ライプツィヒ東部の幹線道路アイゼンバーン通りのほぼ終わりに位置する4棟は、東西の壁崩壊後の1990年代から空き家の状態が続いていました。そこに約2年前から地域に住む若い人たちが中心となって、自分たちで改修工事を行って住むハウスプロジェクト「シューナー・ハウゼン (SchönerHausen)」が動き始めました。現在、関係者は80人以上に上り、年齢も収入も生活背景も異なる人たちの集まる共同体が出来上がりつつあります。
改修工事が進められているファサードと階段
約2400平方メートルの延床面積に40 戸ある住居には、20代の学生たちを中心に、赤ちゃんのいる若い家族や60代の高齢者も関わっています。専門技術が必要な設備関連の工事以外は、ほぼ全てを自分たちでセルフリノベーションすることを前提とし、2017 年の入居を目標に工事が進んでいます。中庭には共有の2階建ての建物もあり、様々なイベントに使われる予定です。すでに中庭には子供の遊び場や屋外キッチンも作られ、地域の住民たちに開放するイベントも定期的に行われています。
中庭で行われるイベントは、
ハウスプロジェクトの重要な情報交換の場になっている
2014年末にエディス・マリオン財団がこの4 棟の建っている土地を購入。住人たちと99年間の賃貸契約を結びました。住人たちは有限会社 「SchönerHausen GmbH」を設立し、ドイツのハウスプロジェクトをサポートしている「共同住宅シンジケート」と連携することで、不動産市場に物件が流れることを不可能にしています。不動産バブルが起きているライプツィヒにおいて、安い家賃で住み続けられる住まいを自ら手に入れることは、非常に重要な意味を持ちます。また、市の住宅政策に対する政治的な活動としても市民の大きな関心を集めています。
改修費は銀行からの借り入れだけでなく個人からも直接集め、お金の使い方は話し合いで決めるなど、民主主義的に決定しています。また、各棟で住人全員による管理組合のような登記社団(Verein)を設立し、週に1度の集まりでは問題点や課題を話し合い、役割分担しながら工事を進めています。例えば、暖房機を取り付けるために床と壁の間の穴埋めを全住戸を回って作業したり、階段の手摺り工事をしたり。つまり、自分が住む予定の部屋だけでなく、建物全体が使えるようにそれぞれが動いているのです。
自分たちでリノベーションする理由は、改修費用を抑えるためだけでなく、各住戸の間取りを実際に住む人に合わせて計画するためでもあります。例えば学生たちのシェアフラットでは大きなキッチンを共有し、高齢者用にはワンルームを整えるなど、自分たちで自らの暮らし方を決めるやり方がここにはあります。
ドイツ建築家協会認定建築家。福岡県出身。東京理科大学建築学科修士課程修了後、2003年に渡欧。欧州各地の設計事務所に所属し、10年から「ミンクス・アーキテクツ」主宰。11年より日独文化交流拠点ライプツィヒ「日本の家」の共同代表。
www.djh-leipzig.de