自律神経って何ですか?
自律神経はヒトの循環器、呼吸器、消化器、発汗、膀胱機能などの植物性機能をつかさどる末梢神経の1つです。自律神経には、交感神経と副交感神経という異なった作用を持つ2つの神経系があります(表1)。筋肉の運動をつかさどる運動神経、痛みを感じる感覚神経は自律神経とは別の末梢神経です。
交感神経 | 副交感神経 | |
いつ | 闘争や逃走時 | 安静時 |
主な働き | 脈拍数を増やす 皮膚の血管を収縮させる 血圧を上げる 運動時に骨格筋への血流 を増やす 瞳孔を広げる 血糖を上げる | 脈拍数を減らす 皮膚の血管を拡げる 血圧を下げる 胃腸の運動を行う 唾液の分泌を刺激する 膀胱の排尿 |
いわゆる「自律神経失調症」とは?
交感神経と副交感神経のバランスに関連する様々な症状「不定愁訴(ふていしゅうそ)」 があるものの、検査では明らかな身体的、精神的な病気が見つからない時に、日本で用いられるやや曖昧な「診断名」です。万国で「病名」として認知されているわけではありません。また、自律神経系の機能は起立性低血圧(急に立ち上がった時に収縮期血圧が20mmHg以上下降)の有無、心電図上の心拍の変動率などの検査によって調べますが、自律神経失調症ではこれらの検査からの異常はみられません。一方、欧米で自律神経の機能障害(Dysautonmia)といった場合、明らかに病的な交感神経、副交感神経系の障害を指します。
「自律神経失調症」の症状は?
代表的な症状は、立ちくらみ、のぼせ感、顔のほてり、発汗、動悸、めまい、だるさ、耳鳴り、頭重感、吐き気、便通異常など。症状は時と場合によって変わり、必ずしも一定していません。このように書くと、誰にでも当てはまりそうな気すらしてきます。(図1)
図1 自律神経失調症の訴え
「自律神経失調症」に関連する要因は?
・ストレス
自律神経は意志とは関係のない不随意な機能をコントロールしています。しかしその一方で、緊張した時の動悸や便意、過度のストレスからくる胃痛など、心の動きとも密接に連動しています。その意味では、自律神経の機能失調ではなく、機能が敏感に反応している状態と言えるかもしれません。
・運動不足
急に立ち上がった時、心臓の働きの増加と血管収縮によって、血圧が一定に保たれるように瞬時の調整を行っているのも自律神経です。一日中同じ姿勢で仕事をしたり、全く運動を行わない状態が続くと、交感神経と副交感神経のバランスや切り替えの刺激がなされません。
・更年期
ホルモンと自律神経系は密接な関係があり、どちらの総合中枢も脳の視床下部というところにあります。更年期の女性は、卵巣のエストロゲン分泌が減り、結果として視床下部を介して脳下垂体というところから性腺刺激ホルモンが大量に分泌されます。この時に視床下部の自律神経の中枢も影響を受けます。このため更年期初期の女性には、顔ののぼせ、ほてり、発汗などの「ホットフラッシュ」と呼ばれる症状が多くみられます。
「自律神経失調症」とほかの病気
自律神経失調症と似た症状は、「うつ病」や、時に「悪性腫瘍」でも出ることがあります。また、「糖尿病」の慢性合併症の1つに、自律神経機能の障害があります。しかし、症状は無自覚なことが多く、「自律神経失調症」のような多彩な愁訴が出ることはあまりありません。「心身症」は心理的、社会的な要因が病気に関与する身体の病変です。
「自律神経失調症」と言われたら
更年期の始まりなのか、過大なストレスが原因なのか、運動不足が関係しているのか、何かほかの病気が隠れているのか、心身症の身体的な表れなのか、それとも原因不明の体調不良なのか・・・・・・。原因(表2)も症状も1人ひとり違っています。原因をつきとめ、その分野の専門家の治療を受けることが大切です。
自律神経機能のトレーニング
日常の自律神経機能のトレーニングとしてお薦めするのは、有酸素運動。これは交感神経系と副交感神経系の両方に働きかける療法として効果的です。体表の血管を拡げたり、縮めたりを繰り返すサウナ風呂も有効な刺激法と言えます。場所をとらない簡単な方法としては、でんぐり返しや逆立ち。この運動によって血流分布を調整する自律神経系を刺激することもできます。但し、急に行って具合を悪くしたり、けがをしないよう注意が必要です。
交感神経と副交感神経のバランスに注意
寝不足、悩みすぎ、過度の苛立ちなど、ストレスの多い不規則な生活が続くと、交感神経系のみが刺激された状態に。運動不足、連日の過食、リラックスと称した怠惰な生活を続けると、逆に副交感神経系のみが優位になってしまいます。毎日、交感神経系と副交感神経系を適度に刺激し、若々しい健康な体を保ちましょう。
・ 運動不足
・ ストレス
・ 更年期のホルモン・バランスの変化
・ 神経の細やかな性格
・ 不規則な生活