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YUKI: Portraits of our friendsゆうき
YUKI: Portraits of our friends
著者 清水麻紀

ISBN 978-3-943417-40-1
Jaja Verlag

本誌コラム「ドイツで子育て&教育相談所」のイラストを担当されている、ベルリン在住のイラストレーター清水麻紀さんが、このたび友人のアーティスト近澤悠子さんと共同版画作品集を刊行されました。一言で「版画集」と言っても、ここに至るまでの過程がユニークです。

高校の美術科を卒業した清水さんは、「芸術とは何か?」という壮大なテーマに思い悩み、大好きな芸術の世界に憤りさえ感じて、ドイツへ放浪の旅に出掛けます。寝袋と鉛筆を持って町から町へと渡り歩き、この経験が彼女の進路を決定付けました。

日本へ帰国した清水さんは、大学で版画を専攻。廃れて行くかに思われていた版画に行き着いた理由は、芸術への純粋な価値観がまだそこにあると見出したからです。そして運命ともいえる友、近澤さんとの出会いもここで訪れました。

ある日清水さんは、近澤さんが撮った何千枚ものポートレートを目にします。写真の中の人々の表情に心を揺さぶられた彼女は近澤さんの許可を得て、その写真からドローイングを始めました。写真からドローイングを起こすことは、芸術家の間ではご法度のようですが、あえてそうしたことによって、清水さんの中に新たな感性が目覚めます。一心不乱に描き続け、出来上がったのはドローイングの山。そのドローイングを見た近澤さんが、今度は清水さんに申し入れます。「これを木版画に起こしたい」と。

そんなエピソードから生まれたこの作品の制作は、開始から早10年が経ちました。この作品集には、最初の作品から100番目までのものが順を追って掲載されています。原画と版画をそれぞれ並べて掲載している作品を見ると、版画は原画と見紛うほどの精緻さです。描かれた人の存在感は版画にすることでより明確になり、今にも動き出しそうな躍動感さえ感じられます。

清水さんと近澤さんを取り巻く人々の一瞬を捉えた自然な表情は、見る者にシンプルな幸福感を与えてくれます。人は皆頑張っているんだと、タイトルのごとく「ゆうき」がもらえる1冊です。(山)

 
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