今年4月にドイツに引越してきました。1歳と3歳の子どもがいます。日本できちんと予防接種を済ませてきましたが、ドイツの小児科で未完了と言われてしまいました。日本とドイツでは接種内容が異なるのでしょうか? ドイツの乳幼児健診について詳しく教えてください。
Point
- 乳幼児健診U2~U9は公費負担
- 小児科医、青少年専門医、家庭医で健診
- 予防接種はSTIKO推奨カレンダーに従って
- 日本と接種項目、スケジュールが異なる
- ドイツは混合接種が主体
乳幼児健診(Kinderuntersuchung)
ドイツの乳幼児健診U2~U9
黄色の子ども健診冊子(Kinderuntersuchungsheft)にのっとり、U2(多くは生後2~9日目)~ U9(5歳)までの9回の健診を無料で受けられます(Uは健診を意味するUntersuchungの略)。初診時に子ども健診冊子をもらい、記載項目に従って診察と検査を受けます。乳幼児健診は、小児科医(Kinderarzt/-ärztin)、青少年専門医(Jungendarzt/-ärztin)または家庭医(Hausarzt/-ärztin) で受けることができます。
受診する年齢「Lebensjahr」の解釈は?
乳幼児健診および予防接種では、一般的な年齢を表す「Alter」ではなく、「Lebensjahr」(日齢、週齢、月齢も同様)で区切られていることが少なくありません。例えば、「1. Lebensjahr」は生後から1歳誕生日の前日まで、「3. Lebenstag」(生まれて3日目)は生後2日を意味します。
乳幼児健診のスケジュール
(括弧内は理想的な範囲)
ドイツの子ども健診(U2~U9)
出産直後に 分娩 した医療施設で行います。
U2(3. bis 10. Lebenstage)※多くは生後2~9日目
軽度の奇形や出生時の損傷の有無をチェックします。保護者に便色カードが渡され、胆道系の異常がないか診察するほか、血液凝固のためのビタミンKの投与を行います。一般的に出産した医療施設で行われます。
U3(4. bis 5. Lebenswoche)※生後1カ月前後
小児科(あるいは家庭医)での最初の健診になります。発育の程度、聴覚、目の異常、股関節脱臼の有無を調べ、最初の6種混合ワクチンの接種(後述)も行われます。
U4(3. bis 4. Lebensmonat)※生後3カ月前後
体重が増えているか、目で物を追いかけられるか、おもちゃをつかめるか、斜視の有無などをチェックします。
U5(6. bis 7. Lebensmonat)※生後6カ月前後
寝返りができているか、手を伸ばしておもちゃを手でつかめるか、呼びかけに反応するか、笑えるか、などをチェックします。2回目の6種混合ワクチンの接種(後述)を受けます。
U6(10. bis 12. Lebensmonat)※1歳
ハイハイできるか、足を伸ばして自由に座れるか、自力で立ちができるか、 喃語 (意味のない言葉)を話せるか、呼びかけへの反応などをチェックします。3回目の6種混合ワクチンの接種(後述)を受けます。
U7(21. bis 24. Lebensmonat)※2歳
二語文を作れるか、身近な物の名前を言えるか、簡単な指示を理解できるかを確かめます。視力検査や身体機能の検査、乳歯、精神発達のチェックが行われます。
U7a(34. bis 36. Lebensmonat)※3歳
U7とU8の間の健診です。乳歯、口、顎の異常、アレルギー疾患、肥満、言語発達の遅れ、社会性や行動障害の有無をチェックします。
U8(46. bis 48. Lebensmonat)※4歳
姿勢、背骨、細かな運動能力、名前を言えるか、「なぜ」の質問ができるかなど、精神的な成熟、社会性の活動がチェックされます。
U9(60. bis 64. Lebensmonat)※5歳前後
5歳前後までに行われる全10回の最後の検査。血圧、視力測定、姿勢や運動機能の発達の評価、精神的、情緒的、社会的発達の検査も行われます。
乳幼児の予防接種
STIKO推奨の基本接種項目
STIKO(ロベルト・コッホ研究所のワクチン常設委員会)は、幼少時に受ける13種類の予防接種 (I mpf ung)を挙げています。義務ではありませんが、ドイツの幼稚園や小学校への入園、入学時に必要になります。
6種混合の不活化ワクチン
破傷風(Tetanus)、ジフテリア(Diphtherie)、百日咳(Keuchhusten)、ヒブ菌(Hib)、ポリオ(Kinderlähmung)、B型肝炎(Hepatitis B)の6種類の不活化ワクチンは混合製剤。1歳前に3回の接種を完了させます。ロタ(Rotaviren)、肺炎球菌(Pnuemokokken)、髄膜炎C株(Meningokokken C)に対するワクチンはそれぞれ別に接種されます。
4種類の生ワクチン
麻疹(Masern)、風疹(Röteln)、おたふく風邪(Mumps)、 水疱 瘡(Windpocken)の生ワクチンは4種混合(MMRV)製剤、あるいは前者3種の混合ワクチン(MMR)製剤と水疱瘡ワクチンを別々に、2歳前までに2回の接種が行われます。
ワクチン接種の黄色い手帳
黄色い手帳(Impfausweise、Impfpass)、あるいは前述の子ども健診冊子に製剤ロット番号などの接種情報を記載します。
日本から転居した子ども
厚労省の予防接種スケジュールと異なるため、日本での接種をきちんと進めてきても、ドイツの小児科で接種未完了と指摘されることがあります。また、日本脳炎とBCG接種はドイツの推奨項目には含まれません。
乳幼児健診で多い質問
夜泣き(nächtliches Weinen)
夜になると、泣き止まないことがあります。赤ちゃんを叱ったり体を揺さぶったりするのは避けてください。親(特に母親)の感じるストレスへの対処が大切です。
おむつかぶれ(Windelausschlag)
赤ちゃんの便は柔らかく排便の回数が多いため、おしりがかぶれることも。おむつを取り替え、ぬるま湯で洗い流し(ガーゼでこすらない)、乾燥させましょう。ベビーパウダーのほか、必要に応じて軟こうを用います。
指しゃぶり(Fingerlutschen)
自然に改善することが多いため、3歳ぐらいまでは見守って。不安や緊張をほぐす行動と考えられます。
眠る前の授乳が続く
1歳前後を目安に離乳することが多いものの、スキンシップを求めている子どももいます。1歳半以降の母乳は虫歯と関連するという意見もあるため、夜の歯磨きの習慣をしっかりつけてください。
歯が生えるのが遅い?
歯の生え方には個人差が大きく、1歳で生えていなくとも基本的に異常とはいえません。
言葉がまだ出てこない
2歳頃までは言葉が出ないことが少なくありません。兄弟や友達が影響することも。3歳になっても言葉を理解したり意味のある言葉を話したりせず、行動にも気になることがあれば、小児科の先生に相談しましょう。