ジャパンダイジェスト

音楽で日本とドイツをつなぐトリオ・ジャポニカ

先日、娘と一緒に室内楽のコンサートに出かけました。ピアノ、ヴァイオリン、クラリネット奏者からなる「トリオ・ジャポニカ」のコンサートです。グループ名を見てお気付きかもしれませんが、トリオ・ジャポニカはドイツで音楽を学んだ日本人音楽家3人が結成したグループ。2009年に活動を開始し、クラッシックをはじめ、子どもに向けた音楽会など、さまざまな趣旨のコンサートを開催してきました。今回のコンサートのタイトルは「Begegnung mit japanischenKlängen」(邦楽の響きとの出会い)で、シュトゥットガルト近郊のシュタインハイムにて開かれました。

息遣いが聞こえるくらい、間近でプロの演奏を堪能息遣いが聞こえるくらい、間近でプロの演奏を堪能

観客席には地元の人々に加えて、日本人親子の姿もちらほら見られました。着物をアレンジした、上品でシックな衣装に身を包んだ三人が舞台に並び、開演のあいさつ。いよいよコンサートが始まります。まずは一曲目の「日本の新春」という曲について、新春を迎える日本での習慣がドイツ語で語られました。プログラムが進むごとに、曲名と作曲家、その曲が作られた時代背景や登場する日本の伝統行事などについての説明があります。彼女たちの優しくて滑らかな語りと音楽が織りなす時間は、まるで絵本の読み聞かせをしてもらっているような心地良さ。多くの人が耳を澄ませて聴き入っていました。

私自身が学生時代に授業で歌った懐かしいメロディーや、ドイツで生まれ育った子どもたちも知っているポピュラーな曲のほか、初めて出会う曲もいくつかありました。数ある演奏曲の中でも、大分県竹田市にゆかりのある滝廉太郎が作曲した「荒城の月」が演奏されたことに、大分出身の私は故郷を懐かしむ気持ちと、ここで彼の曲が演奏されたことへのうれしさで胸がいっぱいに。ぜいたくな60分はあっという間に終了し、アンコールの拍手が続きました。

笑顔で取材に応じてくださった、トリオ·ジャポニカの三人笑顔で取材に応じてくださった、トリオ·ジャポニカの三人

「言葉が通じなくても、音楽は人と心をつなぐもの。音楽で日本とドイツの架け橋になりたい」。これはトリオ・ジャポニカのコンセプトの一つで、彼女たちは過去に日独協会ライン=ネッカーの節目の記念式典で演奏したこともあるそうです。またメンバー自身が妊娠・出産、子育てを理由に、観客としてコンサートへ出かける機会が減った経験から、親子で一緒に楽しめるコンサートの企画にも力を入れています。子育て中のパパやママにも生の演奏会を楽しんでもらいたい、子どもたちに幼いころから本物の音に触れてもらいたいという想いが込められているそうです。私も過去に彼女たちの子どもコンサートを訪れましたが、子どもだけでなく、私たち親も一人の観客として歓迎されたことがうれしかったのを今でも覚えています。

みんなの心を満たしてくれるトリオ・ジャポニカの素晴らしい活動が、これからもたくさんの人に届きますように。さらなるご活躍を応援しています!

トリオ・ジャポニカ:www.triojaponica.com

グリュッツマン 貴子( たかこ )
おんせん県出身。ドイツ人の夫と、二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。趣味は、( こうじ ) を醸して発酵調味料を手作りすること。世界各地に住む日本人の醸し人仲間たちと共に、糀の可能性を研究する「伝統食クリエイター」としても活動。台所はいつも実験室のようになっている。

 
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