Hanacell

誰もが等しく迎えられる四畳半 ドイツで伝えた茶の湯の心

先生を囲んで、同門の皆さんと記念撮影先生を囲んで、同門の皆さんと記念撮影

10月中旬の日曜日にシュトゥットガルトのリンデンミュージアムで、毎年恒例の表千家の公開茶会が2部入れ替え制で開催されました。約50席分の前売りチケットは発売開始後間もなく完売。当日は開始時刻前から、茶道や日本に興味のある人たちで会場がいっぱいになりました。参加者は主にドイツ人で、年齢も性別もさまざま。中には日本で茶道を体験したことがあるという人もいました。

開始前の静かな茶室で撮影しました開始前の静かな茶室で撮影しました

お茶会の主催は、同ミュージアムとシュトゥットガルト市内で茶道教室を開いている表千家茶道講師のハイニシュ八恵子先生です。私も門下生の一人として、和装でお手伝いをさせていただきました。まずは門下生による約20分間の茶会のデモンストレーションがあり、同時進行で茶道の歴史や、一つひとつの所作に意味があるということについて、ハイニシュ先生からドイツ語の解説がありました。亭主(茶事を主催する人)が客人に適温の一服を差し上げるための工夫や、招かれた客同士が「(お茶を)お先にいただきます」、「もう一服いかがですか」とお互いを気遣うやりとりがありますが、参加していた人たちは解説を聞いてより理解を深めている様子でした。

続いて、各回4人の希望者が実際にお茶席の客人役を体験しました。一人ずつ扇子を片手に握り、低い姿勢で茶室に入るところから始まります。これは「茶室の中では全ての人が平等」という千利休の教えに基づいて造られた、「躙口( にじりぐち ) 」 という高さ約66センチ、幅約63センチの入り口を通る動作に由来しています。当時はどんなに身分の高い人でも、茶室に入るときは武器や防具を入り口の前で外し、躙り口から頭を下げた姿勢で茶室に入ったのだそうです。客人役の方々は、慣れない畳の上での移動や正座に戸惑いながらも、お菓子とお茶の受け取り方やいただき方など、講師のアドバイスに静かに耳を傾けていました。

客人体験の様子。お茶会を楽しんでくださいました客人体験の様子。お茶会を楽しんでくださいました

観客席にも、お茶席と同じタイミングでお菓子と抹茶碗が運ばれます。茶碗の正面を避けて飲む所作や、返却の際は亭主側に正面を向ける作法など、解説がとてもよく伝わっていたようで、どのお茶碗も正面を向いて返ってきました。「このお茶碗に描かれた模様の意味は何?」や、「抹茶ラテとは違う味がするのね! 思っていたよりもずっとマイルドでおいしかったわ!」など、参加者の方々とちょっとした会話をする時間も。とても好意的な感想と雰囲気に、私も心からうれしくなりました。

必要な道具だけが置いてある狭い茶室で、心のこもった一服を頂戴する穏やかな時間。情報や時間に追われて慌ただしく生活する現代人にとって、これこそ必要なものではないかと、今回のイベントを通して改めて茶道の素晴らしさを感じました。

表千家茶道講師・ハイニシュ八恵子: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください

グリュッツマン 貴子( たかこ )
おんせん県出身。ドイツ人の夫と、二人の子どもと日独いいとこどりの暮らし。趣味は、( こうじ ) を醸して発酵調味料を手作りすること。世界各地に住む日本人の醸し人仲間たちと共に、糀の可能性を研究する「伝統食クリエイター」としても活動。台所はいつも実験室のようになっている。

 
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