ドイツではコロナ規制もなくなり、コロナ禍前の生活が戻ってきました。ワクチンは今後も受けた方が良いでしょうか? また夏のドイツでは、ヴェスぺ(スズメバチ)やマダニなどの虫に刺されることがあると聞きます。虫対策や予防法を教えてください。
Point
- 7日間指数も死亡者数も減少
- 今の死亡者のほとんどは60歳以上
- 60歳以上は秋にワクチンのブースター接種も
- ヴェスペは肉食で攻撃的
- マダニによるダニ脳炎はワクチン接種が有用
- 夏の旅行には家庭薬も忘れずに
新型コロナウイルスの今
● 7日間指数は1.3
7日間指数(人口10万人当たりの直近7日間の感染者数)は、昨年7月の815人から現在は1.3人(6月28日現在)にまで下降しています(ロベルト・コッホ研究所、RKI)。感染の脅威がなくなり、コロナ検査を受ける人が少なくなったことも関係しています。
● 7日間入院指数も低下
重症感染の指標である、人口10万人当たりでみた直近7日間の新型コロナ感染症による入院者数(7日間入院指数)も、昨年7月の13.1人から0.29人まで下がっています。各年齢層も同じ傾向で、重症の感染症自体がなくなりつつある状況を示しています。
● 死亡者数も減少、ほとんどが60歳以上
今年の第25週(6月19~25日)の新型コロナ感染による死亡者数は124名でした。年明け第1週(1月2〜 8日)の1226名の10分の1にまで減少しています。一方で、年齢層でみると60歳以上がほとんど(96%)で、高齢者の感染は今なお生命に関わることを示しています。
コロナワクチンはもう不要?
● 60歳以上は秋頃に追加接種を推奨
ドイツの予防接種委員会(STIKO)は、①60歳以上、②新型コロナに感染するリスクが高い、③基礎疾患があり重症化のリスクが高い人は、前回COVID-19ワクチン接種から1年以上の期間を開けて、年に1度(秋頃)の追加(ブースター)接種を推奨しています(5月25日現在、RKI)。
● 18歳以上は3回以上の免疫の機会を
18歳以上の全ての人に、ワクチン接種や感染によって3回以上のコロナ免疫を作る機会(うち2回以上はワクチン接種によるものとする)を推奨しています(RIKI 5月25日)。
● 追加接種の時期は秋
特に支障のない場合のブースター接種は、秋頃が望ましいとされています(RKIのEpi Bull 21/2023)。これは今までの新型コロナ感染の増減推移から、春夏に比べて秋冬にかけて感染者数が増えるためです。ただし、60歳未満の健康者(合併症や基礎疾患がない)および健康な妊婦へのブースター接種は、特に勧められていません。
マスクは必要ですか?
● マスクの着用義務は解除
ドイツ国内でのマスク着用義務はありません。高齢者や感染リスクの高い人が大勢の人混みの中に長い時間滞在するような場合、マスクは感染の可能性を少しでも減らすために有用です。
● 洗わず同じマスクの着用は?
きちんと消毒することなく同じマスクを繰り返し使用することは好ましくありません。マスク内側は高湿適温で唾液も付着しており、細菌繁殖の原因にもなります。
夏の虫対策:ヴェスペ(Wespen、スズメバチ)
● 今夏は少ない?
屋外での飲食中にやってくるヴェスペはドイツの夏の風物詩。しかしヴェスペは肉食で攻撃性があり、刺されると鋭い痛みだけではなく、時にはアレルギー反応で生命に関わることもあります。昨年はヴェスペが異常に多い夏でしたが、今年は春の冷え込みがヴェスペの巣作りに適さず、昨年ほど増えないとの予想も(6月のSAT.1番組の特集)。
● ヴェスペを殺すと罰金あり?
ヴェスペは種類によっては自然保護と種族保護のために、むやみに巣を除去したり殺したりすると罰金(Bußgeld)を課せられる可能性があります(連邦自然保護法[BNatSchG]§39-1)(正当な理由がある場合の例外あり)。身を守る工夫が必要です。
● ヴェスペを寄せ付けない工夫
食品(特に肉類)にはふたやカバーをするほか、食べ残しはテーブルに置かないようにしたり、アイスクリームや菓子類を食べた後には口や手を拭いたりするようにします。甘い香りのする香水や色の着いた服も要注意(2018年のMobilitätsmagazin誌)。さらにヴェスペの嫌がるコーヒー粉で香をたく、レモンやオレンジのスライスを並べる、巣に似せた茶色の紙を丸めて吊るすなどが効果的であることも(6月のSAT.1番組の特集)。
● アナフィラキシーショックに注意
ヴェスペに刺されたときの強い痛みは、すぐに冷やすことで次第に楽になります。一方、ヴェスペの「毒」(化学物質)でアレルギー反応が強く出る人もいます。刺された後に息切れ、めまい、体のむくみなどが認められる場合は、救急医(112)に連絡してください。
● ヴェスペの針
ヴェスペをはじめ、ハチの針は産卵管またはそれが変化したものです。雌にしかないため、雄が刺すことはありません。また、ミツバチと異なりヴェスペは何度も刺すことができます。
ドイツの夏に見かけるハチ類ヴェスペ Wespe |
ビーネ Biene |
フメル Hummel |
ホルニッセ Hornisse |
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和 名 | スズメバチ | ミツバチ | マルハナバチ | モンスズメバチ |
大きさ | < 14mm | < 14mm | < 21mm | < 24mm (大きい) |
体 毛 | なし | 部分的 | 毛深い、黒色 | 部分的 |
性 格 | 攻撃的 | 穏やか | 穏やか | 攻撃的 |
用 途 | - | 蜜の採取 | 花粉媒介 | - |
夏の虫対策:ダニ脳炎(初夏脳炎、FSME)
● 地球温暖化に伴いリスク地域が拡大
ドイツでの感染リスク地域(Risikogebiet)は、これまで主に南ドイツの森林地帯でした。しかしここ数年は、ドイツ北西部のノルトライン=ヴェストファーレン州でもダニ脳炎の発症が報告され、同州にある一部の地域はRKIのリスク地域リストに加えられました。
● 予防はワクチン接種と服装
ダニ脳炎を媒介するマダニ(ツェッケ、Zekke)は皮ふからの二酸化炭素を感知して飛びつくので、皮ふを直接噛まれないためにリスク地域の森林内を歩く際は露出の少ない服装を心がけます。感染していったん発症すると本質的な治療法はないため、ワクチン接種による予防が大切です(本誌721号参照)。
● ダニ摘出用ピンセット(Zekkezange)
マダニは膝の裏など柔らかい皮ふの部分に、数日間も噛み付いて吸血します。8本の足をがっしり皮ふに食い込ませるため、専用のピンセット(Zekkezange)を用いてひねりながら引き抜きます。
夏の長旅に便利な薬(Reiseapotheke)服用中の治療薬
● 服用中の治療薬
旅行には日常服用している治療薬を忘れないようにしましょう。旅先での薬局がいつも開いているとは限らず、処方箋が必要な薬剤の入手は医療機関受診なしには困難です。
長旅であると便利な薬
● 鎮痛薬=解熱薬
パラセタモール(Paracetamol 500mg)、イブプロフェン(Ibuprofen 400mg)など。痛み止め(鎮痛薬)と熱冷まし(解熱剤)は、同じ一つの薬でどちらも作用があります。
● 胃腸薬
整腸剤(下痢止め、Mittel gegen Durchfall)、腹痛止め(Bauchschmerzen、ブスコパン [Buscopan ®])、吐き気止め(Mittel gegen Übelkeit、ヴォメックスA[Vomex A ®]など) のほか、慢性便秘の方は便秘薬(Mittel gegen Verstopfung)も。
● けがや虫刺されの治療用
けがをしたり虫に刺されたりしたときの軟こう(Salbe zur Wundheilung/Insekenstich)、カット絆創膏セット(Pflaster)、消毒薬(Wunddesinfektionsmittel)のほか、防虫スプレー(Insektenschutzmittel)も。
● 海や山に行く人は
海や山など紫外線の強い場所では、日焼け止めクリーム(Sonnencreme、Sonnenschutzcreme)を忘れずに。口唇を紫外線から守るリップクリーム(Sonnen- Lippenstift)も有用です。