住みやすい街、革新的な街、才能が集まる街、駐在員が住みたい街……。街にまつわる各種ランキングで、ミュンヘンはよく上位に登場します。住民もそのことを自慢かつ誇りに思っているようで、街を愛する気持ちを人々から感じることもしばしば。どこに暮らしていても、郷土愛というのは強いものですね。そんな魅力的な街ミュンヘンは人々を惹きつけ続け、人口も150万人を超えました(2018年10月統計より)。都市の人口増加に拍車がかかっているのはミュンヘンに限りませんが、ご多聞にもれずここ数年、この街でも不動産価格が高騰し、それに伴う住宅の不足、また特に、ごく平均的な収入の人々が入居できる価格帯の住宅の入手が難しくなっています。一方、行政側もそれに対応すべく市内の再開発に力を入れており、各地で住宅やオフィスビルの大規模な開発が進んでいます。これらの再開発は、計画から実施、そして完成までに何年もかかるものですが、最近はだんだんと街の様相が目に見えて変わりつつあると感じられるように。
再開発の真っ只中の敷地に建つ大観覧車(2021年まで営業)が、なんだかミスマッチ
「ミュンヘンらしさを保ちつつ、将来的なニーズに合った都市の建設」をモットーに、近距離交通網を含めたモビリティーのさらなる推進、新しいデジタル技術の導入、エネルギー問題への取り組みなど、多角的な街づくりが進められています。ミュンヘン市内各所で進む開発は、それぞれの場所ごとに特徴あるテーマを掲げていて、なかなか魅力的です。例えば市内中心部では、旧空軍兵舎であるルイトポルトカゼルネ(Luitpoldkaserne)周辺を芸術・文化・知識をミックスした職と住の地域に。商工業地区として使用されていたノッカーベルグ地区は、小高い丘にある立地を生かしておしゃれな住宅地へ。ミュンヘン中央駅もモダンに改築予定です。また、郊外寄りの自然が残る広い土地を生かし、スポーツ施設や公園、幼稚園、職住接近住宅などの複合型開発で、子どもからハンディキャップを持った人までを含めた生活の質向上をうたう地区も。ほかにも、緑に覆われた高層ビルの建設計画、デジタル技術を取り入れたスマートハウスの販売など、今の世相を反映していますね。
大規模な住宅地開発が進むミュンヘン
さらに、市内中心部のS バーン第2トンネル建設計画を含めた近距離公共交通網の整備や、道路の改修などの建設ラッシュが続いており、建設用の大型クレーンが目に入らないところが無いのではないかと思えるほど。そのため、渋滞や交通遅延などが日常的なストレスとなっています。しかもドイツでは大型計画には遅れがつきものなので、一体いつ終わるのか分からない建設現場をあちこちで見かけると、なんとなく落ち着かない気持ちになるのが少し残念ではあります。
そんなダイナミックな変換を見せている街は刺激的ですが、郊外の静かな地区に戻れば昔ながらの雰囲気を感じてホッとできる。それもまた、ミュンヘンの魅力の1つでしょう。
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。