クラシック音楽界では、ヨーロッパのコンサート・ホールに日本人の音楽家が登場するのはごく当たり前の光景ですが、このたびタンゴの歌姫、冴木杏奈さんのコンサート・ツアーがドイツで行われました。冴木さんは、昨年アルゼンチンで行われたタンゴ・フェスティバルにおいて、「タンゴに貢献した20人」にアルゼンチン人以外でただ1人選ばれたという実力の持ち主。日本とアルゼンチンのみならず、世界各国でコンサート活動を行っており、今回のドイツ・ツアーではベルリン、ハノーファー、ドレスデンと各都市を巡り、5月19日にハンブルクがトリを飾りました。
ハンブルクでのコンサート会場は「ファブリーク」。その名が示す通り、元は機械工場だった場所です。1971年に芸術と文化のための施設として新しく生まれ変わりましたが、機械工場として使われていた名残は随所にあり、中でも入り口正面に残っているクレーンはこの建物をひときわ印象づけています。ファブリークは、昼間は青少年センターとして利用され、地域の子どもたちを対象に様々な講習会が開かれています。宿題のお手伝いをするコーナーもあり、相談所としての役割も担っているようです。夜になるとコンサートや演劇をはじめとして、教育・政治に関する講演会や展示会が催され、遠くハンブルク以外の地域からも人々が訪れるそうです。
ファブリーク外観、不思議な建物です
さて、冴木さんのコンサートですが、バック・ミュージシャンはギター、バンドネオン、パーカッション、コントラバス、ピアノ、ヴァイオリンという構成でした。もちろんいつもフルバンドというわけではなく、曲によってはピアノのみの伴奏でしっとり聴かせるものもあり、バラエティ豊かでした。冴木さんは前半、ベトナムの民族衣装「アオザイ」を身にまとって登場。前半のプログラムの中で、もともとベトナムの曲だったものをタンゴ調にアレンジした曲を披露していました。
彼女は1曲の中で、スペイン語と日本語の歌詞を織り交ぜて歌うという独自のスタイルを持っています。また、発声の仕方や感情の乗せ方は演歌に通じるものがあり、日本人にはとても馴染みやすかったと思います。聴衆に埋め尽くされた会場で、ドイツ人と日本人の比率は6:1ぐらいだったでしょうか。南米の熱情的なお国柄に比べると大人しいドイツ人と日本人。物音1つ立てず真剣に聴き入っていましたが、本来は手拍子や足拍子をして、身体を動かしながら楽しむものなのかもしれないと思いました。
冴木杏奈さんのタンゴ・コンサート
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?