「ドイツ社会に溶け込もうとする気がなく、この国に6、7年住んでもドイツ語を一言も話せないような外国人が、どんどんこの国にやって来ることには、反対だ」。ショイブレ内務相が、ZDFテレビとのインタビューの中で今年7月に語った言葉だ。戦後、旧西ドイツでは、労働力不足を補うために、トルコなどから多数の移民を受け入れたが、外国人を社会に溶け込ませる努力が十分に行われてこなかった。ショイブレ氏の衝撃的な発言には、社会に溶け込むこ とを拒否する外国人に対する政府のいらだちが浮き彫りにされている。
ドイツには1500万人の外国人が住んでいるが、フランスや英国など他のヨーロッパ諸国に比べて、外国人が社会に十分溶け込んでいるとは言いがたい。特に教育の場や、雇用の面でドイツ人と外国人の間には目に見えない深い溝がある。外国人の失業率は、今年6月の時点で19.8%。これは、国全体の失業率(8.8%)の2倍を上回る数字だ。
メルケル首相が今年7月中旬にベルリンで「外国人融合サミット」を開き、外国人組織や地方自治体の代表とともに、どうすれば外国人を社会に溶け込ませることができるかについて話し合った背景には、融合が進まない現状に対する政府の危機感がある。政府は外国人がドイツ社会を理解し、溶け込むためには言語に精通することが第1歩だと考えている。このため外国人に対するドイツ語教育を、現在よりも充実させることをめざしている。
だがトルコ人宗教施設同盟(DITIB)など、主要なトルコ人の組織は、このサミットをボイコットした。彼らはドイツ政府が移民に関する基準を厳しくしようとしていることに抗議しているのだ。具体的には、将来ドイツに移住したいと考える外国人は、基本的なドイツ語の知識を持ち、最低200語から300語の語彙がなくてはならない。また、ドイツ在住のトルコ人男性と結婚するためにドイツ移住を希望するトルコ人女性は、最低18歳に達していなくてはならない。家族の圧力によって、18歳未満の女性が結婚させられることを防ぐためである。
トルコ人の間からは、この措置について「EUに加盟していない国の市民を差別するものだ」として強い批判の声が上がっている。私はトルコ人の団体がサミットをボイコットしたことを非常に残念に思う。彼らが差別されたと感じ、怒る気持ちはわかるが、トルコ人たちは、その怒りを公の議論の場で政府に対してぶつけるべきだった。ヨーロッパでは、議論を避けても事態は改善しない。サミットのような話し合いの場を利用して、ドイツ政府の措置が差別的だという意見を明確な論理に従ってプレゼンテーションすることが重要である。
ケルンのモスク建設や、アルカイダによる無差別テロの防止策などをめぐり、ドイツではイスラム教徒と非イスラム教徒の間で、意見の対立が深まっている。外国人を社会に溶け込ませ、この国の価値観を共有する外国人を増やすことは、政府にとって極めて重要な課題である。
27 Juli 2007 Nr. 673