こんな老後を送りたい! 施療院付属のビアガーデン
レーゲンスブルクはローマ時代から続くドナウ河畔の美しい古都だ。入り組んだ石畳の路地に古い建物が並び、街が丸ごと歴史博物館のよう。第二次世界大戦の戦火を逃れた旧市街は、世界文化遺産にも登録されている。ドナウ川に架かる橋は12世紀に建てられ、ドイツ最古の石橋だ。大概の人は橋の半ばで写真を撮り、そこで折り返してしまう。しかし橋を渡り切ったシュタットアムホーフも世界遺産の構成要素だ。ここに旅ールにぴったりの素敵なビアガーデン「Spitalgarten」がある。雄大なドナウの流れを挟んで、旧市街とゴシック様式の大聖堂の尖塔を臨むことができる。振り返ればガラス越しに醸造設備。川面を渡ってきた涼やかな風を体に感じつつ、出来たてのビールを飲むのはなんとも贅沢な気分だ。室内のビアホールには年代物の家具が配され、こちらも雰囲気が良い。
このビアガーデンは、聖カタリーナ施療院財団が運営する醸造所Spitalbrauereiの敷地内にある。Spitalとは病院・施療院のこと。この施療院は司教とレーゲンスブルク市民によって病人や寡婦、老人など助けを必要とする人々のために創立し、ビールは1226年から造られている。ヨーロッパでは古くから教会が慈善事業として老人ホームなどを運営しており、その運営資金は市民からの寄付と、ビールや農畜産物の販売によって支えられていた。現在でも醸造所の奥に礼拝堂と老人ホームがあり、現存する世界最古の施療院付属醸造所だ。ドイツの老人ホームは個人が尊重されており、自由度が高く、ビアガーデンでくつろぐのもOK。老若男女あらゆる世代が集まりビールを堪能していて、醸造所がわが庭にある老後生活とは羨ましい限り……。
フラッグシップの「Helles」は、麦の香ばしさと甘さが心地よいビール。ホップの苦みは低く、すーっと体に染み込むような優しさがある。太陽の下、ゴクゴクと飲み干したくなるビールだ。