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旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

こんな老後を送りたい! 施療院付属のビアガーデン

レーゲンスブルクはローマ時代から続くドナウ河畔の美しい古都だ。入り組んだ石畳の路地に古い建物が並び、街が丸ごと歴史博物館のよう。第二次世界大戦の戦火を逃れた旧市街は、世界文化遺産にも登録されている。ドナウ川に架かる橋は12世紀に建てられ、ドイツ最古の石橋だ。大概の人は橋の半ばで写真を撮り、そこで折り返してしまう。しかし橋を渡り切ったシュタットアムホーフも世界遺産の構成要素だ。ここに旅ールにぴったりの素敵なビアガーデン「Spitalgarten」がある。雄大なドナウの流れを挟んで、旧市街とゴシック様式の大聖堂の尖塔を臨むことができる。振り返ればガラス越しに醸造設備。川面を渡ってきた涼やかな風を体に感じつつ、出来たてのビールを飲むのはなんとも贅沢な気分だ。室内のビアホールには年代物の家具が配され、こちらも雰囲気が良い。

このビアガーデンは、聖カタリーナ施療院財団が運営する醸造所Spitalbrauereiの敷地内にある。Spitalとは病院・施療院のこと。この施療院は司教とレーゲンスブルク市民によって病人や寡婦、老人など助けを必要とする人々のために創立し、ビールは1226年から造られている。ヨーロッパでは古くから教会が慈善事業として老人ホームなどを運営しており、その運営資金は市民からの寄付と、ビールや農畜産物の販売によって支えられていた。現在でも醸造所の奥に礼拝堂と老人ホームがあり、現存する世界最古の施療院付属醸造所だ。ドイツの老人ホームは個人が尊重されており、自由度が高く、ビアガーデンでくつろぐのもOK。老若男女あらゆる世代が集まりビールを堪能していて、醸造所がわが庭にある老後生活とは羨ましい限り……。

フラッグシップの「Helles」は、麦の香ばしさと甘さが心地よいビール。ホップの苦みは低く、すーっと体に染み込むような優しさがある。太陽の下、ゴクゴクと飲み干したくなるビールだ。

vol.30
Spital Helles

Spital Helles

 
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