子連れでも大人だけでも楽しめる、シュトゥットガルト近隣の街へのショートトリップはいかがですか。シュトゥットガルト中央駅からSバーンで北の方向へ約30分のところにあるビーティヒハイム=ビッシンゲン(Bietigheim-Bissingen)は、1962年から群馬県草津市と姉妹都市提携を結んでいる街です。今回は、徒歩で巡れる範囲から、この街の見所を3カ所に絞って紹介します。
ビーティヒハイム=ビッシンゲンのかわいらしい街並み
まずは旧市街の「ホルンモルト邸」からスタートしましょう。1535年に建てられたこの建築物は、南ドイツで最も良好な状態で保存されているルネサンス様式の民家の一つといわれ、現在は市立博物館として多くの観光客を迎えています。館内には同市出身のエルヴィン・フォン・ベルツ医師(1849-1913)にまつわる展示室があり、彼の生涯や明治天皇とのつながり、草津温泉との姉妹都市交流の様子を日本語の解説やビデオを通して知ることができます。
明治9年から東京帝国大学に「お雇い外国人教師」として赴任し、明治天皇や皇太子(のちの大正天皇)の侍医も務めたベルツは、通算29年間を日本で過ごしました。温泉の効能を医学面から分析し、なかでも草津温泉の効能を世界へ広めたことで大変有名です。そのため博物館には、天皇家の家紋入りの短刀や、茶事で使われる蒔絵の菓子器、荘厳な雰囲気を醸し出す鎧甲冑などに加え、当時ベルツと交流があった日本画家の 河鍋 暁斎 (1831-1889)の浮世絵も数多く展示されていました。
国宝級の展示物が並ぶ館内
作品の中には、日本国内の特別展の際にここから貸し出されたものもあるのだとか。館内をVR(バーチャル・リアリティー)で巡るツアーやバーチャル 流鏑馬 もあり、私も生まれて初めてのVRを体験させてもらいました。ちなみにこの博物館では、日本人スタッフによる子どもの誕生日会プランも人気だそうです。友だちと浴衣を着て日本文化を体験をする誕生日会は、思い出深い一日になるでしょうね。
さて、博物館を隅々まで見学したら、裏の小道を抜けて「魔女の道」(Hexenwegle)へ。エンツ川に面したこの地域は、川が氾濫する被害にたびたび襲われたため、人々は住まいの裏に出入口を造り、災害時は裏口から出入りをしました。この裏通りは「魔女の道」と呼ばれ、家によっては魔女の飾りが吊るされています。かわいらしいものもあれば、不気味なものまでさまざまです。
魔女の道では、魔女たちがお出迎え!
最後は、中心部から橋を渡って市民公園へ向かいましょう。小鳥の小屋や花壇を眺めながら進むと、高架橋を望む広場に着きます。まだ元気が余っている子どもたちは、ここで思う存分アスレチックやボール遊びをすることができますよ。電車が高架橋を渡っていく様子は、思わず写真を撮りたくなるほど、とても魅力的なシーンでした。
おんせん県出身。ドイツ人の夫と、二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。趣味は、糀 を醸して発酵調味料を手作りすること。世界各地に住む日本人の醸し人仲間たちと共に、糀の可能性を研究する「伝統食クリエイター」としても活動。台所はいつも実験室のようになっている。