ジャパンダイジェスト

皮ふの病気に関するドイツ語

日本との環境の違いからか、痒みを伴った乾燥肌などの肌トラブルが気になることがあります。普段の生活で遭遇することの多い皮ふの病気と、病院で使われるドイツ語について教えてください。

乾燥肌(Trockene Haut)

 日本と比べて湿度の低いドイツでは、日本と同じように過ごしていても皮ふがカサカサし始め、次第に痒みを生じることがあります。皮ふの乾燥は、皮ふを保護している皮脂が減少し、皮ふの水分が減って、表面の防御構造が壊れてしまうことによって起こります。乾皮症、皮ふ乾燥症とも呼ばれます。特に冬の間に顕著に現れ、空気の乾燥や冷たい外気、さらに入浴時の石けんの使い過ぎなどが原因となります。入浴後は保湿クリーム(Feuchtigkeitscreme)によるスキンケア(Hautpflege)を忘れずに。

表1 ドイツでは皮ふの乾燥に注意しましょう
予防のポイント
乾燥肌は皮ふを守る皮脂が失われて生じます
空気が乾燥し、気温が下がる冬に多くなります
石けんの使い過ぎも関係しています
入浴後の保湿クリームが効果的です

図1 皮膚が乾燥すると刺激が入りやすくなる

いぼ(Warze)

「いぼ」は、ヒト乳頭腫ウイルスの皮ふ感染によって起こります。ウイルス性疣贅(ゆうぜい)とも呼ばれます。ウイルス感染のため、無理に引っ掻いたりすると周囲に拡がることも。除去には液体窒素による凍結、電気焼灼、外用剤などが用いられますが、自然に治ってしまうこともあります。

水いぼ(Dellwarze, Molluske)

伝染性軟属腫ウイルスの感染によって生じるのが、「水いぼ」です。肌と肌が直接触れ合ったり、プールでビート板やタオルを共有したりすることで感染する、子どもに多い皮ふ病です。中央が少し凹んだ水様光沢のある小丘疹で、手足のほか、体のどこにでもできます。ピンセットなどで摘むと、中から白っぽい粥のような軟属腫が圧出されます。掻くことによりウイルスが周囲の皮ふに感染するので注意。特別な治療をしなくても、このウイルスに対する免疫が成立すると自然に治癒します。

表2 良く用いられる用語
用語ドイツ語(例)説明
湿疹 Ekzem 皮ふ炎と同義語。
皮ふ科の病気として最も多い
丘疹 Papel、Knötchen 直径1cm以下の部分的な盛り上がり
水疱 Bulla、Blase 被膜に包まれ、
水様性の内容物を含む盛り上がり
白斑 Weißfleckenkrankheit メラニンが減少し、白く見える部分
紅斑 Erythema 毛細血管が拡張し、赤くなった部位
紫斑 Purpura 赤血球が漏れ出て青くなった部分
色素斑 Pigmentation メラニンの沈着による
黒〜褐色〜青色の部分
蕁麻疹 Urticaria 限局性の浮腫、扁平に盛り上がり、
痒みを伴なう

たこ(Hornhaut、Hornschwiele)

胼胝(たこ)は皮ふの一部に持続的かつ機械的な負荷が掛かり、角質の部分が厚くなる(肥厚した)状態を言います。テニス選手の手にできる「たこ」、筆記用具を長時間使ってできる「ペンだこ」、先の尖った靴を履いて足にできる「たこ」など様々です。

魚の目・鶏眼(Hühnerauge)

足の裏などの角質層が、皮ふの内側に向かって肥厚していく現象。角質部の芯が楔状(けつじょう)または円錐状になることが多く、圧迫すると強い痛みを生じます。魚の目は、「たこ」の角質がさらに厚みを増してできるとされています。魚の目の芯を取り除くことにより、治療します。

下肢の静脈瘤(Krampfader, Varikose)

ふくらはぎや、すねの部分の血管が腫れてボコボコとした感じに浮き出て見える状態です。男性より女性に多く、立ち仕事が続いたとき、または妊娠や出産を契機に出現することがあります。静脈内の血液の逆流を防いでいる弁の機能が悪化して起こります。「クモの巣状静脈瘤」は、皮ふの表面のとても細い血管が拡張した時にみられます。

水虫(Fußpilz)

白癬(はくせん)菌という真菌(カビ)の感染症で、専門的には「足白癬」と呼ばれます。足の指間や足底に小さい水疱ができたり、皮ふが剥けたりした状態となり、強い痒みが特徴的です。抗真菌薬による辛抱強い治療が必要です。感染が足の爪に拡がると独特の爪の変形をきたします(爪白癬=Nagelpilz)。

口唇ヘルペス(Herpes labialis)

以前に感染した単純ヘルペスウイルスによって起こります。病気やストレス、強い日光刺激などによってウイルスが再増殖した時に起こるため、口唇ヘルペスは症状が繰り返されるのが特徴です。抗ウイルス薬の軟膏や内服薬が治療に用いられます。

皮下の脂肪腫(Lipom)

脂肪細胞からなる皮下の良性の軟部腫瘍です。背中、肩、腕、おしり、大腿部など体の中心に近い四肢で見付かることがあります。症状は特になく、脂肪腫の部分が柔らかい「しこり」として認識できる程度。実際の発生時期は幼少時と考えられていますが、発達が遅く、見付かるのは40〜50歳代ということが少なくありません。

粉瘤(Epidermoidzyste)

粉瘤腫(ふんりゅうしゅ)とも呼ばれます。耳たぶなどに、硬い小さな固まりができます。新陳代謝などにより皮ふ表面から剥がれ落ちた老廃物などが皮ふの中に落ちて袋を作り、そこに老廃物が溜まることでできた固まりです。中央に塞がってしまった黒っぽい開口部がみられることがあります。

じんま疹(Urticaria, Nesselsucht)

じんま疹は、アレルギー反応だけが原因となるわけではありません。運動後や入浴によって体温が上がり、汗が出た時にみられるじん麻疹もあります。これはコリン性じんま疹と呼ばれ、コリン作動性神経の関与によるとされています。また、皮ふを圧迫したり、擦ったりという物理的刺激によって生じる機械性じん麻疹、日光に当たるとできる日光じん麻疹、冷たい水や冷たい空気に触れると生じる寒冷じん麻疹などもあります。

悪性黒色腫(malignes Melanom)

日本人の悪性黒色腫は足の裏に発生することが多いこともあり、 足の裏に偶然見付けたホクロは気になるものです。悪性を疑う特徴として、1) 左右が対称でない、2) 辺縁が不正で、3) 色の黒い部分と赤っぽい部分が混在している、4) サイズが大きめで、しかも最近急にさらに大きくなってきている。これらに当てはまる場合は、一度、皮ふ科の先生に診てもらうと良いでしょう。

手足口病(Hand-Fuß-Mund-Krankheit)

日本で、この10年で最も増えているのが手足口病。手のひら・足の裏の丘疹様の水疱、そして口の中のアフタ性口内炎ができるのが特徴。主に5歳以下の乳幼児が罹るウイルス性感染症です。咳やくしゃみ、ウイルスの付いた手を介して感染。潜伏期は3〜5日、約3分の1の患 者に発熱がみられます。数日間のうちに自然に治ります。

化粧品による白斑(Weißfleckenkrankheit)

最近話題になっている美白化粧品による白斑。そもそも白斑とは、皮ふの色素(メラニン)をつくる部位が不規則に欠けて、肌の一部がまだら状に白くなる病気で、「しろなまず」と呼ばれています。白樺の樹皮にも含まれる美白効果のある成分、ロドデノールを含む化粧品でこの白斑が生じることが最近報告されました。

表3. 皮ふの役割について
皮ふは人の体で最大の臓器です。
水分の保持、体温の調節など、体内の恒常性を保ちます。
空日光を浴びてビタミンDを作ります。
微生物や外的な刺激から体を守ります。
メラニンは紫外線から体を守ります。
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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