世界一高い大聖堂の風を感じるビール
ドナウ川の左岸、バーデン=ヴュルテンベルク州とバイエルン州の州境に位置する都市ウルムは、中世から水運の要所として栄えた。街のシンボルは、世界で一番高い教会建築として知られているミュンスター大聖堂だ。1377年に起工され、完成までに500年以上の歳月を要したゴシック様式の大聖堂で、尖塔の高さは161.53m。141mに高さにある展望所(東京タワーの第一展望台とほぼ同じ高さ)までは螺旋階段で登ることができる。ただし768段の階段を一歩一歩登らねばならず、なかなかの運動量だ。さらにすり減った細い石段と絶え間なく吹きつける風に肝が冷える。しかし登りきると、隙間飾りの間からドナウ川と古都の美しい街並みが一望でき、風に乗って翼を広げる鳥になったような爽快な気分になれる。教会内部のステンドグラスや祭壇の装飾も大変美しい。
ドナウ川に通じる水路に木組みの家が立ち並ぶ「Fischerviertel(漁師の一角)」はかつて漁師らが住んでいた地区で、清涼な川のせせらぎが心地よい。最も古い建物は1433年に建てられた木組みの家「Schiefes Haus(ゆがんだ家)」だ。その名の通り、10度ほど傾斜している。現在はホテルとして営業していて、「世界一ゆがんだホテル」の名でギネスブックに載っている。
ゴールドオクセン醸造所は1597年にGabriel Mayer氏が、ドナウ川に近いウルム旧市街に宿屋とともに創立したのが始まり。1867年以降はLeibinger家によって所有され、醸造所をウルムの北側に移動。第二次世界大戦では街の80%以上が損害を受けたが、大聖堂とゆがんだ家と醸造所は奇跡的に被害が軽かった。
「Kellerbier Naturtrüb」は無濾過のためボトルの底に成分が沈殿しており、やや白濁している。ホップの生き生きとした香りと苦み、麦芽の軽やかな甘み。目を閉じればウルムを駆け抜けた清らかな風を感じられそうな爽快な味わいだ。