ジャパンダイジェスト

盲ろう者の生活を体験

先日、市内にある盲ろう者施設の一般開放がありました。視覚や聴覚に障害を持つ子どもや成人が共に暮らしたり、学んだりする施設です。ポツダムにある施設に次いで、ドイツで2番目に古い歴史を持ち、2年後の2017年には50周年を迎えます。この施設が一般解放される日があると聞いて訪問してきました。同日は地元の人が大勢訪れ、楽しいひとときを過ごしました。

ハノーファー
目隠しをしてケーキを食べる。いかに難しいかが分かる

ドイツでは、目が見えず、耳が聴こえない盲ろう者は3000~1万人おり、そのうち生まれつき両方の障害を持つ人は1000人ほどだといいます。ハノーファーの施設では、6~12歳までの子ども80人が学んでおり、そのうち40人はここで生活しています。大人の入居者は60人おり、近くの作業場に通って仕事をしています。また、視覚や聴覚障害が進行する病気を持つ人たちもここを訪れ、将来に備えた訓練やリハビリを受けています。そのほかにも、職員が障害のある幼児の自宅を訪ねてアドバイスをするなど、盲ろう者の生活全般をサポートしています。

一般解放の日は、施設内を案内してもらいました。まず、点字や手話についての説明があり、盲ろう者が生活の中で使う道具を試すことができました。わざと曇らせたレンズの眼鏡を掛けて、視覚障害者の生活がいかに大変なものか体験することもできます。目隠しをしてケーキを食べようとしても、フォークがうまく口に入りません。実際に試した訪問者の1人は、「水をコップに注ぐのもままならず、やってみて初めて、視覚や聴覚に頼らない生活がいかに難しいか分かった。これからは、盲ろう者を見かけたら手助けしたい」と話していました。

ハノーファー
杖やベストなど、日常で使う道具

子どもたちの教室には、触って学べる道具が置いてあります。ソファーもあり、アットホームな雰囲気でした。視覚と聴覚のほかにも身体機能の障害や精神障害を持つ子どもが多く、日常生活全般で支援が必要です。1クラスは5人の子どもから成り、午前中は教師1人と幼稚園や学童保育教員の資格を持つ職員が3人、午後は職員2人が交代で担当しています。なお、施設を利用する際、保護者の金銭的負担はありません。

ブンデスリーガ1部で活躍するサッカーチーム「ハノーファー96」で1997年から会長を務めているマーティン・キント氏は、補聴器製造会社キントのオーナーであり、同施設の支援も行っています。一般解放日にはサッカー選手とともに施設を訪れ、皆を喜ばせました。

また、入所者が作った雑貨やアクセサリー、ジャムを販売するコーナーでは、心を込めて手作りされた商品に人気が集まりました。

職員のアンドレス・レッフラーさんとグダーン・レムケヴェルナーさんは、「(一般開放は)障害者の様子を市民に知ってもらうと共に、入所者にとっては社会と触れる良い機会になる」と語り、多くの人が訪問したことを喜んでいました。

田口理穂(たぐち・りほ)
日本で新聞記者を経て1996年よりハノーファー在住。社会学修士。ジャーナリスト、裁判所認定ドイツ語通訳・翻訳士。著書に『市民がつくった電力会社: ドイツ・シェーナウの草の根エネルギー革命』(大月書店)、共著に「お手本の国」のウソ(新潮新書) など。
 
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