国内外とも選挙のニュース一色である。8月30日に日本で行われた総選挙では、自民党が歴史的な大敗を喫して議席を300から119に減らし、民主党が議席を115から308に増やした。日本の戦後の歴史では極めて珍しい本格的な政権交代が、現実のものになる。民主党の優勢は予想されていたが、ここまで大差がつくとは予想されていなかった。
同じ週末にドイツのいくつかの州で行われた州議会選挙でも、意外な展開があった。テューリンゲン州では与党キリスト教民主同盟(CDU)が得票率を前回の43%から31.2%に激減させた。CDUは、ザールラント州でも得票率を47.5%から34.5%に減らして惨敗。ザクセン州では0.9ポイントの減少にとどまった。
これに対して予想以上に躍進したのが、自由民主党(FDP)。テューリンゲン州で得票率を3.6%から7.6%に増やしたほか、ザクセン州でも5.9%から10%に票を伸ばした。
社会民主党(SPD)は旧東独の2州でやや得票率を伸ばしたにとどまり、FDPほど躍進できなかった。ザールラント州は左派党の議員団議長オスカー・ラフォンテーヌの地元というだけあり、左派政党リンケが、得票率を2.3%から21.3%に伸ばして大躍進。その余波を受けてSPDは、得票率を30.8%から6ポイントも減らした。
州議会選挙にはそれぞれの地域の特殊な事情が反映されるので、その結果を100%連邦議会選挙に当てはめることはできない。それでも、優勢を伝えられてきたCDUがザクセンなどの重要な州で低調だったことは予想外の事態である。
FDPのヴェスターヴェレ党首がこの選挙結果について発言したように、9月27日の連邦議会選挙は保守連立政権をめざすCDU・CSU、FDPと、リベラル勢力であるSPD、緑の党などとの接戦になる可能性が浮上してきた。
前回2005年の総選挙のように、保守派、リベラル派の両者とも過半数を取れないという事態も起こりうる。
近年の選挙では、浮動票の割合が拡大している。CDU・CSUと、SPDの政策が大きく似通っており、政党の独自色が減っていることが大きな理由である。米ソ冷戦の終結によって、市民の間で政治に対する関心が弱まったことも一因だろう。
どの政党に1票を投じるかを決めていない浮動層は、選挙の直前に報じられるニュースに影響されやすい。
SPDのシュミット保健相が、公用車でスペインにバカンスに行った問題、ドイツ銀行のアッカーマン頭取が、「メルケル氏の許可を得て連邦首相府の建物で誕生日パーティーを開いた」という、必ずしも正確ではない発言を行った問題などは、浮動票の行方を左右するだろう。事前の世論調査の結果が、投票日にくつがえされることがあるのも、気まぐれな浮動層のためである。
選挙戦のラストスパートに入った各政党は、投票箱が開けられる瞬間まで気を許すことができない。
11 September 2009 Nr. 782