口臭の分類
「口臭(Mundgeruch)」とひと口に言っても、他人にも不快感を与える「真性口臭」、自分は口臭が気になるものの実際には口臭がない「仮性口臭」、自分の口臭が気になり日常生活にも差し支える「口臭恐怖症」に分けられます。今回は主に「真性口臭」について話しましょう。
口臭の強い時間帯は?
口臭は起床時が最も強く、次に昼食前、夕食前というように空腹時に強くなり、食事をすると軽減します。早朝の口臭は起床後すぐに口内をうがいすることで減らすことができます。また、午後のお茶と糖分の入ったケーキも口臭予防の観点から効果があると言われています。
口臭の原因
慢性的な口臭の原因のほとんどが、舌苔(ぜったい)や歯周炎など口腔内にあります。さらに、 耳鼻科疾患、肺や気管支の病気、糖尿病や肝臓病に伴なう口腔以外からくる口臭もあります。特に原因の見当たらない生理的な口臭、アルコールやニンニクによる一過性の口臭もあります。口臭の元は、口腔内に潜む細菌から作られる硫黄化合物のガスなのです。
表1 口臭の原因部位 | 合併症 |
口腔内の異常 | 舌苔、歯周病、歯石 |
耳鼻科の疾患 | 蓄膿症、喉の炎症、膿栓 |
全身の病気 | 重篤な肝臓病や糖尿病 |
食事や嗜好品 | ニンニク、タバコ、アルコール |
舌苔と口臭
舌苔とは文字通り舌の表面に白い苔が生じたような状態を指します。この白いものは、口の中の粘膜細胞が剥がれ落ちてたまり、腐敗したものです。最大の口臭源で、口臭の60%はこの舌苔によるものと言われるほど。口内の洗浄を長時間怠ったとき、口内の乾燥が著しいとき、アルコールの飲みすぎや不規則な生活の後、体調が悪いときなどに付着しやすくなります。手術後の患者や寝たきりの患者にも口内の洗浄不足から舌苔がみられることがあります。舌苔からは硫化水素という硫黄化合物のガスが発生します。
図1 口臭の原因となる舌苔とは?
歯周病や歯垢と口臭
歯周病(Parodontitis)は歯の根元が腫れる歯肉炎と、周りにも炎症が広がった歯周炎に分けられます。原因は歯垢(しこう、Zahnbelag)や歯石(Zahnstein)の中にいる細菌です。歯垢は食物の粕や細菌、カルシウムなどからなる歯の付着物で、プラークとも呼ばれます。歯垢は、はじめの内は歯ブラシで磨くことで取り除けますが、放置すると石のように固くなり歯石と呼ばれるようになります。除去も簡単ではなくなりますし、歯周病の原因にもなります。歯垢・歯石内の細菌が炎症部位からメチルメルカプタンという硫黄化合物を発生し、口臭として察知されます。定期的に歯医者さんで歯石の除去を行うことは、歯周病の予防だけでなく口臭対策としても役立つでしょう。
図2 口臭の原因となる歯周病
ドライマウスと口臭
口腔内が乾燥すると口臭が強くなることが知られています。これは主に、口腔内の細菌を洗い流す唾液が減少することによります。口を開けて眠る癖のある人も、口の中が乾燥し、起床時の口臭の誘引になりかねません。
タバコと口臭
往年のヘビー・スモーカーからは、独特の口臭が排出されることがあります。歯や肺内に付着したタールのにおい、タバコによるドライマウスの影響、それに歯周病が加わった場合などです。愛煙家の方は気を付けましょう。
食事と口臭
ニンニクを食べると、体内でアリルメチルスルフィドなどの硫黄化合物、玉ねぎやニラを食べた場合にはアリシンという化合物が生成し、翌日呼気を介して悪臭として排出されます。二日酔いの場合はアルコールが分解されてアルデヒドという物質に変わり、それが呼気に混じって口元を覆います。
内科の病気と口臭
重度の肝臓病になるとアンモニアの処理ができずに独特の口臭(肝性口臭)を出し、糖尿病の場合は、高血糖によってケトン体の処理ができなくなり、ケトン臭と呼ばれる口臭を伴うことがあります。しかし、いずれも健康な人が通常の状態で生ずるものではありません。また、胃が悪いと口臭がひどくなると思われがちですが、実際には胃からの匂いではなく、舌苔が口臭の原因になっています。一方、逆流性食道炎では胃液が食道内に逆流してくるため、酸味がかった口臭が排出されることがあります。
口臭の自己測定の仕方は?
口を覆った両手の中に息を吐き出して臭う方法が一般的です。ほかの方法としては、空のコップの中に息を吐き出した後、すぐに紙などで蓋をし、1~2呼吸ほどの間をおいてから臭う方法があります。
市販のうがい液の効果はありますか?
多くのうがい液は使用後の爽快感を目的としているため、舌苔や歯垢・歯石中の細菌から出るガスを減らす作用はそれ程期待できません。一方、塩化亜鉛の入った洗口液は菌を減少させて揮発性の硫黄化合物を減らす効果もあるようです。