5月23日、ケルン・ヴァーン空港。3人のドイツ連邦軍兵士たちが、棺に納められて無言の帰国をした。アフガニスタンのクゥンドゥスの市場で自爆テロに遭い、殺害された男たちである。犯人は不明だが、イスラム原理主義勢力タリバンが犯 行声明を出している。
ユング国防相は悲痛な表情で「ドイツ連邦軍をアフガニスタンから撤退させることはできない。もしも今、我々が撤退したら、アフガニスタンは再びテロリストの訓練センターとなり、ドイツの治安を脅かすことになるだろう」と述べた。
ドイツは、北大西洋条約機構(NATO)の一員として他の国々とともに、アフガニスタンの復興を支援するために、平和維持部隊、国際安定化軍(ISAF)に約3000人の将兵を派遣している。任務遂行中にテロなどで死亡したドイツ兵の数は、これで21人になった。テロに遭って生き残った兵士たちの中には、精神的に強い衝撃を受け、いわゆるポスト・トラウマ症候群(PTSD)で通常の生活を送れなくなった者もいる。
抵抗勢力タリバンの影響力が大きい南部地域では、米国、英国、カナダ軍が今もゲリラと戦闘を続けている。タリバンは昨年からゲリラ攻撃の頻度を高めており、特にカブールなどでイラクのような自爆テロが増えている。これらの国々は、ドイツよりもはるかに多く戦死者を出している。ドイツが担当している北部地域は南部に比べると治安が良く、これまでテロ攻撃の数は少なかった。だがドイツが今年になって、電子偵察機能を持ったトルナード戦闘機をアフガニスタンに投入したことなどから、イスラム過激派はインターネット上で「ドイツに対するテロ攻撃を行う」と予告していた。今回の事件は、ドイツが担当している北部地域も治安が悪化してきたことを示している。
従って、今後もドイツ兵士の間で犠牲者が出ることは避けられない。今回の事件の後、メルケル政権にアフガニスタンから軍を撤退させるよう要求したのは左派政党だけだった。だが無言で帰国する棺が増えるたびに、国内では「アフガニスタンに派兵する意味があるのか?」という疑問の声が上がるだろう。
特に自由民主党(FDP)や緑の党には、派兵に批判的な勢力もいる。ドイツのアフガン派兵は、米国のイラク侵攻とは全く性格が違う。9.11事件で、ドイツはアルカイダのテロリストたちの出撃拠点として使われた。「国際テロリズムの根は、テロ組織が発生した場所で断たなくてはならない。したがって、アフガニスタンで平和維持任務を行う必要がある」というのが、ドイツ政府の主張だ。だがタリバンやアルカイダにとって、アフガニスタンに駐留する外国軍は全て敵であり、攻撃目標となる。
今後治安がさらに悪化し、戦死者がさらに増えた時、連邦政府はどのようにして国民を納得させるのか。どの時点で、「平和維持任務は完了した」 と宣言してアフガニスタンから撤退するのか。メ ルケル政権は、まだ多くの問いに答えなくてはならない。
1 June 2007 Nr. 665