ジャパンダイジェスト

年代別の健康診断 チェックポイント

30歳になったので、きちんと健康診断を受けたいと思っています。特に女性の場合は乳がんや子宮(けい) がんが心配ですが、どのような内容の検査を受けたらよいのか教えてほしいです。また子どもが生まれたら、健診はどのくらいの頻度で行くのでしょうか?

Point

  • ドイツの乳幼児健診はU2~U9の無料健診
  • 子宮頸がんは20~30代から増え、40代からピーク
  • 日本女性の乳がんのピークは40代後半
  • 30代は将来に備えての健診
  • 40代は病気が顕在化する世代
  • 50代はがん、心・脳血管障害に注意
  • 高額検査は事前に保険会社に問い合わせを

ドイツの健康診断(Vorsorgeuntersuchung)

ドイツの公的保険による健康診断

乳幼児健診、婦人科検診、乳がん検診などを除くと、公的保険でカバーされる検査内容は日本に比べて限られています。プライベート保険でも契約の内容により異なります。

IGeL(イーゲル)による追加検査

健康診断を受ける際に、公的保険でカバーされない検査項目を自費負担(IGeL、Individuelle Gesundheitsleistungen)にて追加可能です。例えば、前立腺がん早期発見のPSA検査、35歳未満の皮膚がん検診などが組み合わせられます。詳しくは家庭医(Hausarzt/-ärtztin)に相談しましょう。

乳幼児期の健診(Kinderuntersuchung)

ドイツの子ども健診(U2~U9)

子ども健診冊子(Kinderuntersuchungsheft)に則り、U2(3~10日)~ U9(5歳~5歳4カ月)までの9回の健診を無料で受けられます(Uは健診を意味するUntersuchungの略)。ワクチン接種記録は別途、黄色のワクチン手帳を用います。子ども健診はさらにU10(7~8歳)、U11(9~10歳)、そして次項のJ1、J2健診へと続きます。

青少年期の健康診断

心身の成長が著しい時期

女児の身長は9歳半~13歳頃、男児は12歳~17歳に大きく伸びます。性に関する知識、相談も必要となる世代です。情緒をコントロールする脳の領域も発達、成熟します。また自身の性の同一性の問題に気付き始めたり、国際結婚家庭のお子さんでは自身のアイデンティティーを考え始める時期とも重なります。

J1(12~14歳)の健診

健康保険の適応となるJ1健診では、身長、体重、予防接種の状況、血液・尿検査のほか、拒食症や肥満、性に関する疑問や避妊、薬物乱用や喫煙、家庭や社会環境について相談ができます。

J2(16~17歳)の健診

思春期障害や性欲障害の有無、脊柱 側彎 (そくわん) 症、甲状腺腫の有無、糖尿病予防に重点を置いています。必ずしも保険が適応されるとは限らない健診ですが、本人(子ども)が希望すれば思春期専門医師と内密に話し合うこともできます。

20代の健康診断

婦人科検診

20歳以上の女性は日本でもドイツでも子宮頸がん(Gebärmutterhalskrebs)検診の対象となっています。日本人の子宮頸がんは20~30代から増えて、40代からピークとなります。

ヘリコバクター・ピロリ(H.Pylori)感染の検査

ピロリ菌感染は、5歳前の幼少時からと推測されています。両親のいずれかがピロリ菌陽性の場合は一度検査してみましょう。

貧血、低血圧、痩せ過ぎも

立ちくらみ、めまい、疲れやすいという女性では、低血圧や貧血がないか、痩せすぎていないか調べてみましょう。BMI(体重 kg /[身長 m x 身長 m])が18.5未満を「低体重」と定義しますが(WHO、日本肥満学会)、20代の日本女性の5人に1人が「低体重」であることが示されています(2017年「国民健康・栄養調査」)。

30代の健康診断

将来の異常に備えた健診

生活習慣病の予備軍ではないか、肥満指数(BMI)、血圧、血中脂質(コレステロール、中世脂肪)、肝機能、尿酸値などを検査します。肝機能障害が認められる場合は、アルコールの関与や脂肪肝の有無などを調べます。

女性は乳がん検診も念頭に

ドイツでは、乳がん(Brustkrebs、Mammakarzinom)検診として、乳房の触診は30歳から始まりますが、マンモグラフィー(Mammographie)は50歳からが対象です。日本人の乳がんは30代後半から増加し始め、40代後半から50代前半にピークになりますので、家族歴のある女性は乳がん検診も考えてみましょう。

40代の健康診断

病気が顕在化してくる年齢

脂肪肝、高血圧、脂質異常症、耐糖能低下(糖尿病予備群)などの異常が顕在化してくる年齢層です。心電図検査、大腸がんスクリーニングのための便潜血反応(ヒトヘモグロビン法)が勧められます。

腹部超音波検査

肝臓、胆のう、胆管、膵臓(すいぞう) 、腎臓、脾臓の形態学的異常、腹部大動脈の硬化性病変の有無が分かります。痛みなしに短時間で腹部内の病気の有無を検査できます。

胃の検査

胃バリウム検査(Magendurchleuchtung)と胃カメラ(Gastroskop)があります。ヘリコバクター・ピロリ菌による萎縮性胃炎(絨毯の毛がすり減ったような状態)が指摘されている場合は、胃カメラ検査による経過観察が有用です。料金が安くないため、症状、所見を伴わない胃カメラ検査が健康保険でカバーされるのか、保険会社に事前に問い合わせると良いでしょう。

50代の健康診断

命に関わる病気も

がん、心臓病、脳血管障害など生命に関わる病気の罹患率が増えてきます。不整脈が時々現れる人は24時間心電図(ホルターEKG)が有用です。くも膜下出血となる脳動脈瘤の発見には、頭部MRI(ドイツではMRT)による血管描出が有用ですが、保険が適応されないことが少なくありません。

前立腺がんのマーカー、PSA

男性の場合は、前立腺がん(Prostatakrebs)、前立腺肥大(Prostatahypertrophie)、前立腺の炎症にて血中PSA値が上昇します。高値を指摘されたら一度泌尿器科(Urologie)を受診しましょう。

高齢者の健康診断

がん、心臓病、脳卒中

60歳以上では、3大死因のがん(Krebs)・心臓病(Herzkrankheit)・脳卒中(Schlaganfall)の発症を防ぐ観点から、健康診断や検査を行います。

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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