ベルリン市内を南北に走る地下鉄U6 のメーリングダム駅(Mehringdamm) 周辺は、カレーソーセージの有名店Curry36や人気のケバブ屋などが連なり、平日でも深夜まで人通りが絶えません。この界隈に面白い小劇場があると聞いて、先日足を運んできました。
インビスCurry 36(左)のすぐ横にあるBKA劇場。
この右手に入り口がある
駅から地上に出てすぐのメーリングダム34番地。建物の入り口に掲げられた看板に従って、中庭に続く道を進むと左手にドアがあり、エレベーターで上がった5階が劇場「BKA Theater」の入り口でした。
中に入ると目の前がバーになっており、その奥に舞台があります。いくつかの客席ごとにテーブルが置かれ、ろうそくが灯されていて、なかなか良い雰囲気。それにしても、クロイツベルクの雑踏の一歩入った奥にこんな劇場があったとは、新鮮な驚きでいっぱいでした。
BKA劇場のメインホール Foto: Jürgen Baumann
このBKA劇場とは、Berliner Kabarett Anstalt(ベルリン・カバレット施設) の略。1988年創業の私営劇場で、その名の通り、カバレットやコメディー、シャンソンなど軽妙な大衆劇を上演しています。
もう1つ、この劇場をユニークなものにしているのは、毎週火曜日20時半からの「Unerhörte Musik(聴いたことのない音楽)」という現代音楽のシリーズでしょう。ベルリンは現代音楽が比較的頻繁に取り上げられる環境にありますが、それでも一般的には馴染みの薄いジャンルであることは確か。その現代音楽を毎週定期的に取り上げるシリーズを展開しているのは、ドイツ全土でもここだけだそうです。
この夜、私が聴いたのはハンガリー人によるデュオ。ツィンバロム(エニコ・ジンゼリ)とトロンボーン(アンドラーシュ・フェイェール)という組み合わせは極めて珍しいと思います。しかも、ジョルジュ・クルタークやクリスティアン・ヨストらを除けば、初めて聴く作曲家の作品(新作も含め)ばかり。しかし、内容は大変充実したものでした。ツィンバロムはハンガリーの民族楽器として知られていますが、この日は特殊奏法が駆使されたり、演奏者の歌と混じり合ったりと、古代メソポタミアに端を発するという「世界最古の楽器の1つ」の多彩な響きに浸ることができました。
チケットは当日券12ユーロ(割引8 ユーロ)と割安。コンサートホールでのコンサートと違って、打ち解けた雰囲気の中、ビールを飲みながら音楽を楽しめるのも魅力でした。肩肘張らずに未知の音楽の世界に飛び込んでみたいという方に、ぜひお勧めしたいシリーズです。