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ロンドンのゲストハウス
Mi. 17. Jul. 2019

ドイツには実例がたくさん! 空き家を活用した地域再生術

ドイツでは、空き家を地域の活動拠点として再利用する動きが盛んです。その活用方法はアートスペースであったり、住民の交流の場であったりとさまざま。特に早くから空き家の活用に着目し、対策を続けてきたドイツ東部の都市、ライプツィヒの例をメインに、ドイツではどのように空き家が生まれ変わっているのかを紹介していきます。「人が暮らさない場所」を「人が集う場所」に変える、地域の活性化・エリア再生について考えてみましょう。(Text:編集部)

お話を聞いた人

ミンクス典子さん
福岡県出身。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。 2011年に空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」 を立ち上げ、2018年まで共同代表を務める。2015年より元 消防署を活用した複合施設オストヴァッへの共同代表。本誌 「私の街のレポーター」にて、ライプツィヒ地域を担当する。
日本の家:www.djh-leipzig.de
オストヴァッヘ・ライプツィヒ:http://ostwache.org

人が集まる場所をつくる4つのヒント

1その街で暮らす人々の危機感が
新たな対策を生み出す

1930年代のピーク時には、約70万もの人々がライプツィヒで暮らしていました。しかし、その後産業の衰退とともに人口は減少。ベルリンの壁が崩壊すると、その数は50万人にまで落ち込みます。人口の減少に伴い問題になったのが空き家です。地域によっては40%以上が空き物件となり、状態が悪いものは取り壊しが行われていました。そんななか、歴史的価値の高い建物を守ろうと市民活動がスタートし、2004年に「ハウスハルテン」が誕生。2015年以降は難民の流入などにより、ライプツィヒの人口は約60万人※にまで回復しています。それに伴い、現在では空き家率が減少している地域も増えてきました。 ※Sta dt Leipzigによる2018年の人口統計より

ライプツィヒの市民団体ハウスハルテンについて

リンデナウ地区同団体が拠点を構えるリンデナウ地区。手前の建物がオフィス

2004年、ライプツィヒのリンデナウ地区に設立された市民団体。使用されていない空き家の保全・維持を目的に活動している。居住を前提としない団体や個人に対して安価(家賃は無料。ただし家のサイズに応じて同団体に仲介料を支払うシステム)で、空き家を提供。使い手を失った建物を再利用することで、天候や人的な損傷から建造物を守ることが可能になっている。ライプツィヒの例を参考にハレ(ザール)、ケムニッツ、ゲルリッツ、エアフルト、ドレスデンなどでも同様の取り組みが行われている。

2最大の保全方法は
使用すること

建物に人が住まないことで起こり得るデメリットは、数多くあります。例えば、長年空き家になっている部屋ではガスや水を使用しないため、ガス管や水道管などの状態が悪化していることが想定されます。また、空き家には管理する人がいないため、犯罪拠点として使われたり、不法侵入したまま住み着いたりと悪用されるケースも考えられるでしょう。そうなると、周辺地域の治安が悪化する要因の1つになりかねません。このような理由から何かしらの形で空き家を使用することが、建物を保全する上で最大のメリットになります。

3「持続可能なアイデア」で
「開けたコミュニティー」を

ドイツ、特にライプツィヒにおける空き家の活用方法は、地域の活性化に貢献することに重点を置いています。その上でポイントになるのが、「持続可能なアイデア」で「開かれたコミュニティー」をつくること。続けることは簡単なことではありません。実際に情熱を持ってスタートしても1〜2年しか続かなかった実例もあります。家賃が無料であっても維持費はかかりますので、長年にわたって持続していけるコンセプトを練ることが大切。また、国や世代などターゲットを絞り込みすぎると交流に広がりがなくなってしまうので、その点でも考慮が必要です。

4改修にお金をかけない
それがドイツ流

日本でもカフェなどとして空き家が生まれ変わる例があります。その空き家活用の前提には商業的な目的がありますが、ドイツではより多くの人が利用できる・集まれる場所であることを大切にしています。そのため、地域活性化の観点から考えると、自分たちが暮らす地域をどのように盛り上げていくか考えることが今後の課題になるでしょう。ドイツでは商業目的ではない実例が多いので、必ずしもすてきなインテリアでしつらえる必要はありません。友人や知人に手伝ってもらう、不要な家具を譲ってもらうなど、お金をかけずに改修していきます。

ドイツの空き家を活用した実例

ライプツィヒをはじめ、ドイツには空き家を活用した多くの実例が存在。ここでは、ミンクス典子さんのコメントとともに紹介していきます。

1日本の家
Das Japanische Haus e.V.
http://djh-leipzig.de

日本の家日本の家 Das Japanische Haus e.V.
日本の家日本の家 Das Japanische Haus e.V.
 
 
 

2011年に建築家のミンクス典子さんをはじめ、学生やアーティストが中心となって設立した団体。特に衰退していた一角の空き家をフルリノベーションして活用。ライプツィヒに根付いた活動を軸に、グローバルな地域交流イベントを実施しています。調理・食事をしながら地域交流を図るイベント「ごはんのかい」を定期的に開催中。

コメント

地域活性化と国際交流の2つの軸で活動しています。「食」を切り口に投げ銭システムで定期開催している「ごはんのかい」には、今までに40カ国以上の人々が参加。ごはんを食べたくてやってくる人や友人に誘われて参加する人など、目的もさまざま。でき上がった料理を一緒に食べるだけでなく、調理の過程をともにするので、参加者同士のコミュニケーションが自然に広がっていく環境です。参加する人が多くなってくると次第に、次は展示をしたいアーティストや演奏をしたいというミュージシャンも集まってくるようになりました。都市空間では住居と商業施設がメインですが、その間にお金がなくても自由に使える空間があっても良いと思っています。 

「日本の家」の取り組みは、都市計画、空き家対策、国際交流、移民問題などドイツが抱える問題に関連しているため、行政をはじめライプツィヒ東部における地域活性のパイオニア的存在として評価していただいています。また、立ち上げ時から助成金の仕組みについても関心がありました。助成金はその時代の問題にリンクしているため、今どのようなことが課題になっているのかを知ることができます。私は欧州に暮らして15年以上になりますが、移民としてドイツ社会にどのように関わっていくかを考え実践する場でもありました。

2オストヴァッヘ・ライプツィヒ
Ostwache Leipzig
http://ostwache.org

Ostwache Leipzigオストヴァッヘ・ライプツィヒ Ostwache Leipzig
Ostwache Leipzigオストヴァッヘ・ライプツィヒ Ostwache Leipzig
 
 
 

ライプツィヒ東部にある消防署の移転に伴い、空きスペースとなった場所を地域活動の拠点として再生・利用するプロジェクト。「日本の家」のミンクス典子さんが代表の1人として参加しています。学生から弁護士など、さまざまな年齢の人々が運営に携わり、毎週イベントを開催。現在は規模を拡大中で、約7000平米もの敷地には、スタートアップ企業のオフィスや、音楽の演奏やアートの展示が可能なイベントスペース、自転車や木工の工房、幼稚園などがテナントとして入居を予定しています。

コメント

バーベキューやイースターのイベント、映画鑑賞会やゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会など、毎週バラエティー豊かなイベントを開催しています。現在は利用可能な範囲を広げるための手続きをしている段階。例えば、1カ月に1回無料のワークショップを開催する、無料で鑑賞できるコンサートを開くなど、どのような形で地域貢献を実現していくかというコンセプトをチェックした上で、入居者を審査しています。

「日本の家」の活動を通じ、次のステップとして、雇用を生み出す仕組みを構築していく必要があると考えています。特にオストヴァッヘは規模が大きく、建築家や弁護士、税理士やグラフィックデザイナーなど多彩なジャンルに精通した人たちが在籍しているので、活動の幅の可能性が広がりますね。

3子ども食堂
Leipziger Kinder-Erlebnis-Restaurant
www.leipziger-kinderrestaurant.de

Leipziger Kinder-Erlebnis-Restaurant子ども食堂 Leipziger Kinder-Erlebnis-Restaurant
Leipziger Kinder-Erlebnis-Restaurant子ども食堂 Leipziger Kinder-Erlebnis-Restaurant
 
 
 

「子どものための食育」をテーマにしたイベントを開催している団体。代表者のカリン・ファーネルさんが2012年にライプツィヒ東部の空き家(「日本の家」の向かい側)を活用してスタートしました。ここでは、子どもたちが食事を作って食べる楽しさを学ぶ機会を設けています。また、団体が所有する建物上階の住居では、長期失業中や問題のある家庭を優先的に受け入れています。イベントスペースは誕生日会を開催するためのスペースとしてレンタルも可能です。

コメント

教育学科に通う学生たちの実技試験の場でもあるので、研修生たちが通年常駐しています。そのため、人件費を抑えることが可能。さらに失業中の親が働けるようにと、ジョブセンターを通じて子ども食堂のパートタイムの仕事を与えるなど、雇用も生んでいます。さまざまなサイクルがうまく回るよう考えられた実例です。

4旧紡績工場シュピネライ
Leipziger Baumwollspinnerei
www.spinnerei.de

 Leipziger Baumwollspinnerei旧紡績工場シュピネライ Leipziger Baumwollspinnerei
 Leipziger Baumwollspinnerei旧紡績工場シュピネライ Leipziger Baumwollspinnerei
 
 
 

ライプツィヒ西部の紡績工場跡地の内部をリノベーションして、工房やギャラリーとして活用している一例。もともとは1992年に紡績工場としての役目を終えた後に、若いアーティストたちが制作の場として利用したのが始まり。いつの間にか100以上ものアトリエが並ぶ小さな芸術村になっていたそう。2001年に運営会社に買い取られ、現在では10以上のギャラリーやアーティストの工房が置かれています。

コメント

古い紡績工場をリノベーションして活用しているこのアートスペースは、欧州各地からも注目を集める現代アートの発信基地です。現在では、よく名の知られているギャラリーなども輩出していますよ。「ライプツィヒ・スクール」と呼ばれるアートシーンもここから生まれているほど。観光地としても有名な場所です。

5AEG工場跡プロジェクト
Auf AEG
www.aufaeg.de

AEG工場跡プロジェクトAEG工場跡プロジェクト
AEG工場跡プロジェクトAEG工場跡プロジェクト
 
 
 

4で紹介したシュピネライの運営会社が手がける、ニュルンベルクAEGの工場跡地を利用した多目的スペース。2007年にスタート。幅広い用途で活用していくことを目的に、オフィスや小売店、ショールーム、レストラン、ギャラリースペースなど、さまざまなテナントが入っています。地元のアーティストの作品を展示する展覧会なども毎年開催されています。

コメント

ニュルンベルクとライプツィヒは、人口の数や政治的な状況が似ています。この2都市のように50万人規模の地域では、ムーブメントが起こりやすいんです。ニュルンベルク、ライプツィヒともに州都ではないので、政治的なしがらみが少ないことも市民が積極的に活動を起こせる要因の1つになります。

6プリンセスガーデン
Prinzessinnengarten
https://prinzessinnengarten.net

プリンセスガーデン
Prinzessinnengartenプリンセスガーデン Prinzessinnengarten
プリンセスガーデン
Prinzessinnengartenプリンセスガーデン Prinzessinnengarten
 
 
 

2009年に空き地の不法占拠から始まったアーバンガーデニング。スタッフやその友人らがこの場所のゴミを片付けて、有機野菜の栽培をスタートしました。ユートピアとして都市の真ん中に緑地が広がる「プリンセスガーデン」では、持続可能な生活を送るためのヒントを実体験するため、ここで栽培された野菜を使用した食事を楽しむことも可能です。一緒に収穫したりリラックスしながらコミュニケーションを図ったりと、新しいスタイルの都市生活を実践しています。

コメント

このプリンセスガーデンは、ドイツのアーバンガーデンの先駆けとして有名です。ベルリンにはほかにもテンペルホーフ空港跡地のアルメンデ(共有地)など、バラエティー豊かなアーバンガーデンがありますよ。

 
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