいに映し出された歌舞伎役者たち
能の講義をするベーメ教授
歌舞伎芸術の草創期から歴史的変遷についての説明もありましたが、興味深かったのは、舞台美術のからくりです。廻り舞台を世界で最初に導入したのは、なんと歌舞伎だったとのこと。もちろん当時は人力です。役者が登場する際に舞台が地下からせり上がったり空を飛んだりと、聴衆を驚かせて楽しませる工夫が早くから試みられていました。また、衣装の早変わりは歌舞伎の見どころの1つだと思いますが、なかには4種類の衣装を次々に替えることもあるそうです。そういうときには必ず黒子が登場します。「この黒い人たちは、『いない者』としての暗黙の了解がある」と説明されたときに、聴衆から思わず笑いが漏れました。私たち日本人にとっては当たり前のことが、説明されないと理解できないのだと改めて思い知らされました。今日の歌舞伎は、時事問題や笑いの要素を取り入れたりして、現代のエンターテインメントとして、初心者も楽しめるような工夫がされています。しかし、能は伝統をしっかり守っているので、予備知識がない人には取っかかりが難しいように感じました。
これらの講義はすべて事前申し込みは必要なく、1回だけの聴講もできます。興味のある方は、インターネットで「Hafencity Universität Japan」と検索してみてください。
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?
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