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旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

ベルリナーヴァイセは「時間」が最大の調味料!

ベルリンに2016年に誕生したベルリナーヴァイセ専門の醸造所、シュネーオイレ(Schneeeule、シロフクロウ)。雪のように白いフクロウが羽を広げるイラストと、「e」が三つ連なる醸造名が目印だ。

ベルリナーヴァイセは、ビール酵母だけでなく乳酸菌や野生酵母によって発酵させるビールで、ベルリンで醸造されたもののみがその名を冠することが許されている。複雑な香りとレモンのような酸味が特徴で、19世紀にはおよそ100カ所の醸造所があり、700軒もの飲食店で提供されていた。しかし人々の嗜好の変化により徐々に減少。第二次大戦後に残ったのは2社のみだった。ところが近年のクラフトビールの隆盛により、再びベルリナーヴァイセが注目されている。

失われたベルリン独自のビール文化を取り戻すべく、シュネーオイレ醸造所を立ち上げたのは、女性醸造家のウルリケ・ゲンツ(Ulrike Genz)氏だ。ゲンツ氏は「本物の味」を忠実に再現するため、60年ものにもなるボトルから酵母を取り出して培養した。この古い特別な酵母株は、ブレタノマイセス(野生酵母)に分類されるもので、一般的なビールやワインでは敬遠されるが、伝統的なベルリナーヴァイセには欠かせないもの。ビールをグラスに注ぐその瞬間まで、瓶の中で発酵と熟成が続く。時間がビールに深みを与えるのだ。野生酵母が醸し出す野性味溢れる香りは、工業化され大量生産・消費に慣れてしまった社会に、もう一度「手工業に立ち返れ」と言っているよう。今回ご紹介するKennedyは、柑橘系の香りを持つ米国産ホップを使用することで伝統の枠を取り払っている。

新型コロナウイルスの感染拡大予防のため、今年1年は思うような結果を出せなかった人もいるだろう。しかし時間が経てば、当初の計画もより深みが増すかもしれない。ベルリナーヴァイセも皆さんの意気込みも、今はじっくりと熟成させてみてはいかがだろうか。

https://schneeeule.myshopify.com

vol.48
Schneeeule Kennedy

Schneeeule Kennedy

 
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