ジャパンダイジェスト

三つの穴から初日を拝む!? ノイヤースブレッツェル

はじめまして! シュトゥットガルト北東のマールバッハ・アム・ネッカー在住のグリュッツマン・貴子と申します。フンドハウゼン・エリさんの後を継いで、今月から私がシュトゥットガルト近郊の話題をお伝えします。よろしくお願いします!

今回は2023年の幕開けにふさわしい、この地域に伝わる「新年へ幸運をもたらすシンボル」をご紹介します。年末にパン屋さんで、巨大なブレッツェルを見かけたという方はいらっしゃいますか? これは「Neujahrsbrezel」(ノイヤースブレッツェル)といって、私の住む地域のパン屋さんでは、12月31日だけの限定商品として売り出されます。

一般的なブレッツェルと比較してみたら、その大きさは一目瞭然! インターネットで作り方を調べてみると、ノイヤースブレッツェルを一つ作るのに使う小麦粉は500グラム。日本のホームベーカリーで焼く食パン1斤に必要な粉の量は約250gなので、かなりのボリュームであることが分かります。ちなみにブレッツェルの形をしているのはこの地域の特徴らしく、「Neujahrsgebäck」 で検索してみると、地域によっては別の形もあるようです。主にクランツや四つ葉のクローバー、動物の形などがあり、大きくて菓子パン系の甘い生地というところは共通しています。

実際に焼いてみたノイヤースブレッツエル。こんなに大きくなりました実際に焼いてみたノイヤースブレッツエル。こんなに大きくなりました

私が今回取り上げたバーデン=ヴュルテンベルク州の巨大ブレッツェルは、かれこれ300年以上前からあって、病気や災い、食糧難から守ってくれるお守りのシンボルだったそう。縄を編んだような形といい、登場する時期といい、まるで日本のしめ縄のようだと私は思います。大みそかにみんなでブレッツェルの穴を覗き込んで新しい年の幸運を祈った後、新年の朝食として分け合っていただきます。昔は、新年の贈り物としてプレゼントする習慣もあったとか。

ちなみに『はらぺこあおむし』(偕成社)で有名な絵本作家エリック・カール(1925-2021)さんの作品に、『プレッツェルのはじまり』(偕成社)という絵本があります。主人公のパン屋ワルターさんが、「パン生地はひとつ、あさひが3つみえて、しかもさいこうにおいしいパンを焼いてくるのだ!」という王様から課せられた無理難題に頭を悩ませ、偶然できた「プレッツェル」という新しいパン。このエピソードを知ってノイヤースブレッツェルの穴から「初日(はつひ)」を拝んだら、2023年がますます素晴らしい年になるでしょうね。

エリックカール作・絵『プレッツェルのはじまり』エリックカール作・絵『プレッツェルのはじまり』

さて、作り方と生地の編み方に興味があったので、実際に家で焼いてみました。焼き上がりは、ふんわりいい香り。普通の家庭用オーブンの天板からはみ出そうなくらい巨大なブレッツェルになりました。とても大きいので、重くてずっしりとしています。子どもたちが三つの穴からこちらをのぞき込む姿は、インパクトがありますね(もちろん、大人も!)。2023年が、喜びに溢れた年になりますように。

この三つの穴から「初日」を拝んだら、きっと良い年になりますね!この三つの穴から「初日」を拝んだら、きっと良い年になりますね

グリュッツマン 貴子(たかこ)
おんせん県出身。ドイツ人の夫と、二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。趣味は、(こうじ)を醸して発酵調味料を手作りすること。世界各地に住む日本人の醸し人仲間たちと共に、糀の可能性を研究する「伝統食クリエイター」としても活動。台所はいつも実験室のようになっている。

 
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