ジャパンダイジェスト

暗い冬に彩りを添える音楽

冬至が過ぎ、毎日少しずつ日が伸びています。とは言え、ドイツの冬は天気の悪い日が続き、寒いし暗いですよね。そんな気の滅入りそうな冬は、コンサートへ出掛けてみては? クリスマスやニューイヤー・コンサートなどの大きなクラシック公演はもちろんのこと、そこまで気取らずに聴けるコンサートも、実はたくさんあります。今回は、そんな気軽に行けるコンサートの1つ、ヴュルテンベルク州立博物館(Landesmuseum Würtemberg)の「音楽の休息(Musikpause)」をご紹介しましょう。

この博物館の別館ホールには、数百年の歴史を持つ様々なピアノが展示されています。ここの一番の宝物は、世界でも珍しいダブル・グランドピアノ。1898年に完成した仏プレイエル社製のピアノで、今は世界でたった6台しかないそう。2人の演奏者が向かい合うように座り、それぞれが独立した演奏をすることもできるという珍しい楽器です。コンサート「音楽の休息」では、まさにこのピアノが使われます。演奏はシュトゥットガルト音楽大学の学生によるもので、毎週金曜日の12:30~13:00に開催されています。

ダブル・グランドピアノ
世界に6台しかないというダブル・グランドピアノ

また、同音大の構内でもほぼ毎日のように一般公開のコンサートが開かれています。ピアノやバイオリンのようなメジャーな楽器に加え、打楽器やホルン、チューバ、トロンボーンなど、様々な楽器のコンサート、さらには普段なかなか聴く機会のない、これらの楽器によるソロ演奏もあります。実はこれらは、音楽大学などで度々行われる、学生たちによる練習コンサートなのです。

ホルンソロ演奏
シュトゥットガルト音楽大学の学生によるホルンのソロ演奏

私は以前、ケルンに住んでいたのですが、その頃からよくこのようなコンサートに足を運んでいました。音大のある町なら必ず開かれている類のコンサートです。ほとんどの公演が入場無料で、一般的には4名の学生が教授の指揮の下、約1時間の演奏を披露します。学生にとっては舞台慣れするための絶好の機会であり、観客にとっては日常にささやかな彩りを添えてくれる時間。学生とは言え、最後に登場する演奏者はプロ並みの技術を持つ天才肌の人ばかりです。生演奏をこんなに簡単に楽しめるのだから、やはりドイツは音楽の国。ベートーベンやシューマン、メンデルスゾーン、バッハなど、たくさんの有名な作曲家が生まれた国で聴く音楽は、やはり格別なものがあります。

音大に留学中の日本人学生によるプログラムもたくさんありますので、皆さんもぜひ応援しに行ってあげてくださいね。

ヴュルテンベルク州立博物館「音楽の休息」:入場料3ユーロ
www.landesmuseum-stuttgart.de
シュトゥットガルト音楽大学のコンサートプログラム
www.mh-stuttgart.de/veranstaltungen/veranstaltungskalender

郭さん郭 映南(かく えいなん)
中国生まれの日本国籍。東北芸術工科大学卒業後、シュトゥットガルト造形美術大学でアート写真の知識を深める。その後、台北、北海道、海南島と、渡り鳥のように北と南の島々を転々としながら写真を撮り続ける。
HP: http://kakueinan.wordpress.com/
 
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