インフルエンザの季節がやって来ました。今年の冬も流行するのでしょうか。予防接種をすべきか毎年悩みますが、効果はどれだけあるのでしょうか。また、予防接種が毎年必要なのはなぜですか。
Point• 流行の季節は12〜3月(南半球は7~8月)。
• インフルエンザ・ワクチンには発病を抑え、症状を軽減させる効果が期待できます。
• 発症したら、十分な睡眠と水分補給が基本です。
• 早過ぎる学校や職場への復帰は、感染を逆に拡大させることもあります。
インフルエンザの特徴
38度以上の急な発熱、悪寒、頭痛、全身の関節や筋肉に強い痛みが現れ、のどの痛みや鼻、咳などの上気道炎症状も伴います。インフルエンザ・ウイルスによる感染症の潜伏期間は大体2〜10日間。お年寄りや免疫機能の低下した方が罹患すると、生命を脅かすこともあります。
図1. インフルエンザと風邪
インフルエンザの感染ルート
1.罹患者の咳、くしゃみの飛沫に含まれるウイルスを吸い込む。2.ウイルスが付着したドアノブ、キーボードなどに触れ、その手を介して口にウイルスが侵入する。3.患者の唾などが直接口や鼻から入る、などが主な原因です。ちなみに、咳やくしゃみの飛沫は約2メートルも飛散します。
南半球でもインフルエンザは流行するか
オーストラリアやニュージーランドなど南半球の国々でも、インフルエンザは流行します。時期は、北半球の夏に当たる7~8月です。この時期に旅行や出張で南半球の国々を訪れる方は、注意が必要です。
ワクチン株の選定方法と製造過程
ワクチン株の選定方法ですが、今年を例に取ると、2012年9月半ばの南半球の情報と今年2月半ばの北半球の情報から候補を検討し、WHOが2013/14年の推奨株を4月に発表しました。これを基に各国(欧州の場合はEUが一括)が製造するワクチン株を決定し、4月下旬からワクチンの製造が開始され、10月から接種が実施されているという流れです。
今季予想されるインフルエンザ型ウイルスは?
WHO(世界保健機構)では、今冬(2013/14年)に流行する可能性があるウイルス株として、Aカリフォルニア型類似株、Aビクトリア型類似株(ワクチン製造株としてはAテキサス株)、Bマサチューセッツ型類似株を予測しています。
ドイツのワクチンは日本でも有効?
世界のほとんどのワクチンは、上記の通り、WHOが予測した推奨株を基に作られます。そのため、インフルエンザ・ワクチンは、日本もドイツも同じウイルス株に対して予防効果があります。
ワクチンの予防効果の持続性
ワクチン接種後2週間ほどで、インフルエンザ・ウイルス株に対する抗体ができ、予防効果が現れます。効果の持続期間には個人差がありますが、約5、6カ月です(EU諸国で用いられるSanofi Pasteur MSDのVAXIGRIP 2013/2014の製品添付文書には、6カ月〜1年と記載あり)。
ワクチンは不活性タイプ
インフルエンザ・ワクチンは、病原性をなくした不活性ワクチンです。したがって、予防注射でインフルエンザを発症することはありません。
図2. ワクチンと抗インフルエンザ薬
妊婦の予防接種は?
欧州では、妊娠期間中でもインフルエンザ・ワクチンの接種が認められています。妊娠中期〜後期における接種も、安全上問題ないというデータが示されており、米国ではインフルエンザ・ワクチンの接種が積極的に勧められています。一方、日本では妊産婦の接種は基本的に勧められていませんが、新型インフルエンザが流行した際は、厚生労働省は妊婦を優先接種対象者としました。
● 妊婦 ● 高齢者 ● 慢性の心臓病や呼吸器疾患患者 ● 血糖コントロール不良の糖尿病患者 ● 免疫機能の低下した患者 |
ワクチンは鳥インフルエンザにも効果があるか
季節性インフルエンザ・ワクチンは、鳥インフルエンザ(Vogelgrippe)には効果がありません。
予防接種してもインフルエンザに罹る?
インフルエンザ・ワクチンは、接種すればインフルエンザに罹らなくなる、というものではありません。予防接種を受けていれば、感染したとしても、発症を抑える作用(発症予防効果は60〜90%)と、症状の軽減化が期待できるということです。
予防接種の回数は?
欧米では、年少児を除き、一般的にはインフルエンザ・ウイルスに対する基礎免疫が備わっているとの考えから、1回のワクチン接種で効果があるとみなしている国が多いようです。ただし、12歳以下で、まだ一度もインフルエンザの予防接種を受けたことがない小児に対しては、初回の接種から4週間後に2回目のワクチン接種を推奨しています(前出のVAXIGRIP 2013/14のワクチンの場合)。
十分な睡眠が免疫力を維持
免疫が低下した状態では、インフルエンザなどのウイルスに対する抵抗力も弱くなってしまいます。睡眠は、体の休養、体力の回復、免疫力の維持にとって重要な役目を果たしています。過労や睡眠不足は風邪を引きやすくし、インフルエンザ・ウイルスに感染した場合、発症する可能性を高めるため大敵です。
インフルエンザに対する治療薬
ウイルスの増殖が続いている発症初期(48時間以内)であれば、各種のインフルエンザ治療薬(表2)の効果(発熱期間の短縮など)が期待できます。ただし、症状が出てから48時間以降の薬の服用は、効果があまり期待できないとされています。
タミフルによる異常行動
以前、タミフルを服用した子どもの異常行動や、飛び降り事故が問題となったことがあります。その際は薬との因果関係はない(分からない)と発表されたものの、子どもがタミフルを服用するに当たっては、現在も注意が喚起されています(平成19年の医薬品等安全対策部会安全対策調査会)。
作用機序は… | ウイルスの増殖を抑える作用が期待される |
症状への効果は… | 発熱日数を1〜2日短縮 |
服用時期は… | 発症後2日以内の投与が必要 |
留意することは… | (タミフルでは)小児の異常行動が問題とされたことがある |
インフルエンザと診断されたら
学校や仕事を休み、十分な睡眠を取り、水分を多めに摂って回復を待ちましょう。高熱や関節の痛みが強い場合には、解熱薬などの投与で対症療法を行います。ウイルスには発症してから1週間ほど、ほかの人に移す威力があるため、感染を広げることになりかねない早急な学校や職場への復帰は避けましょう。