形が丸みを帯びていることから、「小さなガチョウ」という名前を持つオカリナという楽器をご存じの方は多いと思います。陶器製で、両手で包み込むように持つため、どこかの民族楽器のような土着性を感じさせるこの楽器。ルーツはマヤ文明とも、あるいはその他の文明にあるとも言われていますが、19世紀にイタリアで改良されて、現在の完成形になりました。
そのオカリナに魅せられ、2012年6月からドレスデンで演奏を続けているのが三宅真紀子さんです。香川県出身の三宅さんは、学生時代にピアノを専攻し、卒業後すぐに音楽療法士の資格を取得。大阪を拠点に、6年半ピアノ講師として順調にキャリアを積んでいました。しかしその後、学生時代を過ごした高松へ戻ることになり、その際にピアノを持ち込むことができなかったため、しばらく音楽から離れた生活を送りました。そして2009年夏、たまたま楽器店に展示されていたオカリナを目にした彼女は、「これだ!」と直感します。
実はそれより10年程前、三宅さんは一度オカリナを購入して一通り吹けるようになったものの、その後すっかり忘れてしまっていたそうです。オカリナとの再会を果たした彼女は早速、オカリナの先生を紹介してもらい、先生が奏でるオカリナの音色に衝撃を受け、レッスン初日に「オカリナ奏者になりたい!」と公言したそうです。
オカリナは、値段が比較的手頃なことから、誰でもすぐに始められる手軽な楽器です。その一番の魅力は陶器ならではの奥深く柔らかい音色ですが、陶器ゆえに正確な音程を取ることが難しく、息遣い1つで音色が変化します。しかも楽器1つ1つに個性があるため、それぞれの楽器に合わせた息遣いを覚えなければならないのが少々難しいところですが、「それもまた魅力」と語る三宅さん。日本では第2のオカリナブームが到来しているようですが、ドイツではまだまだマイナーな楽器です。
聖母教会前のコーゼルパレ内のホールで行われたオカリナ・コンサート
三宅さんは、日本にいた2010年からイベントやパーティーなどで度々オカリナを演奏してきましたが、現在はドレスデンでコンサートやサロン演奏会を定期的に開催。帰省時には幼稚園や小学校などを訪問し、演奏を披露しています。今後はドイツでオカリナの音色や魅力を伝えて楽器としての知名度をアップさせると同時に、ソロ活動だけでなく、オカリナ・アンサンブルを結成して、その音色をより深く楽しむことを目標としているそうです。演奏予定や個人レッスンのお問い合わせは このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください まで。
ドレスデン子ども会で様々な大きさのオカリナを見せ、説明する三宅さん
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/