ベルリンは今、ヨーロッパで一番面白い都市である。この街ほど、急速に変化している場所は他にない。来年は、ベルリンの壁崩壊から20年目にあたる。今、ヨーロッパの若者の間では、この街に対する関心が急激に高まっており、仕事や観光でベルリンを訪れる人の数は、ここ数年大幅に増加している。ベルリン統計局の調べによると、2006年には観光客の数が前年に比べて11%増えた。特に外国からの訪問者が13.8%増加したのが目立つ。旧東ドイツの街では人口の減少が目立つのに対し、ベルリンの人口は少しずつ増えている。
かつて壁の東側だったプレンツラウアー・ベルク地区では、幼い子どもの手を引いたり、ベビーカーを押したりする市民の姿が目立つ。ベルリンで最も人気があるこの地区では、20歳から40歳の市民の比率が飛び抜けて高くなっているのだ。同地区では100年以上前の豪壮なアパートが美しく修復され、しゃれたカフェやレストラン、ギャラリーが目白押しである。しかも、ミュンヘンのシュバーヴィング地区などに比べて気取りがなく、庶民的で気さくな雰囲気だ。住みたい人が多いのも、うなずける。
現代建築に関心を持つ人にとっては、ベルリンは魅力に満ちた街に違いない。連邦議会議事堂(ライヒスターク)、連邦首相府、議員会館、中央駅、外務省など、この国の最新建築はベルリンに集中している。首都としての貫禄を少しずつ備えつつあるのだ。
だがベルリンで最も私が興味深く思うのは、「人」である。ここほど千差万別の背景を持った人々が寄り集まって生活している街はドイツでも珍しい。民族、文化、宗教のサラダボウルである。キリスト教会の尖塔がそびえているのはドイツでよく見かける光景だが、同じ街にイスラム教寺院が次々と建てられている。トルコ人が多いクロイツベルク地区だけでなく、ミナレット(モスクの尖塔)はベルリンの他の地域にも広がっている。ドイツ社会でイスラム教が存在感を強めつつあることを感じさせる光景だ。
ベルリンはミュンヘンやシュトゥットガルトほど裕福ではない。しかしここには、金だけでは測れない知性と文化の厚み、そして外国人を包含する懐の深さがある。バイエルン州の人々などに比べるとベルリン市民は外国人慣れしているし、知らない人でも気軽に話しかける傾向が強い。わずか2週間の滞在でも、そのことを強く感じた。
ドイツの政治と外交、ジャーナリズムの中心であるため、国内で最も国際的な都市だ。ラジオで、ワシントンDC、ロンドン、パリからのニュース番組が24時間にわたって原語で聴けるのも、ベルリンならではである。
そしてベルリンのもう一つの特徴は歴史である。第二次世界大戦、敗戦後の東西分割、冷戦、壁の崩壊から統一。これほど現代史のドラマが凝縮された街は、世界のどこにもない。街の至る所に、歴史を思い起こし、保存しようという試みを見つけることができる。ブランデンブルク門近くにあるユダヤ人虐殺追悼モニュメント、壁で分断されたベルナウアー・シュトラーセのベルリンの壁資料館は、ほんの一例にすぎない。ベルリンを訪れて、そのダイナミズムにぜひ触れてほしい。
25 Juli 2008 Nr. 724