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おいしくてやめられない!ジャンクフードと健康

コロナ禍で買い物やレストランに行きにくくなってから、ハンバーガーやスナック菓子を食べる機会が増えました。友だちからは「体に良くない」といわれるのですが、おいしいのでなかなかやめられません。

Point

  • 塩とコレストロールは体の必需品
  • 遠い昔は希少品、今は摂り過ぎが問題
  • 高塩分、糖質過多、高カロリー、偏った栄養
  • 取り続けると、時に肥満や成人病に
  • 味に慣れると、再び欲しくなる不思議
  • 食事は1日の栄養素バランスを考えて

体が必要とする食塩

● 体内は海の環境

はるか昔、生物が豊富なミネラルを含む海を離れて陸上で生活するようになってからも、私たちは体内に海と似た細胞環境を保ちながら生きています。最も重要で欠かせない成分の一つがナトリウム(Na)で、人は食塩(NaCl、Kochsalz)として摂っています。

● その塩が悪者に?

日本人が1日に必要とする食塩の量は推定1.5g(目標量は男性8g未満、女性7g未満、日本人の食塩摂取基準、厚労省)、実際には本来の必要量の何倍もの食塩を摂っていることになります。食塩の摂り過ぎは体のナトリウム調節に負担がかかるばかりでなく、高血圧や動脈硬化の問題と関連します。

体に必要不可欠なコレステロール

● 生命に必要

コレステロールは、私たちの細胞の構築に必要です。性ホルモンや副腎皮質ホルモンの材料として、神経系の保護や、胆汁酸の主要成分として、またビタミンDの生成にも不可欠です。

● コレステロールが悪者に?

体に不可欠なコレステロールも、近年の食糧事情の変化とともに心筋梗塞や動脈硬化との関連で、摂り過ぎが問題となっています(1948年から始まった米国のフラミンガムスタディ)。

ジャンクフードの弊害

● 栄養組成の偏り

炭水化物(糖質、Kohlenhydrate)の比率が高く、高塩分で、高カロリーといった栄養の偏りが大きいものが少なくありません。ジャンクフードは、ファストフード(Fastfood)店で出されるもの、路上で食べられるような食事(Street Food)、調理済の食事(Fertiggericht)を指すことが多いです。具体的にはハンバーガー、ピザ、パスタのほか、カップ麺やスナック菓子も含まれます。

● 食品添加物

工場で作られた調理済の食事を店で温めて提供することもあり、味、香り、色を調整する食品添加物(künstliche Aromastoffe、Farbstoffe、Geschmacksstoffe)や保存料(Konservierungsmittel)が用いられていることが少なくありません。

● 嗜好性を刺激

一度強い味に慣れると薄味のものはおいしく感じられず、同じような濃いめの食品を好んで食べる傾向があります。「健康に問題あり」と分かっているのにやめられないのはこのためです。

● 糖分の多い炭酸飲料も

炭酸飲料も砂糖が多く入っている場合は、高カロリー摂取の原因となります。暑い夏に清涼飲料水を何本も飲んで生じる糖尿病(ペットボトル症候群)も稀にあります。

● フライドポテト、カリーヴルスト、ケバブは?

街角のカリッと揚がったほくほくのフライドポテト(Pommes)、独特の味のカリーヴルスト(Currywurst)は、栄養素性とカロリーのバランスが良いとはいえません。ドナーケバブ(Dönerkebab)は、意外にも日本食の栄養組成とカロリーに最も近いファストフードです。

● ラーメンやおにぎりは?

それだけを食べている場合は、同じように高カロリー、高塩分、栄養組成の観点からは偏りがあるといえるかもしれません。調理に一般家庭と同じような厳選された材料を用いた野菜の入ったラーメンなどは、カップ麺とは一線を画しています。

日本人の適正な栄養素カロリー配分とファストフードの例

炭水化物 たんぱく質 脂質 塩分
適正な配分 * 60% 15~20% 20~25% -
カリーヴルスト 8% 21% 71% 0.9 g
ドナーケバブ 54% 26% 20% 3.2 g
インスタントラーメン 49% 8% 43% 1.1 g
照り焼きチキン
おにぎり
74% 19% 7% 1.9 g
ハンバーガー 46% 20% 34% 1.3 g

* 適正量は渡辺毅著『生活習慣病と食生活』より

ジャンクフードがおいしい理由は?

● 人の嗜好とニーズに合致

糖質、塩分、揚げもの、高カロリーは人の味覚を刺激し、手頃な価格、注文してすぐに入手できるという手軽さも現代のニーズに合致しています。チェーンのハンバーガー店の製品開発では、どのような味が人々の嗜好に合うかの検討が行われています。

● カラメル成分、焦げた味も魅力

糖質を加熱して茶色に変化したものがカラメル成分で、甘みと苦味、独特の香気成分を含みます。アミノ酸と糖質を加熱した場合(メイラード反応)でも同じです。トーストの焦げた部分、コーヒーの焙煎、炒めて褐色になった玉ねぎ、焼いて表面が褐色になったステーキ、おこげなどをおいしく感じるのはこのためです。

ジャンクフードを食べ続けた場合

● 栄養(Ernährung)のバランスが崩れる

できれば毎日、糖質、タンパク質(Eiweip)、脂質(Fette)、野菜(Gemüse)、果物(Obst)のほか、牛乳アレルギーや乳糖不耐症がなければ、乳製品(Milchprodukt)をバランス良く摂ることが大切です。ジャンクフードに頼れば、栄養のバランスが次第に崩れます。

ビタミンやミネラルの欠乏

ジャンクフードには、必要なビタミン類やミネラルなどがほとんど含まれないか、偏っている物が多くあります。長期的にはビタミン不足、ミネラル不足の誘引になりかねません。

● 体重増加と肥満

ジャンクフードは一般に糖質中心の高カロリーのものが少なくありません。ジャンクフードを食べ続けた子どもの肥満化が問題視され、小児への広告を禁じている国もあります。

● 高血圧、糖尿病、脂質異常症の悪化

栄養バランスに欠けた高カロリー食は成人病の誘発に繋がったり、増悪させる可能性が指摘されています。

それでもジャンクフードが食べたい……!

● 複数の食品を組み合わせて

同じジャンクフードでも、野菜サラダや野菜のトッピングを加えるなどの工夫をすれば、栄養バランスを少しでも改善することができます。

● 甘い清涼飲料水を避ける

砂糖の多い甘い清涼飲料水はできるだけ避けましょう。人工甘味料を用いたダイエット飲料で下痢をする人もいるので、○○ライト、○○ゼロは必ずしも安全というわけではありません。水やお茶を積極的に摂るように心がけることが大切です。

● 食事を残して持ち帰る

お腹が空いていると、飲食店でついいろいろなものを注文しがちです。多すぎたと感じたら、持ち帰るという選択肢もあります。ラーメン+ライスのような麺とごはんの組み合わせは糖質の摂り過ぎにつながりかねないので、ライスの代わりにサラダにするなどの工夫をしましょう。

自分で料理をする人は

● 栄養バランスを重視して

1日の献立に野菜、果物も取り入れて、栄養素のバランスの取れた食事を摂りましょう。ビール片手につまみとごはんだけ、あるいは買い物の時間がなくてカップ麺だけという人もいるかもしれませんが、ビタミン剤を飲み始める前に、栄養バランスをもう一度振り返ってみることも大切です。

● コロナ禍の冬を前に

糖質、タンパク質、脂質の栄養バランスの取れた適度なカロリー量の食事は、健康生活の第一歩です。歩く、走るなどの運動も合わせて、この冬に備えましょう。

ファストフードを食べる時は
・カロリーが多いことを念頭に
・野菜を合わせて食べる
・甘い清涼飲料水、デザートは避ける
・頻回には利用しない
・スナック類は途中でやめる勇気を
・日頃から薄味に親しむ

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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