ライプツィヒは昨今、目覚ましい勢いで人口が増え続けています。2010年に約52万人だった人口は、2019年に60万人を超えました。ザクセン州の州都ドレスデンより面積は小さいものの、人口はすでにライプツィヒの方が上回っています。毎年移り住んでくる約1万人は20〜40代を中心とする年代で、さらにベビーブームも後押ししています。
空き地が消え、増えてきた新築の建設現場
さて、それだけ人口が増えているということは当然住むところも必要で、住宅の需要も急増しています。壁崩壊後の90年代には「縮小都市」の代名詞だったライプツィヒでも、ところどころで建築現場が目立つようになりました。古い建物は改修され、空き地には新築の建物が増えています。安い家賃でも借り手がつかなかった時代は終わり、家主も既存の物件を改修して家賃を上げるようになってきました。法律では3年おきに家主が家賃を上げることが可能で、家主が変わった場合も値上げができます。そのため、あちこちで家賃の高騰が起きています。
昨年、私たちも住んでいる住戸を買い、家主となりました。初めての家主総会では、不動産管理会社から現在の家賃相場が知らされ、「ここまで家賃を上げることが可能ですよ」と言い渡されました。家主が準備していなくても、不動産管理会社があおって値上げしているのも事実のようです。
高い家賃の新築物件への反抗的な落書き
一方で、改修されずに放置されたままの空家もまだ見受けられます。それらは地価の上昇を見込んで、ドイツ西側をはじめロシアやアメリカなどに住んでいる人たちが投資物件として購入し、高額で転売する機会を待っている物件なのです。
ライプツィヒ南部のコネヴィッツは、パンクな人たちが住むオルタナティブ(良い意味で自由で堅苦しくなく、悪い意味で汚れて統制の取れない雰囲気)な地区です。空き地や空家に目を付けた投資会社が高い家賃の住宅を改修・新築し始めると、住人たちの大きな反発が起き、建築現場のクレーン車に放火したり、デモ参加者が警察と衝突したりと事件も起きているようです。
都市が発展することは、誰にとって良いのでしょうか。長く住んでいた人たちは家賃の値上げに遭い、建築現場のために道路は渋滞。バスも路面電車も混雑し、幼稚園や小学校も席数が足りない状況が続いています。
一方で、再生可能エネルギー分野やIT関連をはじめとするスタートアップ企業が増え、雇用を自分たちで生み出しているのは素晴らしいことだと感じます。人口が増えることで生じるプラスとマイナスの効果を踏まえて、都市がどのように発展していくのか。これからのライプツィヒが楽しみです。さて、2012年から記事を書かせていただきましたが、今回で最後となりました。ありがとうございました!
福岡県出身。日独家族2児の母。「働く環境」を良くする設計を専門とする建築家。2011年に空き家再生社会文化拠点ライプツィヒ「日本の家」立ち上げ、18年まで共同代表。15年より元消防署を活用した複合施設 Ostwache共同代表。
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